8人が重軽傷「原宿暴走犯」が実母に訴えていた被害妄想の発端 | FRIDAYデジタル

8人が重軽傷「原宿暴走犯」が実母に訴えていた被害妄想の発端

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軽乗用車が進入し、ビルに衝突した原宿・竹下通りの現場 写真:共同通信

2019年元日、東京・原宿の竹下通りで車を暴走させ8人に重軽傷を負わせたとして、殺人未遂などの罪に問われた日下部和博被告(23)。その裁判員裁判判決公判が3月17日に開かれ、東京地裁(永渕健一裁判長)は被告に懲役18年の判決を言い渡した(求刑懲役20年)。

「死刑執行に対する報復として多数の一般人を無差別に殺害しようと考えて犯行に及んでおり、人命軽視も甚だしく、その意思決定は身勝手極まりない」(判決より)

日下部被告は、元日に明治神宮の参拝客を無差別に殺害しようと、ガスバーナーを取り付け、火炎放射器のように改造した高圧洗浄機や、灯油を入れたポリタンクなどを車に積んだという殺人予備罪、その後に通行人を殺害しようと竹下通りに車を乗り入れ、急加速して走行し8人に傷害を負わせたという殺人未遂罪、その直後に、逃げる日下部被告を追った別の1人を殴ったという傷害罪に問われていた。

事実関係に争いはなく、争点は殺人未遂についての殺意の有無、そして犯行当時の責任能力についてだった。弁護人は、日下部被告が当時罹患していた統合失調症の圧倒的影響のもと起こした事件であり、心神喪失状態にあったと主張。また、8人に重軽傷を負わせた殺人未遂罪については「途中からは前が見えず、人がいるかわからないまま事件を起こした」として、途中からはねた5人については殺意がなかったと主張していた。

公判では実母が証人出廷し、学生時代から日下部被告が「臭いと言われる」「嫌がらせをされる」と訴えていたことを証言している。

「高校生になって初めて『話がある』と言われました。何事かと思ったら『学校を辞めたい』と……。主人は病気で入退院を繰り返していて、おそらく当時入院していた時期だったと思います。『卒業してほしい』と伝えると『自分のことを臭いと言われる』と言いました。まず、臭いということはないと確信していたので『気のせいじゃないの?』と言いました」(実母の証言)

実父は日下部被告が高校1年生の頃に病死した。成績不振により現役での大学受験を諦めた被告は浪人し、専門学校に入学したものの数ヵ月で辞め、自給自足の生活を経て、実家へ戻った。この頃の被告の様子を実母はこう語る。

「散歩中の犬が自宅の外壁におしっこをしているからと、おもちゃの銃で犬を撃ち……ご近所の方だったので一緒に謝りに行こうと言いましたが『悪くないから謝りに行かない』と言い、私一人で謝りに行きました。それ以外には、外で車がクラクションを鳴らしてくるとか、そういうことを……」(同)

被告人質問で日下部被告自身も、当時の様子をこう述べた。

「実家の壁にできたシミがだんだんひどくなってきました。何か液体をかけられているのか犬のおしっこ、どちらかだと思っていました。壁があって見えませんでしたが、たぶん飼い主(が犯人)です。とっとと、どこかに行ってほしいと銃で撃ちました」(被告人質問での証言)

他人の悪口が聞こえてくるなどに悩み「ずっと嫌がらせが続いていた」とも語った。

被告は事件前年、大阪の大学に進学。その年の7月、地下鉄サリン事件などで死刑が確定していたオウム真理教の元代表や幹部らの死刑が執行される。それまでも死刑制度に疑問を抱いていたが「ますます死刑制度を支持する国民が許せないと思う気持ちになった」という。

「死刑囚は国民の制度で最後に殺される。僕も、大勢に嫌がらせをされ、迫害されてる。だから自己投影したんです。それで第二、第三の自分が殺されているような感覚があり、今回の事件を計画していったんだと思います」(同)

こうして死刑制度を支持する国民を狙い、大量殺人を企てるなかで「大勢の人がいる明治神宮で無差別殺人を行おう」と考え、犯行に至った。子供の頃から貯めてきたお年玉貯金を使い、道具を買い揃えたという。

判決では、犯行の動機やその形成過程には統合失調症の影響がある程度あったこと、そして統合失調症による精神症状の影響を相応に受けた状態で犯行に及んだことも認められた。

しかし、計画的に準備を行なっていること、高圧洗浄機を改造した手製の火炎放射器による直前の実験がうまくいかなかったため「竹下通りでの暴走」という犯行に切り替えていること、犯行後に逃走するなど違法性を認識している行動がみられることから、その影響の程度は「一定程度にとどまる」とし、完全な責任能力を有していたと結論づけている。

弁護側は、この判決を不服として控訴している。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『つけびの村 噂が5人を殺したのか?』(晶文社)、『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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