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「安眠したいなら黙れ」米韓罵倒の金与正に国内から批判の理由

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米国や韓国に対し強気な姿勢を続ける金与正氏。国内では批判の声もある(画像・AFP/アフロ)
米国や韓国に対し強気な姿勢を続ける金与正氏。国内では批判の声もある(画像・AFP/アフロ)

「韓国が、我が国を狙った侵略的戦争実演を強行している」

3月16日、北朝鮮の朝鮮労働党副部長・金与正氏は、米韓軍事演習を行う韓国を激しい言葉で非難した。さらに米国のバイデン新政権を、こう牽制している。

「(任期の)4年間安眠したいなら黙っていろ」

「米国が敵視政策を継続するなら、わが国が何をするかをよく考えてみるがいい」

言葉だけではない。3月25日には日本海へ向け弾道ミサイル2発を発射。米韓への威嚇を、行動でも示した。だが、与正氏の強硬な態度に対し北朝鮮国内で意外な反応もある。批判の声も多いのだ。米国のラジオ「フリー・アジア」は、北朝鮮北部・両江道(リャンガンド)の幹部の話として、次のようなコメントを紹介している。

〈(米朝や南北首脳会談が行われた)3年前の春はもう戻らない。大局を把握できず、やたらと放言を吐き出す(与正氏の)世間知らずの態度に言葉を失った〉

別の地方幹部は、こう話したという。

〈米韓軍事演習は「わが国に向けた侵略戦争の準備だ」と騒ぎ、国民の思想教育に利用するのは毎年のことだ。耳にタコができており、聞き流している〉

「ムカつく!」

与正氏が外国を罵るのは、今回だけではない。昨年5月、韓国の脱北者団体が北朝鮮に向け女性の水着写真などを入れたビラを撒いた際には、文在寅政権を「ムカつく!」「吐き気がする」と罵倒。同年12月には、北朝鮮の新型コロナウイルス対策に疑問を呈した韓国外相を、「身のほど知らず」「なんの計算もない妄言」と手厳しく攻撃している。

なぜ強気の与正氏に、国内から批判の声が出ているのだろう。『デイリーNKジャパン』編集長の高英起氏が語る。

「反発している人々は、主に二つのグループです。一つは年配の党幹部たち。北朝鮮は儒教の影響を強く受け、年上の人が敬われます。若い与正氏がスタンドプレーをとることに対し、『生意気な青二才』とこころよく思っていない高齢者も多いのでしょう。

二つ目が、韓国と敵対するのではなく協力すべきだと考える人々です。北朝鮮は経済制裁や新型コロナウイルスの影響で、深刻な不況に苦しんでいる。経済的に余裕があり同族の韓国と手を結び、活路を見いだすべきだと考えている人たちも多くいるんです。南北交流ができれば、暮らしは良くなるはずだと」

だが、韓国との協力は金正恩体制にとって、とうてい容認できない相談だという。高氏が続ける。

「北朝鮮当局は、朝鮮戦争以来、何十年にわたり『韓国よりわが国のほうが優れている』と主張してきましたからね。協力が実現すれば、それがウソだとバレてしまう。金正恩体制の根幹を揺るがしかねない、重大な問題なんです。

与正氏の罵倒は、兄の正恩氏に言わされているのではなく、おそらく本音でしょう。彼女が正恩氏の後継者であることは、ほぼ間違いない。過激な言動で韓国を非難し実際に行動に出ることで、自身の指導力を内外に示そうとしているんです」

体制を維持するためには、米韓を非難し続ける必要がある。だが協力しなければ、経済は悪化の一途。北朝鮮は深刻なジレンマに悩みながら、難しい国家運営をしなければならない。

  • 写真AFP/アフロ

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