変異株に襲われたフィリピン「医療崩壊」のヤバすぎる現実 | FRIDAYデジタル

変異株に襲われたフィリピン「医療崩壊」のヤバすぎる現実

オリンピック開催に固執すれば日本はいずれこうなる。病院の前に設置された仮設施設すら満員、コロナ以外の重病人が死亡するケースが続出

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医療崩壊が深刻化するフィリピン国内の病院では、病床を確保するため、屋外にもテントが設営されている 写真:アフロ

東京オリンピック開催の是非をめぐって揺れる日本。IOCは「必ず開催」と強気の姿勢だが、その流れに逆らうように、日本各地の病院は「医療崩壊寸前」と悲痛な声を上げている。自民党の二階俊博幹事長も「五輪中止」発言をして物議を醸(かも)したが、実際問題、開催によって感染が拡大すれば、元も子もない。

そんな日本の懸念を「先取り」するかのような医療崩壊が今、同じアジアの島国、フィリピンで起きている。

「コロナに感染して重症化したら、受け入れてくれる病院はほとんどありません。知人に医師がいるとか余程のコネがあれば別ですけど、一日1万人以上も感染者が出ている状況では厳しいと思います」

こう語るのは現地在住の日本人男性(59)だ。男性の知り合いの駐在員は、感染して体調不良を訴えたが、首都マニラの病院ではどこも受け入れてくれず、地方の病院に搬送された。

「知り合いはなんとか入院が決まったのですが、その前に亡くなった日本人もいます」

フィリピンの在留邦人は約1万7000人。多くがコロナの感染拡大を機に帰国したが、日系企業の駐在員らは現地に留(とど)まっている。

フィリピンは今年3月に入ってから、特有の変異株が発生して感染者が急増し、同月下旬には一日の感染者数が連日1万人を超え、4月5日には過去最多の約1万4600人を記録した。感染者数の累計は19日現在、約95万人に上り、人口規模でほぼ同じ日本の感染者数の倍近い。

この変異株に加え、外出禁止措置の違反者が続出したのも、感染拡大の要因とみられる。ドゥテルテ政権は3月下旬から2週間、マニラ首都圏などへの規制を最も厳しいレベルに引き上げた。これは昨年5月以来で、午後6時~午前5時の外出が原則、禁じられる。ところが買い物などで夜間に外出する人は多く、摘発された違反者は5万人を超えた。

現地の報道によると、治安当局の体罰を受けて死亡した違反者もいる。被害者は心臓に持病を抱えた20代の男性で、4月1日午後6時過ぎ、飲料水を買うために外出したところ、警察に拘束された。その後、スクワットや腕立て伏せなどを数百回、翌朝まで強制され、その翌日に体調を崩して亡くなったという。

外出禁止措置に加え、街のレストランは店内飲食ができない。屋外での飲食は可能だが、乾季のフィリピンはうだるような暑さだ。前出の日本人男性が言う。

「飲食店はテイクアウトかデリバリーでの注文が基本です。夜は居酒屋に飲みに行くこともできないし、映画館も閉鎖されているので娯楽もない。何もすることがありません」

たらい回しにされ駐車場で死亡

外出禁止措置は12日に緩和されたが、感染者の1万人超えが続いたため、マニラ首都圏の病院は相次いで医療崩壊に追い込まれた。

フィリピン保健省によると、マニラ首都圏にある約160の病院のうち、病床使用率は7割弱だ。まだ余裕があるように見えるが、医療従事者が圧倒的に不足しているため、数字通りには受け取れない。退職した看護師までもが駆り出される始末だ。総病床数1500を抱え、首都圏を代表する国立フィリピン総合病院では、「看護師1人が新型コロナ患者9人を診ている状況」だという。

マニラ北部にあるフィリピン肺センター病院の担当者は4日、ラジオ局のインタビューに対し、逼迫(ひっぱく)する状況を訴えている。

「集中治療室は定員の2倍に達した。コロナ病棟は重症患者でいっぱいだ。これ以上、新規の感染者を受け入れることはできない。ベッドや担架、酸素吸入器を増やして対応したい」

この病院の外来病棟の廊下にはリクライニングチェアが並び、患者たちが点滴を受けていた。皆、病室が空くのを待っているのだ。病院に隣接する公園のベンチには、数人の野宿者がいたが、そのうちの1人の男性は、病院で妻が空き室を待っているのだという。

「地元には受け入れ可能な病院がなかったので近郊からマニラまで来ました。処方された薬を買いに行ったりと、妻の世話をするため、もうここで20日以上寝泊まりしています」

この病院の敷地内には、コンテナ式の屋外病床の設置が進められていた。

マニラ首都圏を見回すと、主要な病院は入り口に「コロナ感染者用の病棟は満床」と注意書きされた看板が置いてある。主要道路の一部区画を占拠し、軽症者向けの隔離施設が設置されている場所もある。

フィリピンでは、ワクチン接種も3月から始まったが、普及しているのは主に中国シノバック社製。欧米製に比べて有効性が不透明で、4月半ばに接種回数100万回を超えたが、接種率は人口約1億人の1%に留まっている。

こうした現実を前に、悲劇も報じられた。首都圏パラニャーケ市に住む男性が3月半ば、陽性と判断され、家族が病院を探した。しかし「集中治療室は満床」と回答する病院ばかりで、たらい回しにされた挙げ句、20ヵ所すべてに断られた。

ようやく見つけた病院も患者の長蛇の列が続き、駐車場で待っている間に死亡したという。他にも、4歳の男児が喉に飴をつまらせて病院に行ったが、「コロナの検査をしないといけない」と言われて待たされている間に死亡するなど、コロナ以外の病人や怪我人が亡くなるケースが多発している。

国によって事情は異なるとはいえ、今の日本にとって「対岸の火事」で済まされるだろうか。

新規受け入れを停止しているフィリピン肺センター病院内の廊下には椅子が並べられ、病室待ちの患者たちが点滴を受けていた
在留邦人が集中する首都圏マカティ市の著名病院『マカティ・メディカル・センター』の入り口にも、「満床」の看板が
公共市場は買い物をする市民でごった返す。外出禁止が厳格化されても違反者が続出し、2週間で5万人超が摘発された 写真:アフロ
「妻が空き部屋を待って病院で待機中です」と言う近郊から来た男性。妻の世話をするため20日以上野宿生活を続けている

『FRIDAY』2021年5月7日・14日号より

  • 取材・文水谷竹秀

    ノンフィクションライター

  • 写真アフロ(1、4枚目)

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