アカデミー賞ノミネート!「ミナリ」はなぜ米国人の心を掴んだか | FRIDAYデジタル

アカデミー賞ノミネート!「ミナリ」はなぜ米国人の心を掴んだか

同じ「韓国の家族」を描いた作品でも、『ミナリ』と『パラサイト』には大きな違いがある――

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(C) 2020 A24 DISTRIBUTION, LLC All Rights Reserved.
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昨年アカデミー賞で4部門を受賞した映画『パラサイト 半地下の家族』に続き、今年も韓国の家族を描いた映画が話題になっている。

タイトルは『ミナリ』。アメリカに渡った「韓国系移民家族」を描いた作品だ。

『サンダンス映画祭』で観客賞とグランプリの二冠に輝いたことをきっかけに火が付き、『ゴールデングローブ賞』で外国語映画賞を受賞。『アカデミー賞』でも6部門でノミネートされ、世界中で大きな評価を得ている。

主人公となるのは80年代、アメリカのアーカンソー州へ移住した韓国系移民の4人家族。

農業で成功するという夢を追いかけて「いわくつき」の土地とトレーラーハウスを買い上げた父親と、現実を見ない夫へ怒りと失望を募らせる妻。

心臓病をもつ幼い長男と長女の世話役として韓国から祖母も呼び寄せられ、5人になった一家は、どうにか新しい移住生活をうまくいかせようと奮闘していく。

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『朴槿恵 心を操られた大統領』(文藝春秋)を著書にもつ、ライター・翻訳家の金香清氏は『ミナリ』と『パラサイト』は、同じ韓国人家族を描いた映画でも、全く違う作品だと解説する。

「『パラサイト』は、格差社会に生きる人々の喜怒哀楽を、予想不可能な展開のエンターテインメントに仕上げた映画で、ブラックコメディとも言える表現がとても韓国的です。

一方で、『ミナリ』には、日本の韓国映画ファンが期待するような〝社会の暗部の生々しい表現〟はありません。アメリカ映画ならではの表現で、韓国移民の情緒を静かに描いています」

『パラサイト』は韓国の格差社会を露骨に、そしてセンセーショナルに描いたブラックコメディだった。半地下で貧しい生活を強いられる家族の思いは一つ。お金も仕事もない日常を変えること、だ。一家は団結して、「この格差社会をどう生きるか」に挑む。

一方、『ミナリ』で描かれたのは、家族の〝内部〟の物語だといえる。

「『生活のために都市部に戻って地道に働こう』と提案する妻に対して、夫は『子どものためにも父親が何かを成し遂げる姿を見せるべきだ』という非現実で夢見がちな主張をします。

〝家族が生き抜くためにどうすべきか〟という点で、父親と母親にギャップが生じるところが、一世代前のアジア系家族像のリアルを上手く描いていると感じました」(同前)

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「自分自身の物語」だからこそ、移民家族をリアルに描ける

リー・アイザック・チョン監督は、移民2世の韓国系アメリカ人。

父親役のスティーブン・ユァン(37)も、5歳の頃に両親と共に韓国からカナダへと移住、その後アメリカに渡った経歴をもっている。監督と主役がまさに〝体験者〟だからこそ、策日にリアリティが生まれているのだ。

「外交官を務める韓国系アメリカ人の友人に、『ミナリ』がアカデミー賞候補に上がるほどアメリカ人の心を掴んだ要因について聞いてみると、『国民の多くが移民であるアメリカは言わば〝移民国家〟。移民=自分自身のストーリーとして共感される部分が多かったのでは』という答えが返ってきました」(同前)

「センセーショナルな面白さ」が評価された『パラサイト』と、「共感を集める物語」が評価される『ミナリ』。

二でつの作品の趣向は違うが、ともに世界中から注目される映画となったことに変わりはない。アカデミー賞の結果が決まるまで、さらなる盛り上がりが期待されている。

映画『ミナリ』
TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー中
配給ギャガ

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