『生きるとか死ぬとか父親とか』ジェーン・スーさんの「リアル」

【インタビュー】金曜深夜「父と娘」のドラマに胸が熱くなる…!

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「吉田羊さん、素敵な方です。ドラマでは私のものと似たカチューシャや眼鏡までつけてくださって恐縮してます」

こう語るのは、自身の「父のことを書いた」作品『生きるとか死ぬとか父親とか』の著者ジェーン・スーさん。テレビドラマ化され、ジェーン・スーさん(ドラマではトキコ)役を演じているのが吉田羊さんだ。「本人かと思った」といわれるほど似ている。

『生きるとか死ぬとか父親とか』に展開する父娘のリアル。ジェーン・スーさん父娘の愛と苦い思いが混じったドラマに胸が熱くなる。「まるで本人」吉田羊と田中みな実のラジオシーンも 撮影:tenhana

ジェーン・スーさんは東京生まれの東京育ち。多数の本を著し、ラジオパーソナリティーとしても活躍している。お悩み相談が秀逸で『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』などの著書もあることから、「未婚のプロ」とも呼ばれている。そんな彼女が「父と娘」のリアルを描いた『生きるとか〜』。いいことばかりじゃない父娘の物語は、ときに、胸が痛くなる場面もある。ドラマは3話まで放映されている。

24歳のとき、お母さまを亡くしている。

「すてきな母でした。でも私は、母の『母としての面』以外いっさい知らないでお別れしてしまった。もっと母のことを知っておきたかった。そういう後悔があったので、父に対して同じ思いを繰り返したくない、父の『父親以外』の側面を知りたいと思ったんです」

そして「お父さんに取材」して書いたのが『生きるとか死ぬとか父親とか』だ。

父親は、いわゆる「家庭的」な男性ではなく、いろいろわだかまりがあったという。だが、取材として父の話を聞いていくうちに評価は変わった。

「それまでは『父親として何点』という見方しかできなかったんですけど、人としての父を知って、だいぶ評価が変わりました。父親業は苦手だったけど、一緒に仕事をしたら楽しい人だったんじゃないかと思います」

今はお互い一人暮らし。コロナ禍で、会うのは月に1回だけれどコミュニケーションはとても「密」だ。

「朝昼晩の食事を撮影して、LINEで送ってもらうようにしています。これで生存確認ができる。LINEがこなかったらこちらから電話するので、見守りポットの代わりです(笑)。毎日何を食べているかわかるから、栄養のバランスとか体調とかわかるし『もっと食べて』と言うこともできます。これは、ほんとにいいシステム!と思います。

父の生活の不便を見つけて、それを解決して維持できるシステムを作るのが楽しくて仕方ないんです。私は『問題解決をする』のが、すごく好きなんだと気がつきました。

父は、何を食べているか、水分をとっているか、外出から帰ってきたらLINEしろとか、あれこれ言われて『監獄だ』と言ってますけど(笑)」

楽しんでいると人生は変わるから

「私は自分の生活のことを書いています。そのためにまず、自分が楽しまなくちゃいけないなと思っているんです」

そもそもジェーン・スーという名前はSNSのハンドルネーム。日記を公開していたら、それを見た女性誌の人からコラム連載の話が舞い込み、それを機にコラムニストとして、ラジオパーソナリティーとして活躍の場が広がってきたのだとか。自分が面白がること、楽しむことが、活動の基本なのだという。

そんなジェーン・スーさんが今いちばん楽しんでいるのが「推し活」。Twitterでも「推し」のことをしばしばつぶやいている。

「毎日、仕事から帰ったら家で推しの動画を見たり。すごく楽しい。こんなに楽しいんだったら、もっと早くやればよかったです。その『推し』がだれなのか、わたしがだれを推しているかは公表していないんですけど。

そうすると、おもしろくてね。ミュージカルが好きな人は、『あのミュージカル俳優ではないか』と言い、スポーツが好きな人は『あのスポーツ選手では』と、それぞれ勝手に想像してくれるんです。みんなが自分の好きな方面だと思い込んで、それぞれの分野で盛り上がっていて、それを覗き見るのもすごく楽しい」

母親の人生を生き直しているのかも

女友だちとの集いも楽しみのひとつだ。緊急事態宣言が出されていないときは、親しい人と食事をしたが、現在は控え目にしているという。今も続いているのは、毎週土曜日、友だち4人でリモートでおしゃべりすること。

「香港に住んでいる友だちと、アメリカのポートランドに住んでる子と、東京の2人。もともと、直接は会えなかったんですけど(笑)」

充実した時間を持っているジェーン・スーさん。結婚を考えなかったんだろうか。

「長年のパートナーがいたのですが、いまはシングルです。お互い未熟だったんだと思います」

結婚に踏み切れないのは、法律婚が女性にとって公平なシステムとは思えないから。まずたいていは姓を変えなくてはいけない。たとえば相手が海外赴任になったら、多くの場合、女性がキャリアを中断して赴任先についていく。

パートナーとの間では、彼のほうが姓を変えてもいいという話が出たそうだが、

「自分が嫌なことを相手にしてもらうのもちょっと違うと思って」

結局そのままになってしまった。

「母は、聡明でユーモアにあふれるとてもすてきな女性だったんです。私は今、もしかしたら、母が『結婚しなかった人生』を生き直しているのかなと思うこともあります。映画雑誌の編集をしていた職業婦人で、結婚を機に専業主婦になりましたが、そのまま仕事を続けていたらどうなっていたか、自分なりに考えてみたいと無意識に思っているのかもしれないな」

若いころは反発していた父親だけれど、

「父にも似ていました」

仕事が好きで、人に信頼してもらうために努力をするところは父親に似たんだろうと言う。『生きるとか死ぬとか父親とか』では、そんな父娘の姿が「リアルに」感じられて、胸を打つ。今回のドラマ化でこれまでより多くの人が、「ジェーン・スー」という人を知ったし、ファンは彼女の「違う面」をもっと見たいと思うかもしれない。

「これからは、新しいことにチャレンジするというのではなく、今の仕事の精度を上げていきたい。他者と真摯に向き合って、ちゃんと生きる。それは親だったり、友だちだったり、読者だったり、リスナーだったり。そうすることがいちばん大事だと思ってます」

ドラマはテレビ東京系で金曜深夜0:12〜放送中。写真は、吉田羊さんではなくジェーン・スーさん本人

ジェーン・スー:1973年、東京生まれの日本人。コラムニスト、ラジオパーソナリティー、作詞家。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」のMCを務める。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』で第31回講談社エッセイ賞を受賞。著書多数。ドラマ『生きるとか死ぬとか父親とか』は、テレビ東京で放送中。

  • 取材・文中川いづみ

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