「スター・ウォーズの日」帝国の歴史から私たちが学ぶこと
5月4日は、なんの日かご存じでしょうか?
タイトルでネタバレですが、5月4日、「May the 4th」。「May the Force」ということで、「スター・ウォーズの日」。そう、ジョージ・ルーカスが1977年に生み出した、あの「遠い昔、はるか彼方の銀河」の物語を記念する日、というわけです。
かつてルーカスは「スター・ウォーズ」の世界観を構築するために、ほとんど神経衰弱になるまで心血を注いだそうですが、現在でも世界最高の才能と資金が集まり、物語はどんどん拡がっています。

「スター・ウォーズ」サーガの中心をなすのは光と闇。自由を抑圧する帝国とそれに抵抗する反体制運動の人々の物語。
しかし、「帝国は無条件に悪か?」「ジェダイは絶対の正義か?」というと、そんな単純に割り切ることができません。その歴史は深く、「私たちの銀河」にも大きな教訓を与えてくれます。
実は善悪二元論の世界観ではない。特にスピンオフにはそこに踏み込む「攻め」の姿勢が見えて、たとえばシリーズ初のテレビドラマ「マンダロリアン」(2019〜)では、新共和国の統治はまだ微弱。帝国崩壊後の無法状態の中、自分で自分を守るしかなくなった人の暮らしが描かれます。
いっぽう帝国の残存勢力は「これが求めた自由か?」「我々は秩序を回復することができる」と主張する。
帝国の統治は重く無慈悲なものではありましたが、「秩序のないところに、自由もない」という主張には、もっともだと感じさせられる部分もありました。
『THE STAR WARS BOOK はるかなる銀河のサーガ全記録』はその世界の事典。EP1「ファントム・メナス」からEP9「スカイウォーカーの夜明け」までの映画9部作を中心にし、スピンオフもすべて網羅した「全記録」です。まさにルーカスが構築した世界観を余すことなく収蔵しています。



この全記録を紐解いてあらためて感じるのは、共和国はただ元老院最高議長であり、後に銀河帝国皇帝となるパル

共和制の守護者であるジェダイオーダーも、その幹部を見ると浮世離れした人が多い。ランド・カルリジアンのごとき地下経済にまで精通した人材がいればよかったのですが、「経済問題」のような形而下的課題には疎く対応が遅れてしまったのでしょう。
奔放な資本主義が横行すると、その結果として進行するのは格差の拡大です。想像力をたくましくすると、パルパティーンは銀河にあふれた不満を巧みに利用し、帝政への移行を果たしたのかもしれません。
「銀河には今、強力な権力が必要だ」。そう感じる人が少なくなかったからこそ、彼は万雷の拍手の中で合法的に権力を奪取することに成功したのではないでしょうか。
しかし、抜群の能力を持つSW世界最高の政治家ではありましたが、その統治は重く抑圧的で、彼の帝国は一代で滅ぶことになります。
光と闇は表裏一体。ジェダイとシスも実はよく似ている。大切なことはフォースのバランス。
私たちのリアルの銀河でも同じことなのでしょう。絶対の正義はないし、それを実現しようとすると必ず無理が生じる。バランスが大事。
「スター・ウォーズ」のあまりにも魅力的な歴史は、そのことを”心踊る活劇”でもって教えてくれます。
May the Force be with you.フォースと共にあらんことを。
文:堀田純司
(ほった じゅんじ)作家:主な著書に『僕とツンデレとハイデガー ヴェルシオンアドレサンス』『オッサンフォー』(以上講談社)『メジャーを生み出す マーケットを越えるクリエーター』『“天才”を売る 心と市場をつかまえるマンガ編集者』(以上、KADOKAWA)などがある。別名義でマンガ原作も執筆している。日本漫画家協会員。