「年間売上1億」の歌舞伎町ホストが明かすコロナ禍でも好調の秘密 | FRIDAYデジタル

「年間売上1億」の歌舞伎町ホストが明かすコロナ禍でも好調の秘密

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店内で行われたインタビュー。南心亜氏は新型コロナウイルスの感染予防を徹底するため、マスクを外すことはなかった(撮影:村田克己)
店内で行われたインタビュー。南心亜氏は新型コロナウイルスの感染予防を徹底するため、マスクを外すことはなかった(撮影:村田克己)

新型コロナウイルスの感染拡大により大きく影響を受けた業種の一つが飲食店だ。特に、小池百合子・東京都知事が感染の要因として『夜の街』と繰り返し発したことにより、多くのホストクラブやキャバクラは少なからず影響を受けた。日本最大級の歓楽街、新宿・歌舞伎町の人出も大幅に減った。

そのようななかで、コロナによる影響をものともせず、売上を伸ばしているホストがいる。南心亜(みなみ・ここあ)氏。「数千人いると言われる歌舞伎町のホストの中でも10人いるかいないか」と言われる、年間1億円を売り上げる人気ホストだ。なぜ彼はコロナ禍でも好調を維持しているのだろうか。

一度は苦汁をなめ、這い上がった22歳

「コロナで売上が減って大変じゃない、と心配されることもあるんですが、有難いことに売り上げが落ちている、ということは今のところ、ありません。むしろ自分はこの時期になってからの方が売り上げが伸びましたね」

そう明かす南心亜氏は、歌舞伎町を中心に多数の店舗が加盟している”ACQUA”のの「alpha by ACQUA」で支配人を務める、ホスト歴3年目の22歳だ。

「もともとは美容師などのバイトを転々としていましたが、給料の安さがイヤになって、自分の店を持つ経営者になりたいと考えました。経営者になるにはまずお金が必要ということで、がんばり次第でお金が稼げるホストになったんです」

19歳の時に入店。当初は他の売れないホストと同様に、開店前の準備や雑用を行う「掃除組」に甘んじていたが、数カ月後に太い常連客を獲得でき、そこから脱出。しかし勢いは続かず、再び「掃除組」に落ちた苦い経験を持つ。その時から約1年間、地を這うような下積みの生活が続く。

「別にめちゃめちゃかっこいいアイドルやジャニーズっぽい顔をしているわけではないので、結構、努力しました。外で出会って新規客を獲得して、一部(深夜)も二部(早朝)営業も毎日出勤して、必ずアフターもして…。今だから言えますが、家にも帰れず、風呂にも入れない時期もありました。女の子に先行投資したくて、でも『お金を持っていない』という弱みは見せたくなかったから、自分の食事は100円のカップラーメンで済ませた時もありました」

そんな状況から再浮上するきっかけを与えてくれたのも、やはり女性だ。月に100万円以上使う常連客を獲得し、その女性の後押しもあって売れっ子ホストに成長。再び売れない時代に戻るのがこわくなり、一度は美容師に戻ることも考えたが、「alpha by ACQUA」の新規オープンにあたって看板ホストに選ばれたことで闘志をかき立てられた。

まだ新型コロナウイルスがこの世に存在していない時期に、寝る間も惜しんでホスト業に精を出した結果、月間売上は600万円、700万円と上り調子になり、いつしか1000万円超に。ACQUA加盟店に700人以上いるホストのなかで、2020年4月期の年間売上でNo.3に輝く。年間1億円オーバーのトップホストに上り詰めたのだ。

苦汁をなめた時期もあった
苦汁をなめた時期もあった

秘訣は人間観察 相手に合わせて接し方を変える

1億円もの売上をもたらしているのは言うまでもなく、来店する女性だ。月に数十万から百万円以上使ってくれる常連客を、何人もつかまえなければならない。そんな女性を見極めるコツはどこにあるのか。

一つのポイントとして教えてくれたのは「靴」だ。

「売上を上げたいなら、より多くのお金を使ってくれるお客様を見極めることが大切です。そこで自分の場合は靴に注目します。靴には男女を問わず本人の性格がよく出るからです。いくら美人でスタイルがいい女の子でも、ちょっと汚れた靴を履いている場合、あまり稼げない子であることが多い。反対に靴がきれいな子は稼げることが多い。だから靴がきれいな子を見つけたら常連になってもらうために必死に口説きます」

さらに靴以外にも、さまざまな角度から人間観察することを心がけている。

「たとえば初めてのお客様に名刺を渡して自己紹介する時、目線を合わせて話してくれるか、目線を外してしまうか。それだけでも女の子の性格は少しわかります。さらに、ファッション、表情、しぐさ、話し方など、いろいろなパーツを細かく観察します。

観察した結果から瞬時に自分なりに『こんな性格の女の子だろう』と予測を立てる。そして、相手が好みそうな話題を振ったり接し方を試してみたりします。その反応を見ながら試行錯誤して、徐々にハマりそうな話題、好きそうなコミュニケーション方法を探り当てていくようにしていますね」

プライベートではポーカーが趣味。ポーカーは究極の心理ゲームとも言われるが、彼にとってはお客を観察し、その心理を読んで瞬時の駆け引きを仕掛けることも、エキサイティングなゲームの一種なのかもしれない。

ホストには「オラオラ系」「お兄さん系」「お笑い系」などいろいろなタイプがあり、本来の自分とは違うタイプを演じるホストも多い。しかし南氏は演じることはせず、素の性格のままでホストをやっていると自覚している。

「自分の性格を変えてまで接客するのは疲れます。だから自分は基本的に、一緒に楽しく飲んで盛り上がろうという、友だちのようなノリでお客様と接することにしています。相手のことをよく理解して、自分のことも理解してもらい、互いに信頼し合って、お互いにこの場を楽しむように持っていくことが、女の子と長続きするコツですかね」

店に入る前には、美容師に髪型を整えてもらう
店に入る前には、美容師に髪型を整えてもらう

「あなたに使いたくない」と言われても引き止めない理由

ホストクラブといえば、女性に色恋営業を仕掛けて、精神的に依存させ、お金をむしり取るというイメージもある。しかし南氏の説明する接客スタイルは、そのようなイメージとは大きく異なるように思える。

「『お前がいないとオレは生きていけない』って女の子をつなぎ止め、徹底的にお金を使わせるのがホストのテンプレ。でも自分は、そういうやり方はしません。女の子が自分で稼いだお金なんだから、どこで使おうが自由だと思っているからです。もちろん自分に対して使ってほしいけど、『もうあなたに使いたくない』『他店のホストに使いたい』と言われても、引き留めませんよ。

それだけの関係しか作れなかったということですから。関係が作れていれば、一度他店に行った女の子もまた戻ってきてくれます。『心亜さんじゃないと私のわがままに対応できない』とか言ってね」

また自分のところに戻ってくることがわかっているから、あえて強引につなぎ止める必要がない。女性と精神的に強く結びついている自信があるからこそできる離れ業といえよう。とはいえ、いつも余裕のある態度ばかりを見せているわけではない。ここぞという時には売上確保のために猛烈に攻める姿勢も見せる。

「数カ月後にバースデーイベントを控えているなど、絶対に目標を達成したい時には、徐々に女の子の気持ちを高めていきます。『ナンバーに入りたいから、バースデーを盛り上げて』『シャンパンタワーを注文してほしい』と真剣な顔でお願いすることもありますね。大事なのは、徐々に熱量を上げていくこと。女の子の熱量が低い時に自分だけ熱くなっても、引かれてしまうだけ。でも徐々にお互いの熱量を上げて、気持ちを盛り上げていけば、『私もたくさん稼ぐから心亜もがんばって』とサポートしてくれます」

コロナ禍でむしろ売上が伸びたワケ

2020年の緊急事態宣言以降、歌舞伎町に多数あるホストクラブも客足が減り、休業や閉店を余儀なくされた店も多いが、南氏の個人売上は、むしろ増えているという。

「売上が伸びている理由はまず、つぶれたホストクラブが増えて、時間の制限がある中で何とか営業しているホストクラブに女の子が流れるようになったから、というのもひとつの理由かと思います。また、コロナで女の子も稼げなくなっているのに、相変わらず以前と同じように強引にお金を使わせようとするホストもいる。

それでケンカをして、通う店を変えた子も多いです。コロナになってお客さんがいろんなお店にすごく流れているんです。ピンチはチャンスってよく言いますが、コロナはまさにチャンス、ととらえています。もちろん、感染対策には十分に気を付け、いかなる無理もしないことは前提です」

実際にこのコロナ禍で南氏は、月に100万円以上の売上をもたらしてくれるお客さんを2人も獲得できたという。いずれも以前は他の店に通っていた女性だ。

「他の幹部とミーティングしている時に、感染症対策について議論することはあっても、『コロナだから売り上げが落ちた』という話題は出てきません。こういう事態に対応していけるホストだけが、生き残っていけると思います」

自分の店を開くという夢は相変わらず持ち続け、最近では将来を見据えて経営の勉強も始めた。「でもひとまずは、ホストとしてできるところまでやりたい」と、さらなる高みを目指して突き進んでいる。

 

◆南心亜(みなみ・ここあ)氏

alpha by ACQUA 支配人
東京出身の22歳。美容師などのバイトを経て、アクアグループ・アルファに入店。「alpha by ACQUA」オープン時に看板ホストに。アクアグループのホスト約700名のなかで2020年度売上No.3に輝く

  • 取材・文平行男

    フリーライター。社内報などの企画制作会社を経て2005年からフリーランスに。企業の広報・販促コンテンツの制作を支援するほか、各種メディアでビジネス、IT、マネー分野の記事を執筆している。ブックライティングも多数。

  • 撮影村田克己

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