長瀬智也 TOKIO脱退ジャニーズ退所に隠された世阿弥の美学 | FRIDAYデジタル

長瀬智也 TOKIO脱退ジャニーズ退所に隠された世阿弥の美学

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3月いっぱいでジャニーズ事務所を退所し、裏方へ転向した長瀬智也

昨年7月、「裏方としてゼロから新しい仕事の形を作り上げていく」と宣言して、今年3月いっぱいでジャニーズ事務所の退社したTOKIOの長瀬智也。その言わば”引退興行”とも言える冬期ドラマ『俺の家の話』(TBS系)の最終回が3月26日に放送され、長瀬の花道を飾るに相応しい展開に賞賛の声が寄せられている。

「長瀬が”引退興行”のお題に選んだのは『能、プロレス、介護』の三題噺。盟友・磯山晶Pと宮藤官九郎がタッグを組むのは、『池袋ウエストゲートパーク』(‘00年)、『タイガー&ドラゴン』(‘05年)、『うぬぼれ刑事』(‘10年)に続く四作目ですが、間違いなく今回は最も難しいお題に挑戦しています。

しかも40代を迎えた長瀬演じる観山寿一は、離婚を経験した上に息子は学習障害、さらには遺産相続目当ての後妻業が疑われる介護士・さくら(戸田恵梨香)まで登場。ネガティブな要素てんこ盛りの状況を笑いに変えて、一気に伏線を回収してみせた最終回の展開は、切れ味爽やかとしか言いようがありません」(制作会社プロデューサー)

中でも秀逸なのが、オープニング。一家団欒の朝食シーンから、「観山流 新春能楽会」の当日、さくらが父・寿三郎(西田敏行)に”寿一の死”を告げるまでの13分間を超える“フェイク動画”に、寿一が生きていると騙されたのは、私だけではあるまい。逆に、違和感を覚え“寿一の死”を疑った視聴者は、一体どれほどいただろう。

思い起こせば、「新春能楽会」で息子・秀生(羽村仁成)と能の演目「隅田川」の練習を始めた第8話の頃から、”寿一の死”の伏線は張られていたのである。

「能の演目『隅田川』は、我が子を人買いにさらわれ、狂乱した母が息子を探しにはるばる都から来るも、武蔵国隅田川の渡し場で一年ほど前の今日、亡くなっていたことを知る。ところが念仏を唱え弔っていると、息子・梅若丸の亡霊が現れる。

しかし抱きしめようとしても母の願いは叶わない。この哀しみやいかばかりか。『俺の家の話』では最後の舞台で”寿一の亡霊”が出てくるものがやりたいと、制作陣は企画当初から考えていたようです」(前出・制作会社プロデューサー)

息子の死を受け入れられない父と、みずからの死を受け入れない息子の葛藤が、能楽「隅田川」の物語と重ね合わせて描かれる。この二重奏は、まさに絶妙。息子・寿一は、この世に思いが残っているからこそ、”亡霊”となってこの世を彷徨うのである。

「その哀しみを鎮めるために、『国の宝にはならなかったけど、家の宝になれた。お前は観山家の人間家宝だよ』と諭す父・寿三郎。このセリフにこそ、寿一に対する最大級の褒め言葉が込められている。磯山Pは宮藤官九郎の初稿に書かれた“人間家宝”の四文字を見て、泣いてしまったと告白しています」(ワイドショー関係者)

しかし、”寿一の死”の伏線は、能だけではなかった。

「スーパー世阿弥マシーン(寿一)が、引退試合で命を落とした相手はホセ・カルロス・ゴンザレス・サンホセjr.。この名前を耳にして、不吉な予感を抱いていた視聴者もいました。この名前こそ、寿一がプロレス入りを決めた憧れのレスラー、超獣ブルーザー・ブロディが命を落とすきっかけとなった対戦相手ホセ・ゴンザレスの名前を彷彿とさせる。

しかも寿一とブロディは、奇しくも同じ42歳でこの世を去る。ブロディへの憧れ、そして引退試合の対戦相手も”寿一の死”の伏線となっていたわけです」(前出・ワイドショー関係者)

それにしても42歳とは、あまりにも早すぎる観山寿一の死。そして長瀬智也の「裏方宣言(=実質上の引退宣言)」にも、惜しむ声が後を絶たない。

しかし、長瀬の“引退宣言”にこそ、長瀬智也の美学が隠されているのではないか。

「長瀬がジャニーズ事務所に入所したのは、13歳の頃。まさに“時分の花”とも言われる年頃からレッスンを始め、16歳でTOKIOデビュー。しかし、21歳で『池袋ウエストゲートパーク』、27歳で『タイガー&ドラゴン』の主役を演じて、長瀬はアイドルから本格俳優に転向。宮藤官九郎と出会い、世阿弥曰く“一生の芸の定まる時”を得たのではないでしょうか。

やがてみずから手掛けたTOKIOの楽曲が30代には高く評価され絶頂期を迎え、42歳を迎えた今、表舞台を去る。これこそ、世阿弥が『花伝書』の中で示した芸能の道に生きる者の生きる極意ではないでしょうか」(放送作家)

室町初期の能の大成者・世阿弥は、40代の生きる道をこう示す。

「『40歳を超えてもなお美しく見えたら、それこそ”まことの花”』。そう持ち上げつつも『天下に許された名手といえども、それなら尚更のこと、良い相手役を求めるべき』『年頃に似合った風体を、楽々と飾らずに見せ、相手の役に花を持たせて、あしらう程度に演じるに越したことはない』『このように、我が身を知るということが、達人の境地である』と世阿弥は説く。これを長瀬の“引退宣言”と重ねて読み解いてみると、彼の真意が見えてくるのかもしれません」(前出・放送作家)

‘21年3月31日をもって、TOKIOを脱退、ジャニーズ事務所を退所した長瀬智也。秘すれば花。その胸の内に秘めたる思いは何なのか。今はまだ知る由もない。

  • 文:島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓

  • PHOTO近藤裕介

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