トップスターが私だけに!宝塚『はいからさんが通る』VRがすごい
柚香光が甘く囁く…なんだこの初体験!?【ヅカヲタレポート】
「隣に…行ってもいいですか?」
柚香光(ゆずか れい)様が、こう囁く。人気絶頂の宝塚歌劇団の超美形タカラジェンヌであり、 花組トップスターである柚香様が、麗しい軍服姿で階段を一歩一歩降りてくる。そして私に顔を近づけ、瞳を見つめながら告白してくれる…。
「好きですよ、あなたのことが」
ひぃぃぃぃぃぃぃぃっ!!!(白目) これ、モーソーではありません。
宝塚歌劇ミュージカル浪漫『はいからさんが通る』のVRを「体験」しているんです。
銀橋の柚香少尉が背負う大羽根からの風が、自分のところにまで来るような錯覚! 手を伸ばせば、あの美しいお顔に触れることができそうな臨場感!
柚香光尊い…! 宝塚フォーエバー…! サンキューVR…!
宝塚ファンを〇十年やってきましたが、自宅のソファに座りながらこんな夢のような体験ができる日がくるなんて!
一人のヅカファンとして、この尊い映像がどのように生まれたのかが気になって居ても立っても居られず、VRを撮影した講談社の写真部を取材させていただきました。 あ、銀橋っていうのは、舞台前のオーケストラピット(オケピ)と客席の間にある通路のようなステージのことです!
「一生に一度『どセン』で観たい!」ヅカファンの熱望から始まった!
「あの映像の撮影は、少尉を見上げる紅緒(ヒロイン)の目線にしたくて、カメラを(紅緒役の)華優希さんの目線と同じ高さに設定してるんですよ」
と、いきなりとっておきの秘話を語るのは、本公演と、柚香少尉の特典映像を撮影した齋藤浩カメラマン。
何それ、すでに萌えしかないですよー…(涙) 。
「VR映像って、ほんとにリアル。なかでもぼくらのVR撮影は、世界でも最高水準にあると自負しています。3Dで180度のVR映像の撮影が可能なんです」(齋藤カメラマン・以下同)
これまでアイドルの撮影などが中心でしたが、このハイレベルな撮影技術を生かすべく、さらなるコンテンツの開発を考えていたとき。
「一生に一度でいいから、贔屓(推しのタカラジェンヌのこと)を『どセン』 (SS席最前列センターの、最も入手困難な席)で観たいんです! VRならそれが可能なんじゃないですか?」
熱烈な宝塚ファンに、こう迫られたといいます。
「VR映像はただ観るだけではなく『体験』できるもの。DVDやBDの舞台映像は、主演の人を中心にアップになったり、カメラの切り替えがありますが、VRは常に180度の視野で、舞台のどこでも観られるんです。そしてもちろん何度でも観ることができるから、そのつど 『自分の目線』を動かせる。そういう意味では『現実を超えている』と言ってもいいくらいです。宝塚のファンは、同じ公演を何度でも、いろんな角度から楽しみたいと思っているでしょう。宝塚とVRはとても相性がいいんじゃないか、と思いました」
相性抜群。けど、道は遠かった
実際にVRと宝塚の相性は「最高だった」といいます。
「宝塚の舞台は、舞台の端から端まで、演出も美術も全く手を抜かず細部までしっかり作り込まれています。ジェンヌの皆さんも、マイクのついていない役の方々まで常に全力で芝居をしている。VRは舞台全体をそのまま全部撮影しますから、この隙のない完璧な舞台作りが、VRで映像化するにぴったりでした」
いつか宝塚の公演を撮影できたら…! その思いを秘め、VR映像をプレゼンしたり、兵庫の大劇場での公演をテスト撮影させてもらったりと、3年ほどトライを続けたそうです。
そこに『はいからさんが通る』の舞台が、2020年3月の「柚香光さんと華優希さんの新トップコンビ就任お披露目公演」に決まるというニュースが。大和和紀さん原作の漫画は講談社刊。この幸運なご縁から、本公演の撮影実現か…というときに、新型コロナウイルスの感染が拡大。3月に初日を迎えるはずだった大劇場の『はいからさん』も公演中止になりました。
そんななか、劇場に足を運べなくなったファンのために、劇団が初の試みとしてLIVE配信をスタートしたり、グッズのオンラインでの販売に注力するなど、これまでになかった形のファンサービスに挑戦を始めます。そして、VR映像の企画もその一環として一気に実現に進んだそうです。
いよいよ、一発勝負の撮影本番!
10月、ついに迎えた東京宝塚劇場でのミュージカル浪漫『はいからさんが通る』公演。そして撮影本番。撮影は一発勝負のため撮影チームは周到な準備を重ねます。齋藤カメラマンは実際の公演に5回足を運んで、1階の席から、そして2階の席から舞台がどう見えるのかを研究しました。また、各シーンの展開を徹底的に頭に入れました。
プロジェクトが結実する日がいよいよ近づき、スタッフたちのテンションも上がりまく り。舞台の冒頭、中央のセリから柚香さんが後ろ姿で上がってくるシーンで、すでに涙を流すスタッフもいたとか。
撮影当日、持ち込んだカメラとパソコンは3台ずつ。感染拡大防止のためオーケストラの生演奏が中止になっていたオケピと、やはり感染防止のため空席になっていた「どセン」の席にカメラを設置。そうして撮影した貴重なVR映像は、あまりに美しく撮れていたため、感動して泣きながら編集作業をするスタッフもいたとか。
「名シーンのなかでもとくに好きなのは、第二幕で少尉が警察にいる紅緒に会い、アジトを探す一連のシーンですね。手前の少尉や紅緒たちの熱演はもちろん、回る盆(宝塚劇場の名物でもある、床が回転する舞台装置)の上で演技をする他のジェンヌさんたちもVRでしっかり撮影できてるんです。彼女たちのセリフはマイクでは拾われないのに、本当に細やかに一生懸命ご自分の役を演じていて…何度見ても、その姿に感動します」
柚香さんに感じたトップスターのオーラ
冒頭でご紹介した特典映像は、柚香さんのお忙しい公演の合間を縫って撮影されました。 当初予定していた撮影時間をオーバーするくらい、柚香さんが積極的に何度もカメラの前で演じてくださったそうです。柚香さんの顔がカメラに近づいた時の至近距離は10㎝! (ひぃっ!)
「『尊死』という言葉の意味がよくわかりました(笑)」
柚香さんは緊張するカメラマンを気遣って、カメラの仕組みについて質問されるなど、さりげなく現場をリラックスさせる雰囲気を作ってくださったとか。
「柚香さんが現場に登場された瞬間から、時間がゆったりと流れ始めて…あれが、本物のトップのオーラというものなんですね」
柚香さんご本人も、宝塚歌劇専門チャンネル タカラヅカ・スカイ・ステージの番組内でこのVR映像を体験して 「ファンの皆さんが観たいところをご自分で決められる!」「自分の顔が近づいてくる…!」 と感動を語っていました。
そして、このプロジェクトのきっかけとなった宝塚ファンは
「男役群舞の時のジェンヌさんたちの黒燕尾の尻尾が、まさに自分の目の前で美しく翻る臨場感に感激です」
と、声を震わせ、
「特典映像の柚香さんが近づいてくると、畏れ多いのと恥ずかしいのとで、思わず後ずさってしまいました…! 今まで生きてきてよかったです。この企画を実現してくださった関係者全ての皆様に感謝してもしきれません!」
ジェンヌさんと、この美しいVR作品にひれ伏します。
初体験は、絶対ひとりですべし
「今回の撮影に点数をつけるなら90点。改善点も見えてきました。あとは、本格的なヘッドマウントディスプレイがもっと世間一般に広まってほしい。そうすれば私たちが撮影した高画質のVR映像を、もっと多くの方々に体験していただくことができる。もっと沼に落とせる自信があります(笑)。もしご縁があれば、また宝塚の舞台を撮影させていただきたいですね!」(齋藤カメラマン)
「どセン」の席で、少尉と紅緒の壮大な恋物語にキュンキュンするのもよし。フィナーレで銀橋上の柚香さんの大羽根の風を感じるのもよし。特典映像で紅緒の目線になって柚香少尉の囁きにとろけるのもよし。宝塚をまだ一度も観たことがない方は、このVRから初体験してみるもよし…!
現在、宝塚の公式グッズを販売するキャトルレーヴオンラインで発売中のこのVR映像グッズは、特製ポーチにスマホを設置して使うVRグラスが入っており、本公演の一幕と二幕のダイジェス ト、そして冒頭のシーンが体験できる特典映像が観られるQRコードが付いている、という豪華なもの。
もう少しお籠り期間が続きそうななか、宝塚歌劇の魅力を凝縮したミュージカル浪漫『はいからさんが通る』のVR映像を「体験」してみてほしい!
そのときはくれぐれも、お一人で体験することをおススメします。
キュンキュンしすぎる世界に、絶対、ヘンな声が出ちゃうので…!!
追伸:宝塚ファンの祈り
目線に合わせて隅々まで観られる!感涙必至の名場面
【キャトルレーヴオンライン】
VRグラス(オリジナルポーチ付) ※VR映像QRコード付 ¥3850(税込)
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- 取材・文:宮崎七緒