異色の生物分類学者「大切なことはすべてポケモンが教えてくれた」
新種の昆虫に『フリーザー』『ファイヤー』『サンダー』と命名した 生物分類学者 シャオ・ユン(27)
「ポケモンゲットだぜ!」
そう目を輝かせていた台湾の少年が、もっとビッグな成果をゲットした。
『ポケットモンスター』の世界に憧れ、幼少期はポケモンマスターを夢見ていたというオーストラリア国立大学生物研究部の大学院生シャオ・ユン氏(27)。昨年、未分類だった甲虫類3種が新種だと証明する論文を発表し認められたのだ。
3月17日、新種3匹に、伝説のポケモン『フリーザー』『ファイヤー』『サンダー』の英語名を学名として付けたことが、米メディア『Forbes』で報じられると「オタクが夢を叶えた!」と話題になった。ポケモンマスターならぬ昆虫マスターとなったユン氏に喜びを聞いた。
「新種の発見は私の悲願でした。当日は嬉しくて眠れませんでしたね。その興奮が、初めてポケモンに触れた時のワクワクにとても似ていました。そこで、とりわけ思い入れの強かった伝説のポケモンの名前を付けました。
新種の3種は小さいため発見が難しく、生存個体数もかなり少ない。その希少性は『フリーザー』ら伝説のポケモンのレア感に近く、ピッタリなネーミングだと思いました」
――ポケモンとの出会いはなんですか?
「5歳の時、母が『ニドリーノ』の小さなフィギュアを買ってくれたんです。『なんてクールでキュートなんだ!』と惚(ほ)れ込んだことをよく覚えています。小学校時代はアニメにハマりました。とくに第1話は忘れられません。『ポケモンマスターになる!』という夢を堂々と語り、あきらめずにまっすぐジムリーダーに向かっていくサトシに憧れました」
――好きなポケモンはなんですか?
「『カイロス』です。子供のころからむしタイプのポケモンが大好きでした」
――昆虫学の道に進んだきっかけは?
「ポケモンの好きなところは、地球上のリアルライフに基づいたモンスターのデザインです。むしタイプが好きだった私は『モデルとなった昆虫はなんだろう?』と自然と興味が湧き、大学入学を機に昆虫学の世界で生きていこうと決意しました。
サトシから学んだ『あきらめなければ夢は叶う』ということを胸に、これからも研究を続けます。今の夢は、新種をたくさん発見し、その昆虫だけを展示する博物館を作ることです」
今後も発見した新種には伝説のポケモンの名前を付けると力強く語ったユン氏。昆虫マスターの冒険は始まったばかりだ。
『FRIDAY』2021年4月30日号より