月9復調の兆し?フジの明日を占う『イチケイ』視聴率を徹底分析! | FRIDAYデジタル

月9復調の兆し?フジの明日を占う『イチケイ』視聴率を徹底分析!

各キー曲のドラマはどのように視聴されているのかを分析してみよう。今回はフジテレビ編だ!

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今期の月9『イチケイのカラス』に主演している竹野内豊

フジテレビの竹野内豊主演『イチケイのカラス』が好調だ。

ここまで5話を放送して、世帯視聴率が12.42%(ビデオリサーチ関東地区データ)。テレビ朝日の連続シリーズを除くと、TBS『ドラゴン桜』に次ぐ実績となっている。

フジの月9は、前世紀末から今世紀初頭に栄光の時代があった。

ところがその後、低迷の時代を経て、ここ3年で盛り返している。ただしかつてF1(女性20~34歳)の月9ともてはやされたが、今や中高年で数字を稼ぐようになっている。

コロナ禍で広告収入が低迷する中、同局は「キー特性」と呼ぶ13~49歳をターゲットに掲げている。

しかし看板番組の月9は、逆を行こうとしているように見える。見た目の数字を整えにいくのか、広告収入という実質を狙うのか。

迷走気味のフジドラマを考える

長期低落と反転攻勢

かつてフジ月9は、平成のテレビを象徴する大ヒット枠だった。

男女の恋愛やトレンドを描き、バブル景気で夢を膨らませた若い女性を虜にした。主役は旬なアイドルなど。役柄はいわゆる“カタカナ職業”。そして話題のスポット・ファッション・ライフスタイルなどが描かれ、大ヒットを連打した。

初期の注目作は『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』。

91年の同枠年間平均は21%を超えた。そして93年の『ひとつ屋根の下』と『あすなろ白書』が25%超。平均は23.2に跳ね上がった。

さらに97年、30%前後の『ひとつ屋根の下2』と『ラブジェネレーション』で、年間25%超を達成した。ドラマ枠としては空前絶後の全盛期だった。

ところが勢いは、次第に衰え始める

2002年に初めて15%を切った。09年以降は15%未満が普通となり、16年は遂に一桁という不名誉な記録を出してしまった。

17年秋『民衆の敵』・18年冬『海月姫』の2クール連続6%台が底となった。

その後、18年夏『絶対零度』以降で二桁を回復し、世帯視聴率は回復基調となった。

今年冬の『監察医 朝顔』は平均12%、今期『イチケイのカラス』も5話までの平均が12.4%と、安定した数字を残すようになっている。

月9復調と言えそうだ。

狙いは“キー特性”

ただし以上は世帯視聴率というかつての指標での話

実は民放各局は、コロナ禍などで広告収入が大きく落ち込む中、対策として視聴者のターゲットを若返らせている。高齢者はテレビ広告に影響されて視聴行動を変えることは少ない。逆に若年層は広告効果が大きく、しかも若者をターゲットとする商品・サービスが少なくないからだ。

ビデオリサーチの視聴率調査が、世帯から個人へと指標を変更したことも影響している。

いち早く若年層を狙ってきたのは日本テレビだ。

13~49歳を「コアターゲット」と呼び、バラエティやドラマの作り方を工夫してきた。

TBSは少し前まで「ファミリーコア」と呼び、13~59歳をターゲットにしていた。

既存の番組がやや上の世代を狙ったものが多いためだった。ところが今春から、「新ファミリーコア」と呼び、4~49歳に年齢層を下げてきた

そしてフジテレビは、日テレと同じ年齢層だが、「キー特性」と呼び方を変えている。

これに合わせて、朝のワイドショーを『めざまし8』とし、若年層狙いへと方針転換を進めている。バラエティの出演者も、お笑い芸人の若返りを進めて来た。

ところが月9は、恋愛路線での低迷が長く響いたようだ。

18年夏以降、テレビ視聴者のほぼ半数を占める50歳以上を取り込むことで、世帯視聴率のテコ入れを進めていた。この成功体験から、ドラマ視聴者の若返りを容易に図れないでいる。

今のフジ月9の位置づけ

民放各局の方針が変わる中、今の月9はどんな視聴者に見られているだろうか。
TBS火曜10時と日本テレビ日曜10時半の3ドラマ枠を、去年1月からで比較してみた。

フジ月9は、『絶対零度』『SUITS』『監察医朝顔』『イチケイのカラス』5話まで。

TBS火曜10時は、『恋はつづくよどこまでも』『私の家政夫ナギサさん』『おカネの切れ目が恋のはじまり』『この恋あたためますか』『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』『着飾る恋には理由があって』3話まで。

日テレ日曜10時半は、『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』『美食探偵 明智五郎』『親バカ青春白書』『極主夫道』『君と世界が終わる日に』『ネメシス』4話までだ。

まずビデオリサーチの世帯視聴率では、TBSが11.6%でトップ

フジ月9は10.3%と二桁を維持。日テレの8.6%に大きな差をつけている。月9が安定した数字を保っていることがわかる。

ところが個人視聴率では、3枠の中で最下位になる。家族一緒に見る家庭が少ないようだ。

さらに各局が重視するコアターゲットでも最下位だ。世帯で最下位なのに個人でトップに躍り出る日テレと、月9は対照的なドラマ枠となってしまっている(以下、スイッチ・メディア・ラボのデータから)。

この辺りを男女年層別でみると、事情が詳細にわかる。

月9は男女65歳以上で最も高くなっている。しかも同年齢層無職のいわゆる“年金暮らしの高齢者”で圧倒的にトップ。男女65歳以上で断トツの最下位となる日テレと、構成比率の最も高い高齢者層での違いが決定的だったのである。

いっぽう若年層では状況が逆転する。

FT(女性13~19歳)からF2(女性35~49歳)までは、日テレとTBSが接戦となるが、フジ月9は大きく離されている。女子中高生でも最下位だ。
いっぽうMT(男性13~19歳)からM2(男性35~49歳)まででは、日テレがトップ。月9は相変わらず最下位のままだ。

高齢者に強く、若者に弱い月9という姿は、かつての最盛期と正反対だ。

月9の明日はどっち

フジテレビは春改編に際して広告会社説明会で、次のような宣言をしていた。

「4月改編は、2021年度のフジテレビ・FNS系列局のV字回復の想いを込めた重要なもの」
「キー特性を重視して個人全体もとれる番組作りを目指す」

フジテレビ2020年の広告収入は、コロナ禍の影響が響き13%ほど減収となった。

その劣勢をV字回復させる一手として、キー特性(13~49歳)の個人視聴率を向上させる目標だった。ところが月9『イチケイのカラス』5話までの放送を見る限り、基本方針に合致していない

世帯視聴率は過去1年と比べても大きく上昇している。

しかし寄与したのは、男女50歳以上の中高年。残念ながらキー特性は、世帯視聴率の伸びには届いていないようだ。

もちろん、中高年という大人の心に響くドラマも大切だ。

他のドラマ枠で経営方針を実現していれば問題ないのだが、木曜10時『レンアイ漫画家』は5話までの平均が5.5%と、過去15年でワースト3の体たらく。

キー特性で数字を稼ごうにも、如何せん分母となる視聴者が少なすぎる。

考えてみれば、月9黄金期のF1は、四半世紀以上を経た今は既に中高年の域に達している。

当時の若い女性を熱狂させたフジドラマは、確かに遠い昔のことかも知れない。
それでもドラマの醍醐味は、若者を熱中させて、次の時代へ夢と希望を抱かせること。世帯の数字を整えやすい中高年狙いばかりでなく、若年層を刺激する名作を見せてもらいたいものだ。

奮闘を期待したい。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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