北海道震度7 被災地・札幌の真実「地面がゆがんだまま」 | FRIDAYデジタル

北海道震度7 被災地・札幌の真実「地面がゆがんだまま」

北海道厚真町、札幌市清田区、札幌市東区… 〈震災頻発 現場ルポ〉

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札幌市清田区の5度ほど傾いた民家。住民は避難所に移動している。周辺の道路も歪み一帯は通行止めになっていた

傾斜が人の命を奪う

「地震で自宅が大きく歪んでしまいました。屋内にいると平衡感覚が麻痺し船酔いしたような気分の悪さを感じるので、もう帰りたくない。北海道が被災者に提供する道営住宅はペット不可のため、自力で新しい家を探すしかありません」

こう語るのは、札幌市清田区里塚に住む主婦の久保明美さんだ。現在は地震で傾いた自宅を出て、夫や愛犬のゴールデンレトリバーとともにワゴン車内で寝泊まりしている(5枚目写真)。

最大震度7を記録した、北海道胆振(いぶり)東部地震の発生から1週間余り。現地では避難所や車中で、2500人ほどの被災者が不自由な生活を強いられている。原因の一つが、液状化や地盤沈下による地面の歪みだ。建物が大きく傾斜し、日常生活に支障をきたしているのだ。

「液状化の激しい清田区里塚の288世帯を調査し、『危険』『要注意』『問題なし』の3段階で評価しました。倒壊のおそれもある、傾斜2.86度以上の『危険』と判断した住宅は62世帯。0.96度以上の『要注意』が43世帯です。勧告はしていますが、そのまま住み続けるかどうかは住民の方々の判断に任せています」(札幌市都市局建築指導部)

避難所となっている同区の平岡南小学校にいた、60代の男性が語る。

「地震後2〜3日は傾いた自宅にいたんですが、頭が痛くなり吐き気もしたので避難所に来ました。妻は家の中でつまずき足の小指を骨折。現在は手術するために入院しています」

歪んだ家での生活を続ければ、命の危険にもさらされる。元東京大学医科学研究所特任教授の上(かみ)昌広氏が話す。

「気分を悪くし、嘔吐物が肺へ逆流して死亡するケースが非常に多いんです。とくに高齢者が危険。口の中の細菌が肺に入ってひき起こす、誤嚥性(ごえんせい)肺炎になりかねません。実際に東日本大震災や熊本地震の直後、被災地で亡くなった高齢者の死因の1位は肺炎でした。若い人でも歪んだ場所での生活はストレスがたまり、睡眠障害などの悪影響を及ぼします」

わずか1〜2度の傾斜でも、歪みは人命を奪う恐れがある。

札幌市東区の東15丁目屯田(とんでん)通り。標識は10度近く傾斜。所々陥没しローラー車による工事が急ピッチで進められる

札幌市清田区の住宅街。民家の傾斜は小さいが道路が大きく陥没。場所により20度ほど歪み通行禁止となっている

札幌市清田区の住宅街。家によっては、10度ほど傾斜し倒壊の恐れも。液状化による地盤沈下も起きている

11歳の愛犬・ビート君と車内で寝泊まりする久保明美さん。「歪んだ自宅には戻らない」と話す

震源に近い北海道厚真(あつま)町では30ヵ所以上で土砂崩れが発生。連日、消防隊員や警察官の捜索活動が続けられた

撮影:船元康子、黒瀬ミチオ

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