緊急事態下でも「1日700人ペースの外国人来日」が意味するもの | FRIDAYデジタル

緊急事態下でも「1日700人ペースの外国人来日」が意味するもの

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水際対策の強化はされても国境は開いたまま

日本における新型コロナウイルスの感染者数はこの1年あまり、増えたり減ったりを繰り返しながら、やや高止まりの状況が今も続く。感染者がゼロにならない、その要因の1つとして、コロナ当初から取りざたされてきたのが、日本の出入国管理、いわゆる「水際対策」だ。 

多くの世界各国・地域はコロナ影響下において、厳格な入国基準と入国後の管理体制を敷いている。一方、日本もある程度の入国制限は行っているものの、入国者に対して「日本到着後14日間の自主待機をお願いします」「到着した空港や待機中14日間は公共交通機関を使うのを自粛してください」などといった、あくまで個々への“お願い”ペースにとどめている。

成田空港第2ターミナル(国際線)の到着口。以前よりも人はかなり少ないが、大きなスーツケースを手にした外国人の姿がちらほら目についた(2021年4月撮影)
成田空港第2ターミナル(国際線)の到着口。以前よりも人はかなり少ないが、大きなスーツケースを手にした外国人の姿がちらほら目についた(2021年4月撮影)

実は今も、外国人の入国は意外なほどある。出入国在留管理庁の統計によると、2021年3月(速報値)の外国人入国者数は約2万人、そのうち新規入国者数が約2,000人だった。直近でも、1日平均700人弱の外国人が、日本へ毎日入国している計算となる。

日本への外国人の入国者数は、コロナ前後でどう変わってきたのか。また、コロナ影響下でも入国が多い国・地域、気になるイギリスやインドからの入国者数、最新の水際対策などを検証する。

成田空港の検疫所で入国前に行われる抗原検査を待つ入国者(画像:アフロ)
成田空港の検疫所で入国前に行われる抗原検査を待つ入国者(画像:アフロ)

昨年12月は「GoTo」停止の一方で約7万人の外国人が入国

先の、出入国在留管理庁の統計によると、日本に入国する外国人数は、コロナ前の2020年1月は約269.9万人だった。翌2月に半減した後、3月が約21万人、4月が約5,300人、そして5月は最も少ない「4,488人」まで減った。

その後、日本政府による入国基準の制限緩和などで、徐々に増えている。2020年12月には「約7万人」の外国人が入国し、そのうち新規入国者がなんと5万人近く。その多くがアジアからで、国別では中国とベトナムがそれぞれ15,000人超で突出していた。

昨年12月ごろといえば、感染の第2波が日本国内で広がり、「GoToトラベル」「GoToイート」が一時停止となり、年末年始の帰省や旅行などに対する自粛要請が出された時期。その月に、1日あたり平均2,000人以上もの外国人を連日入国させていた事実は、驚くよりほかないだろう。

「外国人の新規入国を全面停止」との発表から方向転換

そして、2020年12月25日、イギリス型変異種(N501Y)が、日本で最初に確認された。その後、イギリスから帰国後14日間の健康観察期間中に10名で会食し、のちに新型コロナの感染が判明して会食相手の変異種感染も明らかになって問題視された一件、大阪で感染拡大して重症患者が急増したのも、このイギリス型変異種が急拡大したのが一因だ。

イギリスから入国した外国人数を見ると、2020年12月「468人」、2021年1月「322人」、2月「122人」、3月「206人」と一時より減ってはいるものの、一定数の入国が続いている。なお、日本人の帰国者は、この数字に含まれていない。

日本政府は昨年末、2度目の緊急事態宣言の発出に合わせ、全世界からの外国人の新規入国を、2020年12月28日0時から翌年1月末まで全面停止すると発表した。だがその後、「新型コロナの変異株流行国・地域」ごとに停止との方針に、一転変更。その1月、イギリスから入国した外国人322人のうち51人が新規入国者扱いとなっており、水際対策の徹底とは言い難い現状を、データがはっきり示している。

昨年末の羽田空港。国際線からの到着客を待つ人(画像:アフロ)
昨年末の羽田空港。国際線からの到着客を待つ人(画像:アフロ)

インドなど流行国・地域から入国で強制隔離はたった3日

当初の中国・武漢、その後のイギリス型や南アフリカ型などに続き、現在はインド型変異株(L452R、E484Q)の感染が、日本でも急速に広がっている。その感染力は、イギリス型を大きく上回るとも言われる。

インドでさらに“二重変異株”が初めて確認されたのが、今年3月末。そのインドから3月に917人もの外国人が、日本に入国している。

世界各国・地域が次々とインドからの入国を全面禁止とした一方、日本政府は4月28日にやっと、インドを含めた6カ国・地域を新たに「新型コロナの変異株流行国・地域」とした。その対策は、インドなどからの入国者は、指定の宿泊施設で3日間滞在し、3日後の検査で陰性のち14日間の自宅待機を求められるといった内容だ。

インドで変異株が猛威を振るい始めてから1ヵ月あまりかかった上、日本への入国がその間ずっと変わらず続いていた事実。しかもいまだ、半ば強制とも言える国内隔離は、たった3日のみ。これでは「日本の水際対策はザル」と言われても、致し方ないのではないだろうか。

日本政府が行う、最新の「水際対策」を詳しく

日本政府が現在行っている「水際対策」を今一度、確認しておく。

外務省が、2021年4月30日に発表した「新型コロナウイルス感染症に関する水際対策の強化に係る措置について」を抜粋すると、以下の通り。(2)と(3)は今回新たに加わった部分だ。

  • (1)日本到着前14日以内に特定の国・地域(※)に滞在歴がある外国人は、当分の間「特段の事情」がない限り、上陸拒否する
  • (2)日本人を含むすべての入国者は、出国前72時間以内の検査証明書を提出する必要がある。所持していないと航空機へ搭乗できない。また、特定の国・地域(※)に関わらず、自宅もしくは指定場所で14日間の待機、到着後の空港からも含め国内で14日間の公共交通機関不使用、位置情報の保存などが求められる。「変異株流行国・地域」は陰性証明の提出、検疫所指定の宿泊施設で3日間の待機のち陰性判定だと退所できて14日間の自宅などでの待機。
  • (3)すでに発給された査証(ビザ)の効力停止。現在、すべての外国籍の人は再入国者を除き、入国前に査証の申請が必要
  • (4)査証免除措置の停止。ビジネストラック・レジデンストラックなどは一時停止
  • (5)航空機の到着空港の限定など
  • (6)「特段の事情」とは、①再入国、②日本人・永住者の配偶者または子、③定住者の配偶者または子で日本に家族が滞在して家族が分離した状態、④「教育」「教授」「医療」の在留資格取得者など
  • ※インド、インドネシア、フィリピン、マレーシア、カナダ、アメリカ、ペルー、メキシコ、ブラジル、UAE、カタール、トルコ、欧州主要国・地域など
日本帰国時に成田空港でのPCR検査後に渡される陰性証明書。現在は抗原検査(画像:アフロ)
日本帰国時に成田空港でのPCR検査後に渡される陰性証明書。現在は抗原検査(画像:アフロ)

共同通信「入国後の誓約不履行、1日300人」報道の衝撃

日本政府による水際対策は、確実に強化はされている。インドなど変異株流行国・地域からの入国だと、日本人も外国人も、出国前・入国時・その3日後と最低3回、コロナの検査を受ける。ただ、検査結果の正確さが100%でない上、その後の待機中(健康観察期間)の行動は入国者任せで連絡のみ、その全行動を追跡できているかも定かではない。

共同通信は2021年5月1日、「入国後の誓約不履行、1日3百人」との記事を配信した。厚生労働省などに取材し、入国後14日間の位置確認で自宅や宿泊施設といった誓約場所での待機が確認できない、離れた場所にいた人が、多い日で1日300人を超えていたことが判明したという。これが事実なら、水際対策が徹底されているとはとても言えないだろう。

東京五輪関係者向け「特例」とワクチン遅れへの懸念

東京五輪の開催が、今年7月23日から8月8日まで予定されている。現状どれくらいの数の選手や関係者らが来日するかは不明だが、相当数になると考えられる。

「Tokyo 2020 Playbooks」(暫定版)に、選手やコーチらに「日本への出国前96時間以内に検査2回」「入国後の毎日ウイルス検査、行動範囲の制限」を条件に14日間の待機を免除し、初日からの練習を許可すると載っている。移動手段は、公共交通機関を“原則”認めず、関係者専用バスや貸切タクシーの使用のみ、違反で資格はく奪も明記されている。この内容は4月28日に更新され、6月に最終版が発表される予定とのこと。

感染者数の大幅減は見込めず、海外からの変異株が次々と日本国内に広がる一方、一般へのワクチン接種の完了時期は、いまだめどが立っていない。

2021年5月1日の羽田空港第2ターミナル。東京などに3回目の緊急事態宣言が発令された(画像:アフロ)
2021年5月1日の羽田空港第2ターミナル。東京などに3回目の緊急事態宣言が発令された(画像:アフロ)

世界に目を向けると、入国時の強制隔離や行動履歴の追跡など、徹底した水際対策で感染拡大をある程度抑えている中国、ニュージーランド、シンガポール、台湾、香港などの国・地域もあれば、イギリスやイスラエル、アメリカなどはワクチン接種でいち早く先行して感染を抑制しようとしている。ワクチンで出遅れた日本が、五輪関係者も含めた外国人の入国を今後もある程度認めるなら、水際対策のさらなる強化と徹底しかない。

■記事中の情報、データは2021年5月6日現在のものです。

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  • 文・写真Aki Shikama / シカマアキ

    旅行ジャーナリスト&フォトグラファー。飛行機・空港を中心に旅行関連の取材、執筆、撮影などを行う。国内全都道府県、海外約40ヶ国・地域を歴訪。ニコンカレッジ講師。元全国紙記者。

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