視聴率分析でわかった「冬のドラマ」珠玉の名ゼリフ

どんなセリフがどのような層に刺さったのかを検証!

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ドラマ『天国と地獄』で女性になってしまう難役を好演した高橋一生

2021年冬ドラマは、26日に放送された長瀬智也主演『俺の家の話』最終回をもって全てが終了した。

今クールの特徴は、次第に視聴率が上昇する後半盛り上がり型ドラマが多かったこと。

中盤より世帯視聴率が2~3%上がったのは、『監察医 朝顔』『青のSP』『オー!マイ・ボス!』など。中には『天国と地獄』のように、7%ほど押し上げ20%の大台に乗った作品もあった。

そしてもう一つの特徴は、クライマックスの最終回で、極熱の長いセリフが視聴者を魅了したこと。

しかも珠玉のメッセージは、視聴者すべてではなく、特定の層に強烈に刺さっていた。

どんな人々に、如何なるキラーパスが届いたのか分析してみた。

圧巻は『天国と地獄』

16.8%と高視聴率で始まるも、リアリティに欠ける設定などで一旦は3%以上数字を落とした『天国と地獄~サイコな2人~』

ところが綾瀬はるかと高橋一生の息を飲む演技、“天国と地獄”の意味が回を追うごとに重層性を増す巧みな構成、そして脚本を書いた森下桂子の骨太なメッセージで、最終回は胸を熱くした視聴者が少なくなかった。視聴率20.1%と今年の最高記録も納得の実績だ。

この最終回で最も熱いセリフは、刑事・望月綾子(綾瀬はるか)による日高陽斗(高橋一生)への取り調べ。

東朔也(日高の二卵性の双子の兄)が自白するVTRを見せても、殺人は自分の仕業と言い張る日高。第5話で披瀝した望月が刑事になった理由を語るあたりから、セリフの熱は一気に急上昇した。

「私は10歳の時、警察官になろうと決心しました。学校で濡れ衣を着せられたからです」
「その私が、誰かが濡れ衣を着せられるのを見過ごして良いと思う。もしこれを見て見ぬふりをしたら、その瞬間、私は私の正義をなくす」
「私に私の正義を守らせて(日高は大粒の涙を流す)あなたは私のために、本当のことを言うべきでしょう」

東芝視聴データ「TimeOn Analytics」によれば、この3分ほどのやりとりで毎秒の接触率は0.1%と微増していた。特に大きくは変化してはいない。

ただしF4(女性65歳以上)に限ると、0.8%と全体平均より8倍上昇している。

他の層では、M4(男性65歳以上)の反応が次に大きい。人生をかけるに値する信念を持ち、その為にすべてを投げ打つ姿勢は、やはり人生経験が豊富な高齢者の心に響くのだろうか。

特に望月という女性刑事の“ひたむきさ”と“無償の愛”を、綾瀬はるかが熱演した点が高齢の女性を突き動かしたのかも知れない。

この極熱セリフをきっかけに、接触率はラストまで右肩上がりを続ける。

10代を熱くした『オー!マイ・ボス!』

『天国と地獄』と対照的なのが『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』だ。

個人視聴率全体では微減していた主人公の極熱セリフだったが、何と10代には刺さっていた。

破局した主人公・鈴木奈未(上白石萌音)と宝来潤之介(玉森裕太)。

ところが潤之介のアシスタントだった一太(亜生)に刺激され、奈未はコンテナ倉庫に保管された潤之介の写真を前に、長いセリフを披露する。

「前に言ってくれましたよね。夢に縛られたり、夢を持つことに囚われたりして、それで笑えなかったら意味がない。私、あの言葉に本当に救われたんです」
「でも夢に蓋をして、それで笑えなかったら、それも意味ないんじゃないのかな」
「もしかしたら夢って、いつか一杯いっぱい笑いたいから、今つらくても、今困難でも、見てしまうものなんじゃないかな」
「私はあなたの笑った顔が大好きです」

大人たちには恥ずかしくなるような愛の告白と受け止められたかも知れない。
ところが夢と恋愛の関係をテーマにしたドラマだけに、10代は深くて重い言葉と受け取ったようだ。

確信を覆す説得力

中にはドラマに没頭する人が少ない中高年の男性を魅了した極熱セリフもあった。

日本の性善説に挑戦した、藤原竜也主演『青のSP—学校内警察・嶋田隆平—』だ。学校にスクールポリスが常駐する、日本社会では異例の物語。「守ってやるが、容赦はしない」をキャッチコピーとし、派手なアクションと硬派な作りで押してきたが、最終回は重いメッセージを投げ込んできた。

嶋田刑事(藤原竜也)の交際相手だった香里(明日海りお)は、生徒・涌井美月(米倉れいあ)と尾崎香澄(鈴木梨央)の企ての結果亡くなっていた。

嶋田はそれを突き止め、香里の死の意味を二人に説いた。

「香里は2度と戻ってこない。2度と笑った、怒ったり、泣いたりすることも出来ない。美味いもん食べたり、好きな人と触れ合うことも出来ないんだ。人が死ぬということは、そういうことなんだ」

この言葉で二人は事実を認め、謝罪する。

ところが嶋田は、香里が一度大学をやめ、改めて入り直した事実を教室の生徒全員に話した。父親による裏口入学だったことを知った香里は、自分のやっていることに嫌気がさしたのである。

「それからはバイトで学費を稼ぎながら、もう一度大学に入り直して、教員採用試験を受けた。そして今度は、胸を張って教師になった」
「わかるか。狡して手に入れたものなんて、何の値打ちもないんだよ。香里は身をもってそのことを知っていた。だから必死でお前たちのことを止めようとした」
「人は誰だって過ちを犯す。このクラスにも、身に覚えのある奴が大勢いるはずだ。でもな。取り返しのつかないことなんてないんだよ。お前たちなら、ちゃんとやり直せる。きっとそれが、香里が伝えたかった言葉だ」

日本人の性善説を否定するような設定のドラマだった。

ところが最終回は、悔い改められる人間の善の部分に回帰した。この長い極熱セリフの間、個人視聴率全体は微増に留まった。ところがM2とM3(男性35~64歳)だけは、明確に上昇した。

実社会で不正やズルに直面することの多い世代だ。

せめてフィクションの中では、正論が確信犯をも改心させるような説得力を持って欲しいと願ったのだろうか。

やはり言葉には力がある

以上の3ドラマの他にも、特定の層を魅了した極熱セリフは少なくなかった。

3度目の人生を送ることになっても、結局は最初の妻・澪(広瀬アリス)にプロポースした剣崎元春(大倉忠義)。『知ってるワイフ』最終回の、その極熱セリフでは、F3~4(女性50歳以上)が一番反応した。タイムワープという非現実的な設定だったが、気持ちは元のさやに戻る展開が、こうした層にフィットしたのだろうか。

『監察医 朝顔』と『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』の最終回も、極熱セリフが中高年の女性に刺さった。

朝顔(上野樹里)と桑原(風間俊介)は、朝顔の母(石田ひかり)が亡くなったと思われる3月11日に結婚式をあげた。

そこで認知症を抱え始めた父・平(時任三郎)が長いスピーチをし、今まで辛いばかりの3月11日を、家族にとって忘れられない日にした。

彼氏が出来ない娘・空(浜辺美波)と、それを心配する母・碧(菅野美穂)の物語『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』。

最終回では、母を心配する娘の気持ちを知った母は、娘が心配でならず「ずっと見守っていたいです。離れたくないです。・・・見守っていたいです・・・」と号泣する。

その横で、笑顔ながら涙を流す娘。

これら3作に共通するのは家族の絆。どうやらF3~4層のスイートスポットのようだ。

以上のように今期のドラマでは、最終回の極熱セリフが大活躍した。しかも心を打たれた視聴者は、各ドラマで一様ではなかった。10代、中高年の男性、そして中高年の女性など。

やはり人間を描くドラマは、誰のどんな状況が描かれているかで、反応する人々も異なる。

その意味で異なる層の心に届いた今期のドラマは、多様性に富んでいたという意味で豊作だったと言えるのではないだろうか。

一見若年層狙いや恋愛ドラマが増えて来たように見えるが、実際には幅広い層が楽しんでいた。

春クールでも、多様なドラマを楽しめると期待したい。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

  • 写真Rodrigo Reyes Marin/アフロ

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