「小園の完成度はマー君以上」メジャースカウトのセンバツ通信簿 | FRIDAYデジタル

「小園の完成度はマー君以上」メジャースカウトのセンバツ通信簿

カンザスシティ・ロイヤルズの国際スカウト・大屋博行氏が注目の10選手を診断

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184cm、89㎏。2回戦で敗れたが、大会前のNO・1の評価は変わらず(写真:共同通信)
184cm、89㎏。2回戦で敗れたが、大会前のNO・1の評価は変わらず(写真:共同通信)

「小園がナンバーワン。二番手が畔柳。将来性は達。一言で表すとこの3人です。まず小園は1位でないと取れないと思います」

センバツに出場したプロ注目選手たち。ドラフト候補の高校生をカンザスシティ・ロイヤルズの国際スカウト、大屋博行氏に評価してもらった。

小園健太 市和歌山 投手 最速152キロ!

1回戦 対県岐阜商 1対0 9回完封 被安打4 8奪三振
2回戦 対明豊 5回からリリーフ登板 7回に決勝点を奪われ負け投手に

「県岐阜商戦は評判通りの投球内容でした。腕の振りがストレート、変化球の何を投げても変わらない。スイングアークが大きいのではなくて、コンパクトに投げている。ツーシームはナローとかワイドとか握る感覚、指幅を変えてるはず。広めたり狭めたり自在じゃないかなぁ。こんなシーンはこの曲りがいいと投げ分けていた。カーブ、カット、チェンジアップもいい。スライダーは右バッターの手元に来てから、逃げるのでバッターが追っかけてしまうんです。

バントを何回もされて(5回)、ランナーを背負ったけど苦にしてなかった。気持ちも強いと思う。比較対象として、例えば田中将大(楽天)。マー君は元キャッチャーでフォームが固まっていなかった。潜在能力があったので足し算をしていって、そこからの大きな成長があった投手。小園はすでにフォームは出来上がっている。掛け算で成長できる投手。球界ナンバーワン、巨人の菅野みたいになる可能性がある

畔柳亨丞 中京大中京 投手 最速151キロ

178㎝、80㎏。畔柳は躍動感あふれるフォームに加え、闘争心を前面に出す
178㎝、80㎏。畔柳は躍動感あふれるフォームに加え、闘争心を前面に出す

1回戦 対専大松戸 2対0 9回完封 被安打6 12奪三振

2回戦 対常総学院 15対5 7回 被安打7 7奪三振

準々決勝 対東海大菅生 6対0 9回完封 被安打2 7奪三振

「畔柳は身長が180センチないけど、お尻、太ももがガチッとしていて金太郎体型。ストレートを力感込めてぶち込んでくる。アグレッシブですね。スコアリングポジションで全部、三振を取ってました。去年のエースの高橋(宏斗、中日)にフォームも似てるし、闘争心もダブる。レッドソックスに行った沢村拓一にも似てる。重ねていいか疑問やけど(笑)。チェンジアップも一級品だった」

達孝太 天理 投手 最速148キロ

193cm、85㎏。和製ダルビッシュとも評され、潜在能力の高さを評価される
193cm、85㎏。和製ダルビッシュとも評され、潜在能力の高さを評価される

1回戦 対宮崎商 7対1 9回完投 被安打6 10奪三振

2回戦 対健大高崎 4対0 9回完封 被安打2 8奪三振

準々決勝 対仙台育英 10対3 8回 被安打8 6奪三振

「天理の達君は中学から見てる。実は大きな声では言えないんですが家が近いんです。よう、知ってます(笑)。メジャー志向もあって、目が離せない選手。身長も伸びて手足が長くなって体もバネがついた。角度のあるストレートが最高。腕がしなって、むちのように投げる。まだ体の線が細いので、がっしりしてくればさらに安定する。

カーブ、スライダー、フォークなど変化球を投げるのも好きだけど、カーブがすっぽ抜けることもしばしばある。和製ダルビッシュという例えもあるようですが、変化球のレベルは本家が数段上です。ダルビッシュは七色変化球を投げていた。でも、達は17歳になったばかり、未完成なんです。逆に今大会の中では一番、伸びしろを持ってる。将来性は未曾有です。球速は155㌔は普通に出るようになると思いますよ

大阪桐蔭の2人は伸び悩み

松浦慶斗 大阪桐蔭 投手

185cm、94㌔。東日本大震災の被害が大きかった宮城県石巻出身。「勝たなきゃいけない、と考えてスケールが小さくなってしまった」(大屋スカウト)
185cm、94㌔。東日本大震災の被害が大きかった宮城県石巻出身。「勝たなきゃいけない、と考えてスケールが小さくなってしまった」(大屋スカウト)

関戸康介 大阪桐蔭 投手 最速151キロ

178㎝、81㌔。MAX151㌔の直球を投げることで注目されたが、智弁学園戦は暴投4つ。「甲子園の雰囲気に飲まれたかな」(大屋スカウト)と厳しい評価だった
178㎝、81㌔。MAX151㌔の直球を投げることで注目されたが、智弁学園戦は暴投4つ。「甲子園の雰囲気に飲まれたかな」(大屋スカウト)と厳しい評価だった

松浦:1回戦 対智弁学園 4回4失点 被安打2 4奪三振

関戸:1回戦 対智弁学園 1回3分の1 3失点 被安打2 2奪三振

「大阪桐蔭は二人とも伸び悩み。松浦は中学で1、2番のピッチャーだった。時間も制約されて試合も少なかったでしょうが、育成は難しいんです。

松浦は昔は荒々しくダイナミックに投げてたのに大人しく、こじんまりになってしまって。変化球もキレてない。勝たなきゃいけない、低めにコントロールしなきゃ、と整えてしまうとスケールは小さくなりがちです。いつものように初回に4失点ですか・・・。自己分析をして、心理面も見直して経験を増やすこと。時間がかかるかなと。プロからしたら素材、サイズは魅力です。

関戸も中学からみてる。メジャー志向もあった。ゲームは気負いすぎてた。暴投が4つもでしょ。151キロで騒がれて、甲子園の雰囲気に飲まれたかなと思います。体は強いけど、180センチないのでスケール感に恵まれてない。(大阪)桐蔭というところでやってることは二人とも好材料。大阪桐蔭出身はプロで活躍してる。桐蔭は力のある選手ばかりですが、長い目で見ながら指導されているか、選手の最盛期の照準、旬がどこか。育成のされ方もみます。桐蔭は高いレベルのチーム内で揉まれて、ほんとの実力を備えていく、と言っていい

豊作の投手陣に比べて野手は……

「今大会はピッチャーが豊作で投降打低と言われるけど。バッターに魅力ある野手が少ない。今年、目立ったのは、小園の女房役の松川のバッティングでした」

松川虎生 市和歌山 捕手

178センチ 98キロ 右投右打。大屋スカウトはバッティングにおけるボールの迎え方に加え、エース小園のリードや肩の強さも高く評価した。
178センチ 98キロ 右投右打。大屋スカウトはバッティングにおけるボールの迎え方に加え、エース小園のリードや肩の強さも高く評価した。

1回戦 対県岐阜商 4打数2安打

2回戦 対明豊 3打数2安打2打点

松川のは昔のおかわり君(中村・西武)に似てる。ヒットの延長がホームラン。ボールの迎え方がうまい。バットの面をボールに合わすバッター。外を攻められて1打席目は討ち取られて2、3打席目は変化球を右方向に打った。それも強い打球で。賢いと思いました。スイングスピードが速いので、引きつけて対応できる。1回戦、捕手としても小園のリードが良かった。ストレートが抜けていた小園をスライダー勝負に切り替えて、完封を演出してました。セカンド送球も速い」

前川右京 智弁学園 外野手 左投左打

177cm、88㎏。1回戦の大阪桐蔭戦でノーヒットでも評価は高かった
177cm、88㎏。1回戦の大阪桐蔭戦でノーヒットでも評価は高かった

1回戦 対大阪桐蔭戦 8対6 2打数無安打3四球2得点

2回戦 対広島新庄  5対2 4打数2安打1打点

準々決勝 対明豊   4対6 4打数0安打1打点

「前川は当然、フォローしていかないとと思います。高校生野手ではトップランナー。お兄さんも津田学園の四番を打っていた。一昨年、1年生の4番打者で甲子園に来た。去年の交流戦で中京大中京のエース高橋(宏斗、現・中日)からヒットを打った。スイングスピードがすごいんですよ。監督が育てた中で左ではナンバーワン、と言ってるようです。肩があるし体もがっちりしてる」

大塚瑠晏 東海大相模 内野手 右投左打

168cm、66㎏。大屋スカウトは投手の投げる球速や打球飛距離だけでなく、肩や足、守備にも目を光らせる。大塚は守備と足が評価された
168cm、66㎏。大屋スカウトは投手の投げる球速や打球飛距離だけでなく、肩や足、守備にも目を光らせる。大塚は守備と足が評価された

1回戦 対東海大甲府 3対1 4打数1安打1打点

2回戦 対鳥取城北 2打数0安打

準々決勝 対福岡大大濠 8対0 出場なし

「相模のショート、大塚。○印をつけましたよ。守備が素晴らしかった。ゴロをいくつ捌いたんでしょう(9回)。肩の強さを表すロイヤルズのチーム的な基準の数字があって、50というのがメジャーの平均値です。肩が普通に強いというのは40なんです。45、50というのはアメリカのマイナーにいる強い肩のレベル。大塚には50をつけました。それだけ、いい肩をしてます。手の捌き、足の運び、全てがいい。イレギュラーにも対応してた。一塁の到達タイム、4秒1ぐらいじゃないですか」

鈴木悠平 東海大菅生 外野手 右投右打

大会第1号の本塁打を放った東海大菅生・鈴木悠平に大屋スカウトは熱視線。「来年のドラフトにかかる可能性はありますよ」(大屋スカウト)
大会第1号の本塁打を放った東海大菅生・鈴木悠平に大屋スカウトは熱視線。「来年のドラフトにかかる可能性はありますよ」(大屋スカウト)

1回戦 聖カタリナ学園 4対3 3打数1安打1打点 大会第1号本塁打

2回戦 京都国際 5対4 2打数1安打

準々決勝 0対6 3打数0安打

「前半、ホームランが全く出なかったでしょ。第1号を放った東海大菅生の2年生の鈴木悠平君、実は昔から知ってるんですよ。やっぱり、家が近くて、通ってるジムが一緒。中学の時にボーイズを紹介しました。去年、自粛の時に入学したのに東京の学校に行けない、と言っていて、ジムで頑張れよと声をかけました。大会前に急遽、登録されたんですよね。ミラクル的なものを持ってると思います。肩は悪くないし、ストレートにも強い。彼は来年のドラフト候補の可能性はありますよ。近所の〝大屋のおっちゃん〟は期待してるんです」

ドラフト上位候補を挙げてもらって、最後に総括の感想を伺った。

「いい人材がサッカーに流れてると思う。背の高い選手でもサッカーでバランスよく走ってる姿をよくみます。野球人口が減ってますね。心配になります。
この1年間、コロナ禍で試合の数が減りました。お腹いっぱいやってきてないから、今年のセンバツは常に100パーセントでやってるイメージです。1イニングを目一杯投げちゃう。先発なのにクローザーみたいに。試合をできる喜びかな。そんな球児を眺めるのは幸せですけどね」

  • 取材・文清水岳志写真共同通信

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