紀州のドンファン事件 元妻が語っていた「自白について」 | FRIDAYデジタル

紀州のドンファン事件 元妻が語っていた「自白について」

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毅然として「身の潔白」を語っていたが…
毅然として「身の潔白」を語っていたが…

何度も逮捕のチャンスがあった

<2021年4月28日早朝、紀州のドン・ファンこと野﨑幸助氏を殺人した容疑で、和歌山県警は元妻の須藤早貴容疑者(25歳)を都内で逮捕した。事件の詳細が明らかになるのはこれからだが、生前から野﨑氏と交流があり、「怪死」後もその動向を追い続けてきたジャーナリストの吉田隆氏が、事件直後の早貴容疑者の様子を回想する――>

「和歌山県警の捜査員が、元妻の逮捕のために、都内と札幌に入った」

私のもとにこんな情報が入ってきたのは、4月24日を過ぎたあたりである。

「Xデーは4月27日。取材に力を入れているのはNHK」

という情報も入った。NHKの周辺取材が活発になったのを察知したのか、27日には民放テレビの記者が、和歌山県警や捜査関係者に「逮捕か?」と取材をしてまわったため、予定されていた27日の逮捕が延期された…との事情も聞く。

支えあっているように見えたのだが…
支えあっているように見えたのだが…

実は、和歌山県警が元妻を逮捕するチャンスは何度かあった。特に2020年1月末には、捜査員が県内・東京に飛んで一斉に事情を聴取した瞬間があった。ドン・ファン宅に置いてあった買ったばかりの掃除機から覚せい剤が出たというものだった。私も含めこれは「逮捕の動き」だと思っていた。事実、このとき捜査員は関係者に対して、

「(犯人は)いつでも逮捕できる」

と強い言葉を投げていたのだ。

しかし、この時には誰も逮捕されなかった。2020年2月になると、和歌山県下でコロナウイルスのクラスターが発生して大騒動になった。これで捜査の動きはピタッと止まってしまった。事情に詳しい県警担当記者がいう。

「県警レベルではいつでも逮捕ができると主張していたんです。地検からもGOサインが出ていました。しかし、高検が首を縦に振らなかった。それが複数回あったらしいです。捜査員たちはそれで落胆の繰り返しだった…と。それが今回は、最高検の後押しがあった、とも耳にしています」

ドン・ファン事件に世間がいかに注目しているのか分かろうというものだ。

もしやってるなら、自首したほうがいい

ドン・ファンと長く交流してきた私は、亡くなる直前、彼と電話をしていた。亡くなったのは5月24日の夜だが、その夕方に「すぐに田辺(ドン・ファンの家)まで来てほしい」と言われていたのだ。どうしても相談したいことがある、とのことで、切迫感があった。

さすがに夕方から出発は難しい。私は「明日行きますから」と返事をして電話を切った。その約6時間後に、ドン・ファンは自宅寝室で遺体となって発見された。

行っておけばよかった…と悔やみながらも、私は翌25日の昼前に田辺市のドン・ファン宅に入った。そこにいたのはドン・ファンの長年の知人であり、当時家政婦をしていた木下さん。ドン・ファンの会社の番頭役のマコやん。そして早貴容疑者である。ドン・ファンの遺体は解剖に回されて和歌山市へ運ばれていた。

彼女たちから事情を聴くと、「発見した時には体がカチンカチンになっていた」と証言したので、私はこれは事件だな、とピンときた。その晩、自宅に家宅捜索で捜査員が入った。これに、新妻らが対応していた。

私はその夜、野崎家のリビングに泊まっていたので、捜査員が出た後、早貴に「令状に何と書かれていたのか」と訊いた。すると「覚せい剤使用について」と書かれていたと聞いてびっくりしたのを覚えている。

ドン・ファンは覚せい剤を使用するような男ではない。多分、誰かが騙して飲ませたのだろう。そのとき家にいたのは新妻だけで、木下さんは7時半ごろに帰宅していたことが分かった。

私はそのとき、彼女にこう言っていた。

「早貴ちゃん、君のことは信じているが、もしやっていたのなら、自首すればいい。面会にも行ってあげるし、差し入れもしてあげるから」

もちろん彼女はそこで否定したわけだ。私も、形式上は夫を失っている新妻を追い詰めることはできない。

「やったら、自首すればいいよ。面会にも行ってあげるし、差し入れもしてあげるから」

お手伝いの木下さんにも同じように聞くと、

「何年ぐらいの罪かな?」

木下さんは緊張した空気を和らげようと、少し笑いながら返してきた。

「15年ぐらいかな。一般論だけど、自首すればもう少し罪は軽くなるはず」

私が言うと、

「あら、出所してきてもそれでも早貴ちゃんはアラサーじゃないの。行ってきなさいよ。私はババアだから嫌だわ」

木下さんが言ったので、4人で苦笑いしたことを思い出す。

その後も彼女に会うたびに、私はこう尋ねていた。

「早貴ちゃん、誰かからもらった覚せい剤を、そうとは知らずにドン・ファンに飲ませた? もしそんなことがあったのなら、正直に当時のことを話すといいよ。もしあなたの身に覚えがあるとして、それを正直に話せば、キミの罪は軽くなるから」

丁寧に、諭すように、だ。しかし、彼女はそのたびに毅然としてこういった。

「やってませんから」

目を動かすことなく平然としていたのが印象的であった。

私はドン・ファンと彼女のことを本当に近くで見てきた。私には強く否定した彼女が、逮捕されたいま、どのようなことを語っていくのか。認めるのか、否定するのか…いずれにせよ、差し入れの必要があるなら、持っていこうと思っている。

<大特集!「紀州のドン・ファン 知られざる壮絶生涯」はこちらをクリック

  • 取材・文吉田隆

    ジャーナリスト

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