ラグビー元日本代表・山田が米移籍濃厚 裏で進む「交換トレード」 | FRIDAYデジタル

ラグビー元日本代表・山田が米移籍濃厚 裏で進む「交換トレード」

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昨季、日野自動車との開幕戦で快走するWTB山田章仁。今季は1試合も出場がなかった(写真:アフロ)

元ラグビー日本代表の山田章仁(NTTコムシャイニングアークス、以下NTTコム)のアメリカ移籍が濃厚となった。メジャーリーグラグビーで2連覇中の強豪・シアトル・シーウルブズと合意しており、ビザが下り次第、渡米する見通しだ。異例のシーズン中の渡米は、山田が海外クラブに移籍するだけでなく、「日本ラグビー界初のトレード」という形で成立する見込みだ。その背景は……?

注目度が増すメジャーリーグラグビー

3月10日。千葉県内の自宅でオンラインミーティングを開いた。相手は間もなく移籍するであろう、シアトル・シーウルブズの関係者だった。

2015年のラグビーワールドカップイングランド大会へ日本代表として出た山田章仁は、渡米への準備を進めていた。2月20日に開幕した国内トップリーグの真っただ中だ。もともとは日本のシーズンが終わる今春以降に渡米の見込みだったが、予定は早まり、3月にもチームを離れて渡米する可能性が高くなっていた。

シアトル・シーウルブズが加盟するアメリカのメジャーリーグラグビーは、2018年に発足。スポーツビジネス大国によるラグビーのプロリーグでは近年、元オーストラリア代表で2020年までサントリーにいたマット・ギタウも参戦を表明。注目度が増す。

山田は、世界との接点を好む行動派だ。

伝統校の慶大にいた頃に単身でオーストラリアへ2度も留学し、2008年春の卒業を前後してフランスのプロクラブとの契約を目指してプロモーション映像を作った。

結局はひとまず国内でプロ契約選手となり、2010年に入部の三洋電機(現パナソニック)では国内トップリーグで4度の優勝、3度のプレーオフMVPというキャリアを積み上げながら、トライ王に輝いた2012年度には社会人アメリカンフットボールのXリーグでもプレーした。

海外のラグビーチームと契約したのは2015年が最初。オーストラリアのウェスタン・フォースでスーパーラグビー出場を目指した。NTTコムへ加わった2019年には、同部が提携するフランスのリヨンへ期限付き移籍をしている。

アメリカとも縁があり、2017年冬にもメジャーリーグラグビーの前身といえる「Pro Rugby」への参加を模索したことがある。結果的に国内にとどまったが、今回、契約へ進むだけの人脈なら築いていた。

この移籍話が一部で報じられる前、山田はこう言葉を選んでいた。

「(日本)シーズンの途中でメジャーリーグラグビーに移籍しなくてはいけないかもしれないと、チームと話をしていました。僕が(順位を決める4月中旬以降の)最後のトーナメントに出られないのなら、(2月からの)リーグ戦も若手中心に積み上げをしては…という風に。2022年からの(日本の)新リーグでNTTコムが頂点に立てるようにするよう、スポーツを取り巻く環境がずば抜けているアメリカへ渡ろうと計画中です」

2016、18年に過去最高となる5位に入ったチームは今季、開幕からの4戦で1勝2敗1分と苦しむ。山田の合流を望む声も高まるが、山田と一部コーチとの間に意見交換時のボタンの掛け違いがあった模様だ。

この件についてチーム側は「公式に認定していない。コメントは控えます」とし、山田も「チームのことは悪く言いたくないので」と多くは語らない。今回の移籍話をまとめるにあたり、山田自身が作ったネットワークがかなり生かされているが、正式発表はチームに委ねている。

山田の行動の根底にはいつも、将来ラグビーをやりたい子供たちの存在がある。米国移籍によって日本ラグビー界にどんなことをもたらしてくれるだろうか(写真:アフロ)

山田の移籍をチームのマイナスにしないために描く筋道

「日本ラグビー界初のトレードです」

今度の移籍に関し、チームの内山浩文ゼネラルマネージャーが描いたのはこの筋道だった。確かにこの件が本当に成り立てば、社員選手の多い日本楕円球界にあっては異例のケースと目されよう。

NTTコムは、かねて先進的であろうとしてきた。提携するフランスの強豪クラブ・リヨンとは、一定金額を支払うことで柔軟に期限付き移籍が可能になる、サブスクリプション制度を確立させた。

だから今度の山田の渡米も、ただの主力放出として済ませるつもりはなかった。

山田のような閃きのある実力者を一時的に放出する傍ら、今季、故障者の多いフォワードに新戦力を補強する――。内山はその筋書きを山田に提案し、ここ数日は日本の練習に参加できる選手をリストアップ。3月17日時点では「(対象選手の)名前は公開できません」と断じ、話の具体化と社内調整を進める。

2022年1月からの新リーグでは、競技力に加えてチームそれぞれがお金を生み出す事業性も問われる。内山は、山田を選手としてもビジネスパートナーとしても貴重な戦力と捉えている。均衡を保たんとする。

「トレードの話を進めていること、補強したいポジションがあるのも事実です。これは彼(山田)でしかできないこと。追加費用を抑制しながらもっとも補強したいポジションの選手を獲得できれば、メリットがあると感じています。フランスのサブスクリプションとは違った形で、補強プランのオプションは持っておいた方がいい。将来的には(部員の大半を占める)社員選手にだって可能性が広げられるかもしれません」

35歳の山田は「(現役選手は)できるだけ(長く続けたい)。めちゃめちゃ楽しいから」とし、新規事業を打ち出すNTTコムでのプレーに意義深さを感じていた。

「実際のところは40歳くらいで…となるかもしれませんが、昔は半世紀(50歳)プレーヤーを目指すなんて冗談で言っていました」

一方でせわしなく動くのが性に合うからと、過去には少年少女向けのチャリティークリニックを企画。いまは公式ブログで「超挑戦シリーズ」を打ち出す。

今年からカフェの経営、プレー動画を介してリクルーターと若い世代のアスリートをつなげる「グローバルスカウト」というサイトとの運営、3人制バスケットボールチーム「CHOFU SHEEP .EXE」のオーナー業務を展開。渡航後も各部門に遠隔で関わる。

新型コロナウイルスが社会を揺るがすなかで意識するのは、「オンラインを味方につける」ことだ。確かにこの1年で、画面の向こうでイベントの司会をすることが増えている。

「超挑戦シリーズ。これには僕自身が凄い挑戦をする意味と、僕がどこにいても挑戦できる意味があって。最近、活動がオンラインに振れているのは、今後海外に拠点を置いた時にもやれることが増えていればいいなと思うからです」

日本では珍しい「トレード」で成立しそうな今度の渡米に関しても、いずれ地球のどこかから詳細が語られるだろう。(一部、文中敬称略)

  • 取材・文向風見也

    スポーツライター 1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

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