報ステ「炎上PR動画」関係者が明かした制作過程と怒り | FRIDAYデジタル

報ステ「炎上PR動画」関係者が明かした制作過程と怒り

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問題となった「報道ステーション」PR動画の一場面。動画内の「ジェンダー平等と掲げてる時点で時代遅れ」という部分や、女性の人物像の描き方に対し、「女性蔑視では」などとネット上で批判が集まった

「ウェブで流すPR動画の話ですので、地上波で放送する番組とは別だという考えです。ですから、番組で謝罪はしませんでした」

24日の報道ステーション放送終了後の反省会で、プロデューサーは番組スタッフに「番組内で謝罪・説明をしなかったこと」に関してこのような趣旨の説明を行った。スタッフの間からは怒りや落胆の声が上がった。

「番組で説明するべきではなかったのか」という質問に「自分もそのつもりだったが、結果的にはオンエアでは触れない決断になった」とプロデューサーは釈明。「結局はプロデューサーレベルでは決められず、上からの圧力がかかったのだな…」とスタッフルームの空気は重く沈んだという。

これらは、実際にこの反省会の場にいたスタッフから筆者が聞いた話である。

テレビ朝日報道ステーションのPR用動画の内容が女性蔑視ではないかという批判が殺到し、テレビ朝日が急遽動画を取り下げて謝罪した問題。

24日の番組では一言もこの問題に触れることはなかった。その理由が上述のものでは、スタッフたちが納得しなくても当然だろう。

筆者は報道ステーションにかつてディレクターとして在籍したことがある、いわば「番組OB」であるが、一昨日私がYahoo!ニュース個人にこの問題について書いた記事には、多くの番組関係者から「よく書いてくれた」「最近番組が少しおかしいと思うので、これを機に変わってほしい」などの声が寄せられた。

そして、「なぜ今回こんなPR動画が作られたのか?」という経緯についても、関係者への取材から次第に明らかになってきた。彼らが私に教えてくれた話を総合すると、ことの顛末はこういうことになる。

PR動画の制作を担当したのは、年齢30代前半の男性スタッフ。仕事ができると評判だが、女性スタッフの間からは「ちょっと人を下に見ている感じもする人物」という声もあるという。 彼が担当となってweb用のPR動画を作っていることは、番組のデスククラスも誰も知らなかったようで、内容を知っていたのは番組上層部の10人くらいだったようだ。

そして、報道のトップでもPRについて知っている人物と、何も聞かされていなかった人物がいたようだ。「一部の人間だけで進められたプロジェクト」という印象で、現場のスタッフたちも、一体なぜあんなPR動画が知らないうちに作られていたのか、「背景も理由もよくわからないのが一番納得がいかない」という声が上がっている。

そして「少なくとも上層部が内容を見てオッケーを出したはずではあるので、なぜあんな動画を見て問題だと感じなかったのか」「女性スタッフも見ているのに、危機管理が働かなかったのはなぜなのか」と疑問に思う関係者もいる。

さらに、事後の対応にも不満の声はある。ネットで炎上が始まったのは23日の深夜。そして東京新聞がそれを記事にしたのは24日の朝7時だ。しかしYouTubeから動画が削除されたのは24日の昼頃になってからである。「なぜもっと早く動画を削除できなかったのか、そして謝罪の内容も、あれでは納得できない人が多いのではないか」という声や、「問題となった動画を削除しようという動きがなかなか報道局の中で出てこなかったことが怖い」と懸念するスタッフの声も聞こえてくる。

「なんだかもう、やる気がなくなった」「ガッカリした」と筆者に心の内を明かすスタッフたちの気持ちが、OBの私には痛いほどよくわかる。

そもそも報道ステーションは、スタッフにとっては過酷な番組だ。毎日仕事が終わるのは24時を過ぎる頃で、友達はまずいなくなる。遊びに行くことも、一緒にご飯を食べに行ったりデートをすることすらままならないからだ。長い間続ければ、体調を崩す人だっている。

一昨年秋には、チーフプロデューサーによる女性アナウンサーなどへのハラスメント事件が明るみに出た。そして、去年はスタッフルームで、アナウンサーや番組首脳陣をはじめとする新型コロナウイルスへのクラスター感染が発生し、バッシングも受けた。それでも応援ももらい、少人数でなんとか日々の放送を継続してきたのだ。

番組が信頼を失うのは一瞬だが、それを回復していくには日々コツコツと少しずつ積み上げていくしかない。それこそスタッフたちは、忍耐に忍耐を重ねて頑張ってきたはずだ。テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」の放送時間変更もあり、この春からは新しいライバルを迎えて一層試練の時。さあ頑張っていこう! という矢先にこれでは、「なんだかもう、やる気がなくなった」という心情になっても無理はない。

テレビ朝日報道局の首脳陣は、ぜひこうしたスタッフたちの心境を察してあげてほしい。OBである私に「もっと記事を書いてほしい」という声がスタッフから届くのはなぜなのか、その置かれた状況をぜひ考えてほしい。

申し訳ないが、あの謝罪ではちゃんとした謝罪にはなっていないと思う。きちんと事の経緯を番組でも明らかにし、「なぜ、どこがいけなかったのか」「これからどうするのか」をきちんと記者会見するなどして上層部が説明するべきではないだろうか。

  • 取材・文鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

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