姫野和樹 ニュージーランド王者から歴史的金星!王国に与えた衝撃 | FRIDAYデジタル

姫野和樹 ニュージーランド王者から歴史的金星!王国に与えた衝撃

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クルセーダーズ戦で先発デビューした姫野和樹。前半のピンチで得意のジャッカルを決めてトライを許さず、歴史的金星に貢献した(写真:Getty Images)

ラグビー王国・ニュージーランドの国内大会、「スーパーラグビー・アオテオアロア」のハイランダーズに今季から加入した日本代表・姫野和樹が2日の絶対王者、クルセーダーズ戦に先発デビュー。後半13分まで出場し、33-12の勝利に貢献した。ハイランダーズが対クルーセーダーズ戦で21点差をつけての勝利は史上最多得点差。この試合で前半の相手の得点チャンスで得意のジャッカルでトライピンチを防ぐなど、金星を演出した姫野がなぜ活躍できたのか。元日本代表指令塔の大西将太郎氏に解説してもらった。

「日本人のイメージを覆す選手」

「私の周辺でもみんな『日本人がNZチームのナンバー8を背負える日が来るとは』と驚いています。クルセイダーズ戦は姫野選手にとって昨年2月のトップリーグ以来、約1年ぶりの先発出場でしたが、インパクトを与えていましたね。現地放送でも『今までの日本人のイメージを覆す選手』と評価していました」

そう語るのは日本代表で33キャップを重ねた大西将太郎氏。2007年W杯カナダ戦の同点コンバージョンキックで日本のW杯連敗記録を13で止めたヒーローは、試合の衛星放送をリアルタイムで解説していた。

姫野が背負った背番号「8」は、確実な前進が求められる突進役だ。そんな大型のパワーランナーが重宝されるポジションに、日本で生まれ育った187㎝の姫野が起用された。日本人選手は小柄で俊敏。そんな従来のイメージを姫野が覆しつつある。

しかし衝撃はそれだけではなかった。

1勝3敗で最下位だったハイランダーズが、敵地で6年間勝てていなかったクルセイダーズを過去最大の21点差(33-12)で破った。しかも相手の先発15人のうち、13人がオールブラックスのジャージーに袖を通したニュージーランド代表経験者という猛者の集団だったのだ。

現地メディアは『アップセット(番狂わせ)』として大きく報じた。ハイランダーズにとっての歴史的な試合に先発した姫野和樹。思わず、幸運の星の下に生まれた「持っている男」という表現を使いたい誘惑に駆られる。

「『持っている』という表現で間違いないでしょう(笑)。常にNZラグビーの先頭に立ち、最終的には1点差でも必ず勝つようなクルセイダーズが負けたんです。そんな歴史的な試合が初先発だった姫野は、間違いなく『持っている』人です」

ただ正直なところ、クルセイダーズはここ10年間で一番出来が悪かった。これだけミスをするクルセイダーズは見たことがない。しかし一番の勝因はハイランダーズのディフェンス。粘り強く、反則せずに止め続け、相手の反則も誘った。姫野のジャッカルがまさにそうです」

全5試合に出場した19年W杯で、姫野の代名詞となった「ジャッカル」。倒れた相手からボールを奪取する姫野の十八番は、前半36分に炸裂した。

ハイランダーズが16ー0とリードしている状況だったが、クルセイダーズは相手陣で、得点源である自軍ボールのラインアウトを迎えていた。大西氏は嫌な予感がした。

「クルセイダーズの『ここでトライを獲らなければ』という時のセットピース(スクラム、ラインアウト)は強い。経験上、このアタックは要注意だと思っていたところ、ハイランダーズが上手にモールを組ませなかった」

クルセイダーズはモールが作れず、相手7番が個人で走り、倒れた。そこにナンバー8姫野が覆いかぶさった。19年W杯でNZ代表だったHOコーディー・テイラー、PRジョー・ムーディーら3人が姫野に襲い掛かった。

しかし姫野は動じなかった。

「クルセイダーズが個人で前に出たところで、ジャッカルがチームで一番強い姫野がそこにいてくれました。試合の展開上、大きなプレーでした」(大西氏)

姫野の成長が日本代表の成長に比例する

そもそも、なぜ姫野はジャッカルを決められるのか。日本人離れした身体能力はもちろんだが、本人がかつて筆者に語ったポイントは「タックラー」と「イメージ力」だ。

タックラーは相手を力強く仕留めた上で、可能であれば仰向けにする。姫野はそれまでに相手がどう倒れてくるか、自分がどう入り込むのかを事前にイメージしておくという。タックルとイメージという事前準備があった上で、チャンスと見た一瞬に飛び込んでいる。

姫野はロックからバックロー(FW第3列)に転向した社会人1年目から、ジャッカルを徹底的に磨き上げてきた。規格外の大器が不断の努力を続けた結果、その技は世界基準を超える域に達していたのだ。

ディフェンスで奮闘を続けた姫野は後半13分に途中交替となり、ベンチに下がってチームの歴史的大勝を見届けた。

しかし53分間の出場は、先発ナンバー8の出場時間として長くはない。理由はどこにあるのか。

「約1年ぶりの先発出場でしたし、入国後の2週間の自主隔離期間もありました。チームが一歩一歩進んでいくプロセスを作ってくれているのでしょう。またクルセイダーズ戦はFW戦が重要ということで、リザーブに姫野と同ポジションであるバックローの選手が通常より1人多く入っていました。誰を交替させるか選ぶにあたって、両フランカー(ビリー・ハーモン、シャノン・フリゼル)のパフォーマンスが良かった。そこで姫野が選ばれたのでしょう。ただ姫野は与えられた場面で結果を残しています。出場時間が延びていく可能性は十分にあるでしょう」(大西氏)

ラグビー日本代表は6月12日に静岡で強化試合、26日にスコットランドで英愛4か国のドリームチーム「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」との対戦を予定している。

5月にシーズンが終わるハイランダーズと1年契約を結んでいる姫野は帰国後、今後の日本代表にどんな影響を与えてくれるのだろうか。

「彼が日本に帰ってきた時、この場面ではこういうプレ-、といった判断をすることで、全体に良い影響を与えられると思います。何よりも、彼の成長自体が日本代表の成長にも比例する存在です。世界を学んで、日本のラグビー界のリーダーに成長していってほしい。それができる選手です」

世界のラグビー界における日本人選手のイメージを変え、自身の成長が日本代表の成長とイコールの存在――。ラグビー日本代表のスーパースターの一人、姫野の挑戦から目が離せない。

  • 取材・文多羅正崇

    スポーツライター。法制二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にU19代表候補に選出。ポジションはスタンドオフ(SO)。法政大学大学院日本文学専攻卒

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