〈座間9人殺害事件〉白石隆浩被告・接見記「すべてはカネ次第」
マスコミに金銭を要求する大量殺人犯に、実際に現金を差し入れすると、何を語るのか?
「(指で丸を作りながら)コレ次第。おカネさえくれれば、何でも話します」
SNSを通じて知り合った男女9人が殺害された、「座間事件」から約1年。強盗・強制性交殺人などの容疑で逮捕・起訴された白石隆浩被告(27)が、9月21日、本誌の接見に応じた。
午前10時20分頃、勾留先である高尾警察署(八王子市)の面会室に現れた白石は、事件当時とは変わり果てた姿だった。上下ともに無地でグレーのスウェット姿に、四角い黒縁メガネ。ボサボサの髪は肩まで届くほど長く、痩せこけた頬やアゴに無精髭をはやしている。
接見は一日1社のみ。当日は他のメディアも面会を申し込んでいたが、なぜ本誌に応じたのか。無表情で記者に一礼して着席した白石にまずはそれを聞いた。
「週刊誌の人なら、やっぱりコレ(カネのジェスチャー)を出してくれるんじゃないかなと思って……。以前手紙や雑誌の差し入れをくれた講談社の人に会おうと思って指名しました」
接見は事件について聞くことが禁じられているため、留置場での生活について尋ねると、食事への愚痴をこぼし始めた。
「留置場の食事は朝昼晩3食出るのですが、パンにジャムを付けて食べるみたいな、質素なものばかりでパッとしないので……。今、人生で一番の楽しみは食事。おカネがあれば、より魅力的なメニューが食べられます」
またもやカネの話になったのが気にかかったが、20分と限られた接見時間をムダにはしないため、質問を続ける。だが、現在の心境を尋ねると、白石は冒頭のように語り、押し黙ってしまった。それ以降は何を聞いても、「カネ次第」と答える。
なぜ、白石はこれほどまでにカネを要求するのか。カネを渡せば何を語るというのか――。白石の本意を探るべく、本誌は接見後、上限額である3万円を差し入れた。すると、9月25日、白石は再び接見に応じ、前回とは打って変わった様子で、笑みを浮かべながら語り始めた。
「3万円が入ってきて、かなりテンションが上がりました。現金のつながりがある限り、フライデーさんと会いますよ」
勾留中の身で、カネを何に使うのか。
「400円で唐揚げ弁当を買いました。正直、おカネを持っていると、拘置所に行った時の生活が全然違うんですよ。拘置所には売店があってチョコパイ、板チョコ、アンパン、クリームパンがあります。おカネがないと本当に辛いと中の人からも教えてもらったので、出来るだけ蓄えて拘置所に行きたい。定期的に現金を差し入れてもらえるなら、これからは手紙も書きます。フライデーさん宛てだけじゃなく、僕の両親に向けての(懺悔の)手紙も書きますよ。値段は宛先によって変えますが」
記者の目を見つめながら、ベラベラと喋り続ける白石。しかし、両親との関係に話が及ぶと、ほんの一瞬だけ顔をしかめた後、困惑した表情でこう話し始めた。
「両親……からの連絡は一切ありません。差し入れも、面会申請もないです。 親にはあわせる顔がないほど迷惑をかけたと思っています。でも、面会に来たら会って謝りたい気持ちも……。ただ、本当に来てほしいかと言われると内心は複雑です。会いたいような会いたくないような……」
極刑の可能性が高いことは本人もわかっているはずだ。人生の心残りはないのか。最後に聞いた。
「やっぱり、もっと美味いものが食べたかった。好きだった『蒙古タンメン中本』のラーメンとか……。あとは女遊びももっとしたかったなって。本当に普通のことですけどね」
確かに、カネを貰ったことで饒舌にはなったが、事件への反省や、被害者への謝罪はない。それどころか、8人の女性を殺しておいて、平然と女遊びがしたかったと笑顔で言ってのける。カネをせびる理由も、ただ拘置所での食生活を充実させたいから――。2度の接見で浮かび上がったのは、あまりに享楽的で自己中心的な白石という男の人物像だった。
ジャーナリストの伊藤博敏氏が言う。
「情報を得るという取材行為には人間関係の構築が必要です。カネを払ってでも、こうした白石の様子を引きだせたことには意義があると思います」
仮に白石に対して「被害者に謝罪しろ」と言えば、「カネ次第で」と応じるのではないか。本誌が接見した凶悪犯はそういう男だった。
撮影:結束武郎(送検) 蓮尾真司(高尾警察署、事件現場)