怪獣、天使…「クリエイターズ・ソフビ」は、最高の現代アートだ | FRIDAYデジタル

怪獣、天使…「クリエイターズ・ソフビ」は、最高の現代アートだ

アーティストの人生を映し出す「ソフビ」の深い世界

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gumtaroブランドのソフビ怪獣たち。“自由な怪獣”をテーマに、ポップな怪獣たちを生み出している

100人のクリエイターがいれば、100通りの世界観があるんです。クリエイターズ・ソフビは誰もが気軽に楽しめる現代アート。私にとっては人間国宝の美術品以上。高い価値を感じています!」(ガム太郎さん)

小さい頃に遊んでいた、ヒーローや怪獣たちのソフビ人形。子どものおもちゃと思いきや、今「大人のサブカルチャー」として静かなブームを巻き起こしている。『gumtaro』というブランドを展開する、立体怪獣作家&ソフビアーティストのガム太郎さんに、その魅力を聞いた。

怪獣やキモカワイイ天使など、日本から生まれたカルチャー「クリエイターズ・ソフビ」の世界を、怪獣ソフビ作家・ガム太郎さんに聞いた

「クリエイターズ・ソフビ」は日本から誕生した新しいカルチャー

 「クリエイターズ・ソフビ」とは、仮面ライダーやウルトラマンといった版権キャラクターのソフビ人形・フィギュアではなく、クリエイター自身が創りだしたキャラクターを立体化したフィギュア。ガム太郎さんの言葉通り、アーティストによってそれぞれ異なる世界が表現されており、新しいTOYカルチャーとして注目されている。

従来のキャラクターソフビと違って、おしゃれやカワイイに特化したフィギュアも多く、インテリアやファッションアートとして若い女性からも人気だ。

「ファッションブランドを展開している人が、企画でソフビを作っていたりするんです」

「クリエイターズ・ソフビ」は日本で生まれた文化で、1996年に怪獣・特撮ブームから派生した「パチ怪獣」を立体化したブランド『アマプロ』が、クリエイターズ・ソフビの元祖といわれている。

2000年代初頭頃から、キャラクターデザイナーとトイメーカーやショップなどのコラボレーションによりアイテム数が増加。ほかの玩具と比較して制作コストが安く、個人レベルでも制作できるため、近年ではクリエイターの表現媒体として定着してきているカルチャーなのだ。

日本発、世界中で盛り上がりを見せている

「僕が新作のソフビを発表したり、自身のソフビコレクションをSNSなどにUPすると、海外からもたくさんの反響がきます。クリエイターズ・ソフビのマーケットはアジア、アメリカにもあって、なんなら日本よりも海外のほうが盛り上がっていますね」

世界中にファンがいるというブームの鍵を握るのがアーティストの増加。

「ソフビ制作は、オリジナルのキャラクターを考えるところから。僕は怪獣系ですね。まず紙にスケッチを描きます。正面はこんな形、質感はこんな感じと描いていって、色を決め、設定を考え、名前をつけてキャラクターを創造します。そこから型を作って立体で制作したものがソフビ・フィギュアです」

オリジナル怪獣「ジャッジラー」の下絵
彩色したデザイン画。ひとつの「型」から、いくつかの色パターンを制作することも

日本で商業的にソフビ・フィギュアを作っている作家は増えていて、セミプロも含めると、100〜150人ほど。若手の作家が増えているという。

「昔からソフビ作っていた職人さんが引退を考える時期なのか、じつはソフビ工場は減っているんです。年齢的にも経済的にも維持が大変ですからね。そこで、若いアーティストを中心に、消えようとしている業界を守ろうとしています。工場がなくなる前にソフビ作りのノウハウを自分のものにしたいと考えている若い作家が、ソフビ工場で修行したりしているんです。世界的にファンが多くなってきていることは分かっていますから、ソフビ制作の現場をなくすわけにはいかないし、これで生活していけるかも!と期待もしてるんですね」

遊ぶツールから交流のツールへ

クリエイターズ・ソフビが盛り上がりを見せている背景には、SNSの力も大きいという。

「小さい頃のソフビは友だちと遊ぶツール。なので、成長とともに遊びが変わっていって、ソフビという選択肢は消えてしまいます。でも、今のブームは、友だちと遊ぶツールではなく交流ツールとして機能しているんです。

自分のコレクションをSNSにアップすると、同じ感覚の人が『それ、僕もいいと思ってました!』とか共感してくれるんです。アーティストの数だけ世界観のあるクリエイターズ・ソフビだから、自分の心の奥底にある本能的に好きな世界が投影されやすい。共感してくれる同士を見つけやすいんだと思います」

クリエイターズ・ソフビ人気の背景はさまざまだが、一番のポイントはやはりソフビ自体の持つ魅力だ。

「ソフビアーティストは、それぞれがいろんな人生を歩んできた人たち。いろいろな道を歩んできた結果、ソフビというジャンルにたどり着いています。ホラー系しか作らない人とか、カワイイものしか作らない人、ファンシー系など、100人のクリエイターがいれば、100通りの世界があるんです。

かつて、ソフビ=おもちゃでしかなかったのですが、ファッション感覚でカワイイものを集めるとか、インテリアにするとか、楽しみ方が広がりました。

コレクションとして部屋に並べた時に自分の好みが見えてくるんですよ。『自分は、こういうジャンルが好きなんだ』って。クリエイターズ・ソフビは、そういう自分発見的な役割もあると思います。何も考えず好きなものだけ買って、気がついたら、最終的に『自分はこういうのを買っていたんだ。俺ってこういう感じなんだ』って、ソフビが教えてくれるんです』

クリエイターズ・ソフビは、今が一番おもしろい!

「作家が増えれば作品も増える。作品が増えれば、ユーザーの選択肢も自然と増えます。これは本当に盛り上がっていないとできないこと。マーケットが小さいと、みんな同じもの、売れるものしか作らない。

それが『こんなの作っても売れないかもな』って思うものも作りはじめると、業界って面白くなっていくんです。今のクリエイターズ・ソフビの世界は、まさにその状態。冒険的な作品もどんどん生まれています。

アーティストによって値段設定はさまざまで、僕の作品も石粉粘土のものは、1体12万円なんて価格もあります。が、ほとんどのソフビは1体3000円くらいで買えるもの。まずは、一度クリエイターズ・ソフビの世界に触れてみてください!」

ガム太郎さんの最新ソフビ「蒸気怪獣ロコラ」。昭和の怪獣と蒸気機関車が融合した1体だ
「里芋怪獣 キングゲビラ」のソフビ。現在は右下、紫色の「One up.製 里芋怪獣 ゲビラ(ミニガチャ)」のみ、中野ブロードウェイ内のショップ「One up.」にて限定ガチャで販売中
gumtaro作品で、最も高価な「里芋怪獣 TARO」。これは石粉粘土で製作された1点モノで、販売価格は12万円
gumtaroブランドのソフビ怪獣たち。“自由な怪獣”をテーマに、ポップな怪獣たちを生み出している

 

ガム太郎:1967年、東京生まれ。立体怪獣作家。2016年に自身のブランド「gumtaro」を設立。「自由な怪獣」をテーマに、オリジナル怪獣ソフビや1点ものの立体物を制作、販売している。これまでに800以上のキャラクターを創造。そのなかから特にお気に入りの作品をソフビとして立体化している。最新情報は、Instagram(@gumtaro)で。2021年5月27日〜6月13日、京都・トランスポップギャラリーで、アーティスト塙将良との2人展「たのしい怪獣展」を開催予定。

  • 取材・文宮澤祐介

    ライター。ホビー誌でクリエイターズ・ソフビを取材、キャラクターアーティストの連載ページを担当している。ブルマァクの復刻版のウルトラ怪獣のソフビをちょいちょい購入中。所有怪獣はバードンやツインテール、ケムール人、ミステラー星人と言ったキモカワ系を中心に20体程度。

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