崩落した姿のまま保存…阿蘇大橋が物語る「巨大地震の恐怖」
熊本県南阿蘇村 橋桁が折れ、アスファルトの路面が割れて落下、 今も一部が峡谷に引っかかっている
「熊本市からクルマで阿蘇の観光地を目指すと、阿蘇大橋を目にすることになります。地元の人はずっと『赤橋』と呼んでいました。’90年代に塗り替えられるまでは赤色だったんです。まさに阿蘇の玄関口であり、シンボルでした。ですから、この橋が落ちたことは地域にとって本当に衝撃的な出来事でしたね」(近隣住民)
’16年4月に発生した熊本地震で、南阿蘇村にある阿蘇大橋は橋桁(はしげた)が折れて崩落。当時、付近を車で通行していた大学生一人が亡くなった。今も割れたアスファルトの路面の一部は峡谷に引っかかったままだ。
4月、この阿蘇大橋が『震災遺構』として、現在の姿のままで保存されることが決まった。熊本県観光交流政策課の担当者が語る。
「いま技術的な保存方法の検討に入っているところです。ワイヤーで止めることができれば、2000万〜3000万円の予算で可能という試算はあります。しかし地盤が崩れている場所でもあり、重機が入っていけるかもわかりません。これから調べていくことになります」
現地には対岸に展望スペースが設けられており、そこから約150m先にある崩落した橋を間近に見ることができる。
「もちろん心が痛まれる方も当然いらっしゃると思いますが、地震について学べる場所として、多くの方に見て感じていただきたいです」(前出・担当者)
訪れた人は、地震の恐怖を生々しく物語るその姿に圧倒されるだろう――。
「FRIDAY」2021年5月7・14日号より
撮影:加藤博人