日米会談でわかったバイデン政権「本気の対中国包囲網」戦略 | FRIDAYデジタル

日米会談でわかったバイデン政権「本気の対中国包囲網」戦略

日米「2+2」会談、米中「非難応酬」会談。新・冷戦の始まりに日本は?〜黒井文太郎レポート

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3月18日(日本時間19日)、米アラスカ州アンカレジで、米中の外交当局トップ会談が行われた。参加したのは、米国側からブリンケン国務長官とサリバン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)、中国側からは外交トップの楊潔篪(ようけつち)共産党政治局員と王毅・国務委員兼外相だった。両国の政権中枢級の会談である。

本格始動したバイデン外交。強大化する中国と強硬に向き合う姿勢に、日本のとるべき道は? 写真:ロイター/アフロ

「各2分」予定の冒頭発言が1時間を超える波乱

今回の会談は、中国側の強い希望を受けて開催されため、米国が中国側を「呼びつける」かたちになった。中国側の狙いは、米国と対等の立場で対話を維持する関係性を構築・誇示するとともに、中国批判を強めるバイデン新政権を牽制、できれば懐柔することだったと思われる。

だが、結果的にその日の会談は、きわめて敵対的な雰囲気に終始した。米国側は香港や新疆ウイグル自治区の人権問題、台湾問題、サイバー攻撃問題などで中国を直接批判。中国側は猛反発し、異例の非難応酬となった。

バイデン政権はかねて気候変動問題やコロナ対策といったグローバルな問題を優先する姿勢を示しており、安全保障上の懸念である中国問題への対応の方針が注目されていたが、3月12日の日米豪印首脳電話会談(クアッド)、同16日の日米外務・防衛担当閣僚安全保障協議(2プラス2)、同18日の米韓2プラス2、そしてこの米中外交トップ会談という一連の外交活動の流れで、「国際秩序に重大な挑戦をする力を持つ唯一の国」(3月3日、ブリンケン国務長官の演説)である中国との駆け引きで、甘い顔は見せないとの意思を明確に示したといえる。

中国側としては、習近平政権が進めている香港支配強化、ウイグル人弾圧、海外での影響圏拡大を目指す「一帯一路」戦略、サイバー工作活動、南シナ海や東シナ海(尖閣海域)での支配圏拡大工作、さらには台湾侵攻を想定した大規模な軍拡などに対し、バイデン政権が強硬な対抗措置をとってこないように誘導したい局面だが、バイデン政権としてはそうはいかないというわけだ。

「尖閣問題」では日米の連携をアピール

では、こうした米中の対立は、日本にはどう影響するだろうか?

東京で開催された日米「2プラス2」会談は従来にない踏み込んだ内容に 写真:代表撮影/ロイター/アフロ

まず、日本の最重要な問題である尖閣問題では、これはかなり「追い風」になった。日米2プラス2では、厳密に言えばこれまで米国が言ってきたことと内容的には変わらなかったが、共同文書では「日米安保条約5条の下での尖閣諸島を含む日本の防衛に対する米国の揺るぎない関与」「尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも引き続き反対」「中国海警法等の最近の地域における混乱を招く動きについて深刻な懸念を表明」など、日本にとって心強い文言が列記された。

これは、尖閣を狙う中国を牽制する意味としては大きい。中国としては、米国と政治的に対立すれば、東シナ海での日本との係争でも、より米国の介入を心配しなければならなくなる。

今後も引き続き「尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうと一方的な行動」に出た場合、仮に状況がエスカレートして日本側と衝突となれば、米軍の登場も覚悟しなければならない。逆に日本としては、米国がついているということを声高にアピールしつつ、尖閣諸島の実効支配をより強化するチャンスでもある。

この共同文書での尖閣問題の強調は、おそらく日本側の強い要望だったのだろうが、その他の米国側主導で盛り込まれたと思われる、中国を名指ししての全体的に強硬な論調は、これまでの日本政府の姿勢からすると、かなり踏み込んだ表現といっていい。

突出して「腰が引けていた」日本もついに

日本政府は従来、中国側の反発を恐れて、政治的な問題で中国政府を名指しで批判・非難することを避けてきた。香港や新疆ウイグル自治区での人権問題でも、他の西側主要国と比べると明らかに腰が引けた対応が目立っていた。日本政府としては、米国や他の西側諸国に中国を牽制してもらいつつ、自分たちは正面からは「敵対しない立場」をキープすることが、政治的にも経済的にも、もっともリスクが少ないとの判断だったのだろう。

しかし、習近平政権の覇権主義的行動や人権侵害は著しく、西側主要国では対中国警戒論が拡大している。イギリスが3月16日に発表した国防・外交の「統合レビュー」でも、中国の台頭を念頭に、地政学的リスクの中心がインド太平洋にシフトするだろうことが明記された。

そして、そのイギリスは今後、空母部隊を日本近海含む西太平洋に長期滞在させる。ドイツも8月から半年間、フリゲート艦を南シナ海含むインド太平洋に派遣すると発表している。また、EUが3月17日の会合で、ウイグル人弾圧を理由に中国政府高官らに制裁を科す方針を決めたという動きもある。

バイデン政権が重視する人権問題ついては、G7外相声明が出されるケースが増えている。すでにロシアやミャンマーのデモ弾圧に対する非難声明も出されているが、3月12日には、香港の選挙制度変更を批判し、民主派抑圧をやめるよう求める声明も発表された。

日本はロシアやミャンマーの人権問題でも、西側主要国では突出して腰が引けた対応をしてきたが、G7のメンバーある以上、自分だけ抜けるということはしづらい。そこに名を連ねるしかないが、自分から積極的に声を上げるということはしていない。

しかし、バイデン政権では対アジア戦略を主導するキャンベル・インド太平洋調整官を中心に、中国に対しては同盟国や友好国と協力して包囲し、対抗していく戦略をとるだろう。今回の日米、米韓の2プラス2は、まさにそのスタートである。

バイデン政権は必ずしも対外強硬派ということではないが、覇権主義や人権侵害で強硬な中国との駆け引きにおいて現実的な路線をいくのであれば、日本も曖昧な態度は許されない。日本は西側民主陣営チームの一員として、今後の東アジアの安全と安定に責任を持たなければならない。

なお、今回の日米2プラス2の共同文書では、「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」という文言も注目される。米国ではとくに軍当局に、中国軍の軍拡による台湾防衛の困難さに言及するケースが散見される。米国が当事者でもある台湾の問題は、前線の軍事バランスだけでは状況は決まらないが、有事になるか否かはともかく、日本も万が一に備える必要はあるだろう。

共同文書にはさらに「日本は国家の防衛を強固なものとし、日米同盟を更に強化するために能力を向上させることを決意」との文言もあるが、強大で野心的な国の脅威が存在する以上、それは安全保障の基本である。

「プーチンは殺人者」に激怒したロシアと、中国の関係は

ところで、米国がこのように集団で対応しようとしているいっぽうで、中国側もやはり同じようなことは考える。たとえば王毅・国務委員兼外相はロシアのラブロフ外相を中国に招待、3月22日に会談する。バイデン大統領が17日にABCニュースのインタビューで「プーチン大統領を殺人者だと思うか?」と問われて「そう思う」と答えたことでプーチン本人は激怒しているが(*プーチン政権の指揮下となるロシア情報機関が多くの反対派を暗殺している)、中国とロシアは反米という点では共闘関係にある。

また、3月11日にロイター通信などが報じたところによると、バイデン政権が進めようとしている民主主義陣営の協調戦略に対抗するため、中国、ロシア、イラン、北朝鮮など反民主主義陣営の全17か国が「国連憲章防衛の友人グループ」と名付けた団体の結成に動いているという。内政不干渉の原則などを前面に、各国内での人権問題などへの外国の介入に反対していくという。

陣営と陣営の対立構造とは、まさに「新たな冷戦」である。バイデン政権が危険な反民主主義陣営の野心を座視しない姿勢を示したことで、世界はますます緊迫してきた。日本のとるべき姿勢が問われる。

黒井文太郎:1963年生まれ。軍事ジャーナリスト。モスクワ、ニューヨーク、カイロを拠点に紛争地を多数取材。軍事、インテリジェンス関連の著書や記事、テレビ出演も。最新刊『超地政学で読み解く! 激動の世界情勢 タブーの地図帳』(宝島社)>

  • 取材・文黒井文太郎写真代表撮影/ロイター/アフロ

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