歌、ダンス、手話を融合させた『僕が君の耳になる』壮絶誕生秘話

歌、ダンスと手話の融合パフォーマンスで新たな道を拓いたHANDSIGN

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HANDSIGNのTATSU(右)とSHINGO。2人がしているのは「I Love You」の手話(撮影:加藤岳)

歌、ダンスと手話を融合させたパフォーマンスで話題のアーティスト・HANDSIGN。代表曲『僕が君の耳になる』のMVは、再生回数が1000万回を突破した。2005年に結成、2018年にメジャーデビューを果たしながら、最近さらに注目度を増している。彼らがストリートダンスに手話を取り入れたきっかけは、2004年に放送されたドラマ『オレンジデイズ』(TBS系)だったという。

TATSU「その前から、ダンスはやっていたんです。『オレンジデイズ』で、聴覚を失った沙絵(柴咲コウ)に、櫂(妻夫木聡)が障害など関係なく接して、自然に手話を覚えている姿がすごくカッコよく見えて。しかも手の動きがブレイクダンスやヒップホップダンスに少し似ていて、“手話をダンスに取り入れたらカッコイイし、いろんな人に音楽を届けられないかな”と考えました」

SHINGO「僕は昔からTATSUと踊っていましたが、ダンスと面白いことを組み合わせるのは2人とも好きだったので、その話を聞いて“何それ、興味ある。手話の本を買ってみようか”と」

TATSU「当時はYouTubeなどの動画がなく、本がメインの時代でしたから。手話のテキストは2000円を超える分厚い本で、学生の僕らにとっては“牛丼5杯食えるじゃん!”と衝撃でしたが(笑)、そこを我慢して本を選びました。家に帰ると、好きなレゲエミュージックの歌詞に出てくる単語と同じ意味の手話を本から切り取って、歌詞カードに貼って覚えたんです」

実際にパフォーマンスをクラブで披露してみると、予想外の反応があった。

TATSU「僕らは“かっこいい”と思ってこのパフォーマンスを始めたんですけど、お客さんからは“感動した”という声がすごかったんですよ。ガラの悪い友達まで“感動したよ”と言うので、びっくりしました」

SHINGO「当時の僕らがまた、“手話なんて絶対にやらないだろ”みたいな風貌だったからね」

TATSU「ドレッドヘアで、タモリさんみたいな真っ黒いサングラスかけて、髭を生やして(笑)」

SHINGO「曲紹介もマジメに“手話で歌を伝えます”じゃなく、“これから手話やんぜ!”みたいにイケイケで(笑)。見た目と優しい手話のギャップが刺さった感じでしたね」

その後、国内で活動を続けていたが、2009年に一念発起してアメリカに行き、マイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダーなどのビッグスターを輩出したエンターテイメントの登竜門と言われる『NYアポロシアター』のコンテスト『アマチュアナイト』で初優勝。2010年には、『アマチュアナイト』公認パフォーマーの称号を得る。

TATSU「日本各地のダンスコンテストで優勝しましたが、賞品が落花生一年分とか」

SHINGO「嬉しいんですけどね(笑)」

TATSU「全国的な大会で優勝しても、賞金3万円とバランスボールとか」

SHINGO「嬉しいんですけどね(笑)」

TATSU「優勝してバランスボールをもらっても、将来のバランスは見えない、みたいな(笑)。それで悩んでいる時期に、アポロシアターで活躍して全米のTVで取り上げられている日本人がいると知り、自分たちもそうなりたいとニューヨークに行ったんです。2年間で9回、日米を行ったり来たりしていました」

HANDSIGNのTATSU(右)とSHINGO(撮影:加藤岳)

『アマチュアナイト』公認パフォーマーになると、メディアの仕事が次々と舞い込んだ。

TATSU「帰国して割とすぐに、『とくダネ!』(フジテレビ系)で20分くらい生パフォーマンスできる特集を組んでもらったんです。全国ネットの番組に初めて出演したんですが、“テレビの影響ってこんなに大きいの!?”と驚くくらい、反響が来て。そこから電車の車内モニター『トレインチャンネル』で手話講座をやらせてもらったり、メディアやライブの依頼もボンボン来るようになって」

2017年3月に配信した『僕は君の耳になる』という楽曲のMVは、再生回数が3週間で100万回を突破。男子大学生と聴覚障害のある女子学生による、実話を元にした恋物語のMVは、「泣ける」という口コミがジワジワと広がった。特に2020年はコロナ禍の影響もあって、この年だけで500万回も再生されたという。そして先日、ついに総再生回数は1000万回を超えた。

TATSU「家にいる時間が長い自粛期間中、YouTubeを見る方が増えたみたいで。そのタイミングで僕らのMVを見て、“すごくいいんだけど!”と感想がSNSで広がり、そのSNSで知った人がMVを見る、いい連鎖がありました」

SHINGO「YouTubeだけじゃなく、TikTokで僕らの振り付けをマネしてアップする若い子が増えているんですよね。ここ5〜6年続けている各地の学校での講演やパフォーマンスが火だねとなり、若い世代にもジワジワと広がっている実感があります」

TATSU「TikTokでも最近、楽曲の再生回数が1000万回を超えたんです。あと『僕は君の耳になる』のダンスを投稿した人数が、5000を超えました。昔のパラパラみたいな感覚で、振りをマネしている中高生が多いみたいです」

このMVでは、カップルでHANDSIGNのライブを見に行き、彼女は音楽の楽しさに目覚める。現実でもHANDSIGNのライブで、音楽の楽しさを知った聾唖の人は多いという。

SHINGO「“手話でゆっくり歌う”ことをやっている人は、結構たくさんいらっしゃるんです。でも中には、“音楽というより棒読みしているみたいで面白くない”という意見もあるんですよね。そういう人にとって、ダンスやリズムと表情が加わった僕らのパフォーマンスは新鮮だったみたい。“すごく楽しく見える”“こんなパフォーマンスは初めて見た”と感想をいただいた時は、嬉しかったですね」

『僕は君の耳になる』を元にした映画が、5月7日に公開となる。

TATSU「率直に嬉しいですね。『僕は君の耳になる』という9分くらいのMVで手話や福祉に興味を持ってくれた人もいれば、音楽に興味を持ってくれた耳の聞こえない人もいます。つまり、人生が変わった人がいる。映画化となると、もっと多くの人に見てもらえると思うので、ボーダーレスな世界が少しでも広がってほしいですね」

SHINGO「映画でまた新たな層にリーチしていくと思うので、新しい気づきを感じ取ってもらったり、恋愛には壁がないことを少しでも知っていただければいいなと思います。僕ら自身、公開が楽しみです!」

15年間の活動が認められ、青年版国民栄誉賞と称される『JCI JAPAN TOYP 2020』のグランプリを受賞するなど、彼らの活動は着実に裾野を広げている。

TATSU「手話を使ったアーティストがもっと認知されるよう、まずは1万人集めるワンマンライブを目指します。そのために新しい楽曲を作ったり、いろんな人とコラボしたり、さらには未経験のことにも挑戦したいですね」

SHINGO「昨年からアーティストと手話でコラボする企画が増えているので、それをもっと拡大していきたいです。僕らのレパートリーには軸が2つあって、1つは『僕は君の耳になる』みたいに実話を元にした楽曲、もう1つは僕らの想いを届けて少しでも笑顔や元気になってもらえる楽曲です。どちらの作品も作り続けて、僕らのパフォーマンスを見た方にあったかい気持ちになっていただければ嬉しいです」

(プロフィール)
HANDSIGN

HANDSIGNのTATSU(撮影:加藤岳)

TATSU (たつ)
神奈川県出身。リーダー、ボーカル、パフォーマー。

HANDSIGNのSHINGO(撮影:加藤岳)

SHINGO (しんご)
神奈川県出身。ボーカル、パフォーマー。

2005年、結成。
2009年、『NYアポロシアターコンテスト』の『アマチュアナイト』で初優勝。
2010年、『NYアポロシアターコンテスト』の『アマチュアナイト』公認パフォーマーとなる。
2017年、日本初の全日本ろうあ連盟公認「第23回夏季デフリンピック」応援テーマソング制作。
2020年、『JCI JAPAN TOYP 2020(青年版国民栄誉賞)』グランプリ&内閣総理大臣激励賞&NHK会長賞を受賞。
2021年、映画『僕が君の耳になる』が5月7日より東京・ヒューマントラストシネマ渋谷ほかで順次公開予定。

HANDSIGNのTATSU(右)とSHINGO(撮影:加藤岳)
HANDSIGNのTATSU(右)とSHINGO(撮影:加藤岳)

撮影:加藤岳
取材・文:篠崎美緒
構成:SUPER MIX

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