日本維新の会所属議員に浮上した「怪文書騒動」その深層 | FRIDAYデジタル

日本維新の会所属議員に浮上した「怪文書騒動」その深層

「告発状」が京都地検に提出されるまでに…

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日本維新の会所属の森夏枝・国会議員(右)の事務所近くに貼られていたポスター。左が怪文書に悩まされた上倉淑敬・京都府議
日本維新の会所属の森夏枝・国会議員(右)の事務所近くに貼られていたポスター。左が怪文書に悩まされた上倉淑敬・京都府議

「美人すぎる国会議員」と言われて注目を集めてきた、日本維新の会の衆議院議員・森夏枝議員(比例近畿ブロック)の周辺が、いま騒がしい。

昨年10月、同議員の事務所関係が地元党員延べ99人分の党費を肩代わりして党本部に支払っていたことが発覚。日本維新の会は事態を重く受け止め、森議員を1月15日から3カ月間、党員資格停止の処分とした。

3月23日には、この問題が「公職選挙法違反」に当たるとして、京都市民らがつくる「日本維新の会 森夏枝・被害者の会」が京都地検に告発状を提出。この件はメディアが一斉に報じたが、このたび、同「被害者の会」が、森議員の事務所が日本維新の会所属の京都府議・上倉淑敬議員を中傷する「文書」の作成・郵送に関わったと指摘、「公職選挙法に抵触する」として京都地方検察庁に告発状を提出したのだ。

早期解散もあると言われる中、京都の日本維新の会の周辺で一体何が起こっているのか――。

上倉議員のもとに入った「お詫び」

「森議員の『党費肩代わり問題』は新聞等でも大きく報じられ話題になりましたが、じつは議員の周辺では上倉議員への『怪文書』の件も以前から話題になっていました。私どもが調べた結果、この怪文書の作成や郵送に森議員の事務所が関わっていた確証がとれたので、党費肩代わり問題に続き、2つ目の告発状を京都地検に提出しました」

こう話すのは「日本維新の会 森夏枝被害者の会」のメンバーだ。

森議員は2017年の衆議院選挙で京都3区に「日本維新の会」から出馬。選挙区では敗れたが比例で復活当選した。太極拳の指導員の資格をもち、12年に「維新政治塾」を卒業後に維新の党公認でいくつかの選挙に出馬するなど、維新の会の中でも注目を集めていた女性議員である。

ところが、昨年秋、集めた党員延べ99人の党費を肩代わりして党本部に払っていたことが発覚。公職選挙法で禁止された寄付行為にあたるおそれがあるとして、今年4月15日までの3カ月間、日本維新の会から党員資格停止の処分を受けている。

さらに昨年12月には、本来議員歳費から出すべき議員宿舎の家賃を、自身の資金管理団体から支出したことが報じられるなど、政治家としての規範を問われるような問題が相次いでいた。

このようななか「被害者の会」は党費肩代わりの件において、森議員が党員集めに尽力した人を裏切るような行為を繰り返したことを問題視し、今年3月23日、京都地検に公職選挙法などの疑いで森議員を告発した。

その「被害者の会」が今度は別の問題で森議員を再度告発したというのだ。

被害者の会がいう「怪文書問題」とは何なのか。

発端は今から約2年前。統一地方選挙を約2か月後に控えた2019年2月中旬から下旬にかけて、森議員と同じ「日本維新の会」に所属する京都府議会議員・上倉淑敬議員を中傷する内容が書かれた文書が、京都の一部地域に郵送などでバラまかれるという事案が発生した。悪質なものであったため、京都の政界関係者の間では「誰がこんなことを…」と話題になっていた。

上倉議員のポスターの上に貼られている白い紙は、上倉議員に関係する新聞の切り抜きコピー。配られた「怪文書」とは別だが、はがしてもまた貼られる、という行為が繰り返されていたという(写真:京都市伏見区内の住民提供)
上倉議員のポスターの上に貼られている白い紙は、上倉議員に関係する新聞の切り抜きコピー。配られた「怪文書」とは別だが、はがしてもまた貼られる、という行為が繰り返されていたという(写真:京都市伏見区内の住民提供)

FRIDAYデジタルは、当時郵送された文書を入手した。そこには上倉議員の身内についてのことや、上倉議員が「祇園のあるクラブに通っている」など、評判を貶めるようなことがつらつらと書かれている。

その文書の作成や郵送に森議員の事務所が関与していた…というのが被害者の会の主張だ。

同じ党の議員間で指摘のようなことが起きていたのなら驚くばかりだが、前出の被害者の会の関係者は、FRIDAYデジタルの取材にこう明かす。

怪文書の作成や郵送に森議員の事務所が関わり、郵送の指示を出している旨の話は、今年に入って京都の地元で出回っていましたが、その証拠が私たち被害者の会のもとに届けられたんです。また、今年の2月中旬、『怪文書』の件について、上倉府議のもとに日本維新の会の党関係者からお詫びの電話が入った、とも聞いています」

怪文書を巻かれた上倉議員本人は、困惑しながらこう明かす。

「怪文書の存在は他の先生から伺って知りましたし、森議員の事務所の方が『こんなものが(うちの事務所にも)届きました』と言って私のところに怪文書を持ってこられたこともあったんですよ。

文書の中で、たとえば『祇園のあるクラブに頻繁に通っている』など、根も葉もないことも書かれていました。明らかに誹謗中傷です。(誰が主体であれ)選挙前に候補者を貶めるような文書を作ること、ばらまくことは許される行為ではないでしょう。

地元でもいろんな情報が飛び交っていますが、私は森議員の口から直接話を聞くまでは『本当のところはわからない』という認識でいます」

上倉府議のもとに届いた怪文書の封書。「うちの事務所にこんなものが届いた」と森事務所の関係者が持参したという。
上倉府議のもとに届いた怪文書の封書。「うちの事務所にこんなものが届いた」と森事務所の関係者が持参したという。

この「怪文書騒動」がどんな結末に向かうのかは、今回「被害者の会」が提出した告発状がどう扱われるかにも依る。その推移については注視していくべきだが、森議員と上倉府議の間には微妙な感情のもつれがあったようだ。

森議員本人に尋ねてみると…

愛媛県出身の森議員は父が地元で市議をつとめていた関係で選挙に繰り返し出馬していたが、初当選するまでに時間がかかった。一方、森議員より2年先に議員になった上倉府議は、地元京都府の生まれ。2015年に初当選するまで15年近く、有力議員の秘書を務めていた。

その上倉府議は、森議員が出馬した2017年衆議院議員選挙の際、他の維新関係者と協力しあいながら森議員の当選を後方支援した。日本維新の会の支援者のひとりはこう明かす。

「2017年の選挙に出る前に、森議員が選挙用のポスターを上倉議員と二連(2人が並んだもの)で作りましょうという話があがりました。普通、国会議員さんが地方議員の方の場所にポスターを貼らせてほしい、という場合、国会議員さんのほうが地方議員さんに対して、それにかかる費用を出すのが通例なんです。同じスペースに2人分の顔を貼りますし、地元の議員さんがそれまで貼っていたポスターを一度はがすことになるので費用が発生するからです。

上倉議員は京都が地元でポスターを貼る場所がたくさんあるので、森議員は上倉議員に『半々で一緒に貼りましょう』と相談したそうなんですが、その後、おカネの話になったときに、森議員がものすごくスネた、と聞きました。貼るところを持っていない森議員が、上倉議員に対しておカネのことまで負担させるとなると、話が違うだろうと思ったことを覚えています」

地元での選挙活動は議員にとって死活問題。お互いに信頼できる関係が築けなかったことで、その後の溝が深まっていたようだ。

さらに細かく取材を進めていくと、新たなポイントが浮上する。

日本維新の会は毎月、所属する国会議員の文書通信交通滞在費を公表している。森議員の事務所は2019年4月に、伏見郵便局で3月4日に切手を8200円分購入したことを報告しているが、この内訳を見ていくと「31年春グリーティング82」4100円とある。

「春グリーティング」は2019年(平成31年)2月20日から発売された「春のグリーティング切手」と思われるが、ばらまかれた文書に貼られている切手の図柄は「春のグリーティング切手」の中にあるものと一致しているのだ。ちなみに文書に押された消印は「3月5日」。偶然の一致と考えるべきか、それとも…。

森議員が購入したものと同じ「31年グリーティング切手82」の図柄。赤枠の図柄と上倉議員のもとに届いた切手の図柄がくしくも一致している
森議員が購入したものと同じ「31年グリーティング切手82」の図柄。赤枠の図柄と上倉議員のもとに届いた切手の図柄がくしくも一致している
日本維新の会が毎月公表する国会議員の文書通信交通滞在費の領収書。3月4日、伏見郵便局で購入したことになっている
日本維新の会が毎月公表する国会議員の文書通信交通滞在費の領収書。3月4日、伏見郵便局で購入したことになっている

今回ふたたび告発状が提出されたことについて、森議員はなにを思うのか。また、件の文書についての関与はあったのか。切手の件も含めて事実関係について森議員に尋ねると、代理人弁護士を通して以下のような回答があった。

「告発状が提出されたとの情報には接しておりますが、正式受理されたとは認識しておりません。告発した団体の名称及び代表者氏名、被害を受けたとされる個人も確認できない状況です。仮に正式に手続きが進み、情報が正確なものであった場合には、主張されている事実の正誤についての反論や法解釈の誤りについての指摘を行っていきたいと考えております」

日本維新の会は、一連の騒動と告発状についてどう受け止めているのだろうか。日本維新の会・馬場伸幸幹事長の事務所はこう返答する。

「(森議員)本人から事情を詳しく聴取し、事実確認をいたします。今後、新たな事実が発覚した場合は、再度、対処方法を検討いたします」

さらに電話取材に応じた馬場幹事長はこう続ける。

「告発状が出されても、その受理などの判断は司法に委ねられているわけだから、今の段階でどうのこうのいうことはありません。(告発状に)書かれてることがほんまやったら、それは党の規約に基づいてどうするかいう判断をしていくだけの話です」

まもなく森議員の「党員停止資格処分」が解ける予定だが、その直前に噴出した新たな騒動。現役国会議員という立場にあるのだから、その事実の有無も含めしっかりと説明を果たすべきだろうが、森議員本人の心中はいかなるものだろうか。今後の推移に注目したい。

森議員の事務所の近くに停まっていた選挙カー
森議員の事務所の近くに停まっていた選挙カー

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