藤井聡太は「将棋界のヒデ」サッカー元日本代表が語る強さの秘密 | FRIDAYデジタル

藤井聡太は「将棋界のヒデ」サッカー元日本代表が語る強さの秘密

藤井棋士と対談した日本将棋連盟将棋親善大使のサッカー元日本代表、波戸康広氏にインタビュー

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昨年末、読売新聞企画の対談後に撮影(写真提供:波戸康広氏)

4月1日に行われた将棋大賞の選考委員会で昨年度の最優秀棋士に選ばれた18歳の藤井聡太2冠(王位、棋聖)は2月に高校を自主退学。直後に大手企業のCMがオンエアされ、もはや将棋界の枠を超える存在感を放っている。

昨年末、読売新聞の企画で藤井2冠と対談し、日本将棋連盟の将棋親善大使をつとめるサッカー元日本代表、波戸康広氏に藤井2冠の印象を聞くと、日本サッカーの歴史の一時代を築いたアノ人の姿がダブるのだという。

藤井2冠に見える中田英寿との「共通点」

「藤井くんには、日本のサッカー界で言えばヒデ(中田英寿氏)と同じ匂いを感じます。個性が強く、何事にも動じないあたりは、ヒデの雰囲気がありますよね」。

波戸氏はサッカー元日本代表の中田英寿氏(44)とは同学年。Jリーグでも対戦経験もあり、2002年日韓ワールドカップ直前まで選ばれていた日本代表ではチームメートでもあった。中田氏の卓越した技術と冷静さは10代の時からずば抜けていた。各世代で日本代表にも招集されて、1998年W杯フランス大会で日本代表のW杯初出場の原動力になり、間違いなく一つの時代を作ったアスリートでもあった。

波戸氏は昨年末に藤井2冠を取材する機会を得ている。

「でも、藤井くんの本音を引き出すことはできませんでした。自分の中には答えを持っているはずなのですが…。その辺もヒデにそっくりです。藤井くんは、僕の子供でもおかしくない年齢です。ただ、話をしていて驚いたことがありました。将棋盤を挟んでの話を聞いたのですが、いやはやその時の〝圧〟が本当にすごかった。とても10代には思えなかった。だってその“圧”に耐えかねて44歳の私が手汗をかいたんですから」

どんな競技でもトップクラスの選手はオンとオフの切り替えはお手物だ。それぞれのトップ選手特有の個性がある。インタビューを始める前、挨拶をした時の藤井2冠は「見た目は普通の高校生そのもの。初めはモジモジしていましたからね」。しかしいざ、将棋盤を挟んで対談がはじまると、即スイッチが入ったという。もはや別人だ。

「彼の頭の中には将棋盤が完璧に刻み込まれている。駒の指し方も言葉で言うと簡単になってしまいますが、とにかく、すごい。威圧されました。普通の10代なら喋りたくてたまらない時期じゃないですか。あと会話をしても目と目が会うことがほとんどなかった。読めませんでしたね、彼が一体何を考えているか……。圧倒されました」

思えば中田氏もそうだった。同期の波戸氏から見ても何もかも別世界の選手だったという。

「ヒデは僕と同級生ですが、湘南ベルマーレ時代に試合前日でも筋トレとかガンガンやっていると聞きました。試合前日にやれば体が張ってしまうので、普通では考えられませんが…。彼も常に見ているところ(目標としているところ)が全く違った」

棋士の世界は25歳までは勢いで行けるといわれている。波戸氏によれば、「多くの棋士の方が『脳の成長も30歳ぐらいでに一つのピークを迎える』と言っていますね」。

では棋士が勝つためにはどう研鑽を積むかだが、今は多くの棋士がAIを使ってパソコンと対局を積むことが主流。しかし藤井2冠は必ずしもそうではないのだという。

「棋譜(将棋や囲碁などのボードゲームにおいて互いの対局者が行った手を順番に記入した記録)を読むのが基本のようです。対局が続く藤井くんにとってはパソコンと睨み合っている時間はないはずですから」(波戸氏)

トップクラスの棋士の勝率は6割台。しかし藤井2冠は4年連続で8割台という脅威の勝率を残している。まだ10代だ。藤井2冠はこれから棋士としての全盛期を迎えることになる。

フットサルを楽しむ渡辺明名人は波戸氏と親交が深い(写真提供:波戸康広)

将棋の対局に一番必要なものは、意外に思えるが、体力なのだと波戸氏はいう。

「勝つためには定石がある。サッカーも将棋もそうです。そして勝負の中盤から終盤に必要なのはやはり体力になる。相手に対する〝圧力〟が必ず必要です。サッカーも70分過ぎになると必ず疲労が来ますから」。

将棋は相手の「玉(王将)」を、サッカーは相手のゴールを奪う。攻守を組み立てながら相手を逆算して追い詰めていくことも共通している。

「将棋もサッカーと同じ頭を使いますよね。実は対局したあとの夜、棋士はなかなか寝られないそうです。サッカー選手も試合の日はそうです。身体が火照って寝られなくなる。でもサッカー選手の場合、水風呂とかに入って身体を冷ます人もいるんですが、将棋の場合はそうはいかない、頭の中がなかなかクールになれない。ですから棋士の中には、対局が終わったあと、対局相手と食事に行くことがある。サッカーではさすがに考えられません。負けた相手と一緒に食事に行くなんて(苦笑)」

体力を維持、向上させることが将棋につながり、実際に重視している棋士に、藤井2冠のライバル、渡辺明名人(棋王、王将)がいる。波戸氏は渡辺名人とも親交がある。藤井2冠とはあらゆる面で対照的だという。

「渡辺さんは体力維持のためにフットサルやマラソンにも挑戦しています。オープンマインドな方で、自分の持っていることすべてさらけ出す。おしゃべりもうまいです。サッカー選手にたとえると、(中村)俊輔(横浜FC)に近いものがありますね。俊輔も海外移籍して色々経験を積んでから、これでもかというくらいサッカーに関しては熱く語りますから」

棋士もサッカー選手も、一流の定義は同じだという。それは「自分のスタイルを変えないこと」。波戸氏が続ける。

「僕は一年でも長く現役をやりたいという思いが勝っていましたので、その時のサッカーのトレンドや自分の体力にあわせてスタイルと微妙に変化させてきました。でも、ヒデと俊輔は違った。自分のスタイルを変えない。プロとして少しでも長くやろうなんてことを、藤井2冠も渡辺名人も考えていないと思いますよ」

藤井2冠には50m走は5秒台という都市伝説が流れた。これが事実ならまさに文武両道の二刀流と言える。

「彼に実際聞いてみたんですが『違います』と。中学の時に計って50mは6秒8だそうです。それでも速いですよ。ただ、スポーツは全く見ないそうです。ですから、横浜F・マリノスの試合を一度、見に来てくれないかなって思っているんです」

将棋一筋で他の一流棋士を凌駕する勝率を誇る、藤井2冠が体力の大切さに目覚めたら……。青天井の才能に、さらに惹き付けられることになりそうだ。

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