飢餓地獄の裏で…金正恩が進める「動く金日成像」計画の秘密 | FRIDAYデジタル

飢餓地獄の裏で…金正恩が進める「動く金日成像」計画の秘密

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平壌の金日成主席、金正日総書記像。前に並ぶ人々と比べるとその巨大さがおわかりになるだろう(画像:ロイター/アフロ)

日本でもっとも高い人物銅像の一つが、鹿児島県霧島市にある西郷隆盛像(10.5m)といわれる。ちなみに東京・上野公園内の西郷像は高さ3.7mだ。それらと比べると、北朝鮮の首都・平壌の万寿台(マンスデ)にある金日成主席、金正日総書記の銅像の巨大さがわかるだろう。高さは22.5m。ビル7階分に相当する。鹿児島の西郷像の倍以上だ。

その巨大像に、北朝鮮の威信をかけた国家プロジェクトが進んでいる。概要について説明するのは、『デイリーNKジャパン』編集長・高英起氏だ。

「正式名称は『デジタル自動化システム導入垂直型史跡坑道』という計画です。朝鮮人民軍の総政治局、総参謀部の連名で、『有事の際の銅像保護事業』の一環として命令がくだされました。内容は金日成主席と金正日総書記の銅像の下に巨大な穴を掘り、自動で収容可能にするというモノ。空襲や地震などの有事に、指揮部のボタンを押すだけで銅像を動かせるんです

銅像を収納するのが、国家プロジェクト? そんな疑問を持った方もいるかもしれない。だが北朝鮮にとって、指導者・金正恩氏の祖父と父の銅像は最高指導者の象徴。監視カメラを設置し、24時間体制で警備するほど重要な建造物なのだ。高氏が続ける。

「北朝鮮には、偉大な指導者をモチーフにしたモニュメントが多数あります。そのため建設能力は、ひじょうに高い。技術をいかし、アフリカやロシアで建設ビジネスを展開しているほどです。

今回は、もっとも大切な最高権威の銅像を守るための工事ですから、進捗度が国家への忠誠心をはかる試金石になります。専門的な技術も必要となり、プロジェクトには人民軍だけでなく名門・金策工業総合大学の研究者もかりだされる。工事が遅れれば指導者への信仰心が弱いと言われ、ペナルティが与えられる。最悪の場合、担当者は粛清されることもあるでしょう」

突貫工事を要求するワケ

最高指導者の権威を利用し、忠誠心や思想を強化するのは北朝鮮ではよく行われること。プロジェクトを通じて、人民の結束を強める狙いもある。

「計画は、今秋の完成を目指しています。かなりの突貫工事です。しかし、北朝鮮では日常茶飯事です。課題を与え続け時間を奪えば、人間は余計なことを考える余裕がなくなります。ムリな工事計画は、軍の不満を抑える手段でもあるんですよ」(高氏)

だが、現実は当局の思い通りにいかない可能性がある。

「逆効果の危険もあります。北朝鮮は、国内に新型コロナ感染者はいないとしている。しかし実情は、かなり厳しいんです。昨年11月時点で感染の疑いで隔離された民間人は累計8万1000人。朝鮮人民軍の収容施設へ移送されたのは、5万4620人にのぼるといわれています。

封鎖令(ロックダウン)が長引き、満足な配給も仕事もない地方では餓死者が続出しています。当局は、地方に対し少しずつ食料を集め、高齢者や貧しい人々に与えるよう指示を出している。公助ではなく、共助、自助で乗り入れということです。しかし自力で疲弊した生活を立て直すのには、ムリがあるでしょう。1日1食の食事すらまともにできない『絶糧世帯』が、多くいるんですから。

銅像の自動化計画には多額の予算が必要です。コロナな経済制裁による不況で苦しむ人民に、さらなる負担を強いることになる。結束するどころか、当局のへの信頼は薄れるばかりです」(高氏)

世紀の愚策なのか、金正恩氏の思惑どおり国民が結束する輝かしいプロジェクトになるのか。最高指導者の銅像を遠隔で動かす工事は、5月1日から始まる。

  • 写真ロイター/アフロ

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