火10ドラマは「幹部が辞職した瞬間」に物語が動き出すフシギ | FRIDAYデジタル

火10ドラマは「幹部が辞職した瞬間」に物語が動き出すフシギ

こんなにいる、辞めちゃった主要な登場人物たち!

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『着飾る恋には理由があって』で葉山祥吾役を演じる向井理
『着飾る恋には理由があって』で葉山祥吾役を演じる向井理

毎週火曜22時放送『着飾る恋には理由があって』(TBS系)が面白い。近年、胸キュン要素が満載でベッタベタな恋愛パターンを展開してきた人気のドラマ放送枠。いつの間にか女性の心の拠り所になっている。

それが今回の作品は第二話が終了した時点で、主演がカップルになるという予想外の展開に突入。思えば、恋の当て馬第一有力候補だった、向井理演じる葉山祥吾は早々に会社の代表取締役を辞任して、消えてしまった。あれ? 回想していくと、この火10、やたら辞職をする会社幹部が多い。それが物語を転換させるカギであることは分かっているけれど、それにしても辞職が目立つではないか。その傾向を改めて振り返ってみたくなった。

転んでもタダでは起きない精神をフル発揮

この数年で幹部でありながら会社を辞める選択肢をした登場人物は、下記の4名だ(ドラマオタクの筆者記憶による)。

■宮本亜希子(演 綾瀬はるか『義母と娘のブルース』2018年)
■浅羽拓実(演 中村倫也『この恋あたためますか』2020年)
■宝来麗子(演 菜々緒『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』2021年)
■葉山祥吾(演 向井理『着飾る恋には理由があって』2021年)

辞職理由は各々に違うけれど、全員に共通しているのは会社を辞めても卑屈になることは一切なく、むしろ辞めたことを自分を輝かせる材料にしている。そして物語を大きく動かすという、いわば相乗効果ももたらしているのだ。

例えば宮本亜希子はバリキャリで部長職だったのにもかかわらず、結婚相手の連れ子に愛しさが溢れてしまい、専業主婦になることを選ぶ。当然のごとく、上層部からは引き止められるものの

「私の娘はべらぼうに可愛いのです!」

と、名言を残して会社を去る。ただ仕事好きの性格は止めることができず、娘の成長を待って、潰れかけたパン屋を人気店にするコンサル業をしていた。もちろん結果は大成功。

浅羽拓実はコンビニチェーンの社長として腕を揮いながら、半ば辞任へ追い込まれる形になった。ただそのおかげで、ヒロインの井上樹木(森七菜)と近づくことになり、彼女のアテンドでコンビニのアルバイトを始めて、現場に立つ意味を知る。そしてその現場でひらめいた新事業にも着手。大きな立場を捨てたことで、拾うものが多々あったというわけだ。それに辞めていなかったら、樹木との恋の進展もスローなままだったと思うので、結果的に辞めて正解。

会社を辞めてなお、輝きを増すビジネスマンたち

唯一「え、別に辞める必要はなかったのでは……?」と思わせたのが、宝来麗子。女性ファッション雑誌『MIYAVI』の編集長の座を下りて、他の編集長を就任させ、雑誌が存続していくことを希望する。ここまでは“立つ鳥跡を濁さず”のごとく、カッコ良かった。

ただ出版社のイチ社員として形態を継続。制服を着用して、備品管理部へ異動していた。それまでの華やかさからの変貌に「地味すぎる」と視聴者はざわついた。

それもそのはず、演じているのはあのスーパーボディの菜々緒である。隠しきれない存在感がダダ漏れになっていて、ドラマ『ショムニ』(フジテレビ系・1998年)で主演していた、江角マキコを彷彿とさせていた。でも辞めたことで、ヒロインの鈴木奈未(上白石萌音)の自分に対する熱意を知ることができたし、最終回では編集職に戻ってパワーアップし始めていたので、辞任は物語の良きポイントとして、好転。

ラストは現在放送中の『着飾る恋には理由があって』で、第一話で早々に代表取締役を退いた葉山祥吾だ。現在の彼の立ち位置は、宝来麗子もかつて退任後にしでかした“行方不明中”。これはまったくの予想ではあるが、そろそろ彼は姿を現してくるはず。向井理が演じているのに、存在が薄いわけがない。そして真柴くるみ(川口春奈)と藤野駿(横浜流星)カップルの仲を、刺激するか、もしくはかき乱すのだろう。火10は恋の当て馬役も豊作だけど、史上最強の立ち位置を魅せてくれるはずと期待が膨らんでいる。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

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