独占入手『カメラを止めるな!』の原作?「舞台版映像」を観た!

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監督と俳優を養成する学校の自主製作企画として、300万円の予算でつくられた映画『カメラを止めるな!』。わずか2館の上映ではじまったその映画の面白さが広まり、観客動員は140万人(9月12日)、興行収入は21億円(9月18日時点)をそれぞれ突破。上田慎一郎監督の映画『カメラを止めるな!』は、「誕生と成功の物語」も劇的です。

ところが、このサクセスストーリーには「異説」もある。それは、この映画が劇団「PEACE」(現在は解散)による舞台『GHOST IN THE BOX!』を「原作」としてつくられた物語であるというもの。

「舞台を観て発想を得た」という経緯は、6月23日の公開時から発売されているパンフレットにも記載されており、インタビューなどでは上田監督自身が作品名についても語っておられ、8月の公開拡大時からはエンドロールでもこの劇が「原案」としてクレジットされました。

しかし、劇団の主宰者だった和田亮一氏の主張はあくまで「原案ではない。原作だ」であり、一部報道は、劇と映画の共通点なども挙げ「パクリだ」とまで表現しています。

本当のところどうなのか? 仮に、法的には映画がオリジナル作品として認められたとしても、実際には、どうなのか。あくまでアイディアソースのひとつだったのか。それとも「パクっている」から面白いのか。『カメラを止めるな!』を観て大いに笑って感動した人間のひとりとして、ぜひ舞台も観てみたい。

――この度、FRIDAYデジタルが独自に入手した記録映像を視聴。僭越ながら、この堀田純司めが、両作品を比較したレビューをお伝えします。

▲『カメラを止めるな!』。上映館は316館を突破している(予定・終了含む。9月18日時点)。

映画『カメラを止めるな!』 “原作”?の舞台を観てみた 作家・堀田純司

「カメ止め」は熱いファンを持つ作品で、その中には有名人や言論人も多い。そうした状況で声をあげることは、劇団主宰者の和田亮一氏にとって厳しい選択だったと思います。ぶっちゃけ「売れたから権利を主張した」「カネ目当てだろ」などの批判やシニカルな声にもさらされています。

しかしそれでも声を上げたのは「自分たちがやってきたことが、なかったことにされたくない」というお気持ちだったに違いないと思います。その思いは、私などでもとてもよくわかります。「劇団の人たちにとって、大切な作品」。そうした意識をあらためて持って、拝見させていただきました。

まず結論ですが、率直に言って「確かに原案かもしれない。しかし、それぞれ独立した魅力を持つ作品だ」と感じました。

映像は、画質はそこまで高くはなく、舞台は仄暗い。公演が行われた劇場は125席と言いますから、いわゆる「小劇場」と言っていいのかもしれません。しかし、まだ新しくきれいな劇場で、映像を通してもお客さんたちの期待と熱気が伝わってきます。

『GHOST IN THE BOX!』の物語は、ある古い廃墟からはじまります。三階建ての古いビル。そこで映画製作サークルのメンバーや、研究者、廃墟マニアや作家など、さまざまな背景を持つ人物だちが偶然に出くわしてしまう。

語られるのは、その廃墟が、実は旧日本陸軍の研究施設だったという過去。劇中のネットでも「被験者たちの叫び声が聴こえる」という噂が流布されている。しかも、彼らが調べた結果、この廃墟には、最近まで使用されていた形跡が残る部屋があった。

誰が? なんのために? 不穏な空気を振り払おうとする中、ついに惨劇が開幕します。犯人はいったい誰なのか? そもそも「犯人」は、”生きた人間として”存在するのか? 最後の生存者は、狂気の野望に直面することになる。

と、このサスペンスは『カメラを止めるな!』をすでに観た方ならばよくご存じの「二段構成」に突入して行きます。

メタ的な構造を持った作品は、映画や小説など史上数多い。そもそも演劇の世界では「バックステージもの」というジャンルが成立していて、メル・ブルックスのミュージカル『プロデューサーズ』(1967)や、日本でも舞台の裏方たちの奮闘を描いた三谷幸喜作品『Show must go on 幕を下ろすな!』(1991)などの名作があります。

こうした作品の中でも『GHOST IN THE BOX!』の構成は際立っていて、たくみに人の想像力を刺激する素晴らしいアイディアでした。また複雑な構成を成立させてしまうだけの演技、舞台の熱気も、しっかり伝わってきました。上田監督がまず、この舞台を映画にすることを考えた、という経緯はよくわかります。

実際、映画『カメラを止めるな!』の展開は、確かに舞台と共通しているところがあるのですが(完全になぞっているわけではない)、しかし個人的には、「構成」はあくまで器であって、「カメ止め」の真の魅力は、器に盛り込まれた物語にあったのだと思いました。

「カメ止め」の物語はおそらく、上田監督の映像業界人としての個人的な体験にもとづくものなのでしょう。ですがその感覚は「今の日本のリアルな空気」にしっかりとつながっていた。

成熟しきった日本社会。なにかやろうとしても「事なかれ主義」「売れたものに飛びつく権威主義」「テキトーな人たち、わがままな人たち」といった壁に、いつもぶつかる。自分だってまずその社会の中で生きることに必死で、戦う余裕なんてない。

映画では、この壁をぶっ壊してしまう。しかしその奇跡は、誰か一個人の超人的なセンスやパワーによるものではなく、すでに中年の、苦労人の監督をはじめ、現場のスタッフ、演技者が一体となり、ひとりひとりの泥まみれの奮闘が成し遂げたものでした。

だからこそ「カメ止め」という作品は、観た人に「どんな人にも、持ち味がある。誰でもみんな、自分の役割がある」と感じさせてくれます。

この作品を観て共感した人は、自分自身も「観客」という「役」を得て、物語の参加者となった。そのために一生懸命、応援したくなります。

筆者は上田監督の過去作品『恋する小説家』(2011)、『彼女の告白ランキング』(2014)、『テイク8』(2015)、『ナポリタン』(2016)も拝見しました(動画配信サイト「青山シアター」による上田慎一郎監督特集)。

どれもさすがに面白く、『カメ止め』につながる感覚とテーマがはっきりと感じられる。上田監督は「気の強い女性に尻を叩かれるのが好き」、というと非常に語弊がありますが、正確には「キレキレの女性に叱咤激励されると、逆に燃えるタイプ」ではないかとお見受けしました。このあたりも「男子はコミュ障ばかりで、試験で優秀なのは女子ばかり」という今の日本のリアルにつながっている感じがして、『カメ止め』にも見られる強い作家性を感じます。つくり手と観客の壁をぶっ壊して、どんどん広がっていく「物語」。この物語は、これからももっと拡がっていくのでしょう。

さて、「カメ止め」で描かれる現場が「早い、安い、質はそこそこ」の微妙にやさぐれたプロの現場だったのに対して、一方「GHOST~」の現場は、好きで作品をつくっている、まだアマチュアの自主製作映画サークルです。起こるトラブルも初々しく、解決も体を張ってぶつかっていきます。

「親にもほとんど見放され、正直しんどい」。しかしそうした彼らだからこその目線がある。

世の中は、成功者ばかりいるわけではない。成功どころか、ふつうに仕事をして生きていくことさえ、難しいものです。つまずいてしまう人、挫折してしまう人もいる。このこともまた、現代社会のリアルです。しかしそうした状況の人でも、

「嫌なこととか全部忘れて、また明日も頑張ろうって思える映画を作れたら最高ですね」

というセリフが作中に出てくるのですが、それは決して芝居の中だけのものではなく、劇団のみなさんにとって、リアルな言葉だと感じました。私などにも、とても共感できる言葉です。

物語の中では、ある「不思議なこと」が起こるのですが、このセリフが、舞台独自の大きな仕掛けとなって、「不思議なこと」がもたらす感動、あたたかい気持ちにつながって行きます。

舞台とは本質的に、その場にいて、役者さんたちの「熱」を感じてこそ、本当の魅力が伝わるのかもしれません。だが筆者はいなかった。その点が残念です。

舞台と映画を巡る騒動がどのように決着がつくのかは置いて、作品としては、それぞれに独自の目線があり、魅力があった。

細かいようですが、「リアリティの水準」が、それぞれはっきりと違っていて(これは「物語がリアルだ、リアルではない」という話ではなく、その物語内で採用されるリアリティの度合いの話)、ここが違うと、かなり路線が違う印象を受けるものなのだなと、あらためて感じました。

つくり手と観客の壁をぶっ壊して、どんどん広がっていく「物語」。『GHOST IN THE BOX!』も『カメラを止めるな!』も、この先、さらにたくさんの人に観られるようなことになると、素晴らしいと思います。俺もがんばらないと。(堀田純司)

舞台『GHOST IN THE BOX!』は、実は8月下旬に一部の動画配信サービスで「配信スタート」との告知があった。しかし、いまだに配信が始まっていない。「GHOST~」のデジタル配信の折衝を行っているC社の担当者N氏に尋ねると「二次利用にあたっての様々な権利処理の確認を和田亮一氏側が進めている中で、完了していない事項がいくつか残り、配信開始をいったん取り止めている」という。

そんな折、FRIDAYデジタルは、 舞台『GHOST IN THE BOX!』の記録映像を入手。作家の堀田純司氏に緊急レビューを依頼したのが本稿である。

現在、舞台『GHOST IN THE BOX!』と映画「カメラを止めるな!」の「原案」「原作」問題は、双方が交渉の経過・状況について公表していない――。

 

▼舞台『GHOST IN THE BOX!!』上演記録▼ (2011年作品 40分)

劇団PEACE 第8回公演 『GHOST IN THE BOX!!』2013年再演版

初演(2011年)で好評を博した《ホラーコメディ》。

舞台となる廃墟の名は「大日本帝国陸軍第8化学兵器技術研究所」通称、鳴箱(ナキバコ)

シュチュエーション×ショッキングホラー×ジェットコースターコメディ!!

原作:荒木駿 脚色・演出:和田亮一 会場:上野ストアハウス

 

▼上田慎一郎監督 作品特集▼

『恋する小説家』 (2011年作品 40分)

一向に芽が出ないミステリー作家志望の岩佐辰夫。新作の原稿もゴミ箱に捨てた。がある日、岩佐の元に見知らぬ女子高生が現れる。「あたしはあんたの小説の主人公。あんたの小説を救いにきたの」……。ラブリィ・ポップなSFハートフルコメディ

『彼女の告白ランキング』 (2014年作品 21分)

ある日、男は彼女にプロポーズする。すんなり承諾を貰えると思っていた男だが、彼女に「告白したい事が17個ある」と告げられる。果たして男は彼女の告白を全て受け止め、結婚を決める事が出来るのか!?

『テイク8』 (2015年作品 19分)

想定外の公私混同!ウェディング・ワンシチュエーション・コメディ!自主映画監督の隆夫は、恋人の茜を花嫁役に「結婚」をテーマにした新作を撮影中。残すは1シーンであったが、花嫁の父役が急遽来れなくなる。やむをえず、見学に来ていた茜の本当の父、徹が代役を務める事になり……。

『ナポリタン』 (2016年作品 19分)

人の話を聴かない会社員の川上は、ある日突然、他人の言葉が「ナポリタン」としか聴こえなくなってしまう……。

◆上田慎一郎監督  作品特集◆(ミニシアター系映画サイト 青山シアター)『テイク8』のみ無料、他3作品は有料配信。上記作品紹介は同サイトより

 

▼『カメラを止めるな!』関連記事▼

第1弾「カメラを止めるな!」上田慎一郎監督  ”特大ブレイク”寸前の手応えと不安を直撃!

第2弾「カメラを止めるな!」特写! 女優役&監督役&上田監督  2館から124館へ超拡大で「震えが止まりません」

第3弾 興収10億円突破見えた「カメラを止めるな!」 映画界始まって以来の大快挙が拡散中!

第4弾「カメラを止めるな!」上田慎一郎&ふくだみゆき 世界一ホットな“夫婦監督”に聞いた創作と2人のヒミツ

▲9月6日にTOHOシネマズ日比谷で開催された”ポン”デ・ミリオン100万人動員アツアツ舞台挨拶の模様。開催時に120万人突破が発表された。

『カメラを止めるな!』(c) ENBUゼミナール 製作: ENBUゼミナール 配給:アスミック・エース=ENBUゼミナール

  • 作家堀田純司

    (ほった じゅんじ)主な著書に『僕とツンデレとハイデガー ヴェルシオンアドレサンス』『オッサンフォー』(以上講談社)『メジャーを生み出す マーケットを越えるクリエーター』『“天才”を売る 心と市場をつかまえるマンガ編集者』(以上、KADOKAWA)などがある。別名義でマンガ原作も執筆している。日本漫画家協会員。

Photo Gallary2

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