いじめ、不倫、詐欺まで!? 住民が語る「タワマンライフの真実」
ドラマや映画の舞台になることの多いタワーマンション(以下、タワマン)。マンガ誌「BE・LOVE」で連載中のコミック『おちたらおわり』(作・画すえのぶけいこ)も、高級タワマンに住む女性たちの愛憎劇をリアルに描いた作品だ。
いじめ、仲間はずれ、不倫……それらが水面下で繰り広げられる様子は背筋が凍るほど残酷だが、「昼ドラのようなドロドロがクセになる」とファンが急増中だという。
そこで今回は作者のすえのぶけいこ氏と、タワマンに住む3人の女性がガチンコ対談。夢のような「タワマンライフ」、その真実とは?
【対談参加者】
司会:すえのぶけいこ氏
コミック『おちたらおわり』作者。各所タワーマンション(&ママ友関係)を取材中。
タワマン住民①:サヤカさん(仮名、40代前半)
タワマン在住歴10年。家族構成は夫、子1人、犬1匹。夫はマンション全体の理事会長を務める。
タワマン住民②:ミワさん(仮名、40代前半)
タワマン在住歴10年。現在は引っ越して、子2人、母親とともに戸建てに住む。
タワマン住民③:シオリさん(仮名、30代後半)
タワマン在住歴13年。家族構成は夫、子2人。
今回集まってくれたのは、同じタワマンに住む(もしくは住んでいた)仲良し3人組。お子さんの年齢が近いこともあり、ママ友としておのずと仲良くなったという。
彼女たちが住むタワマンは人気の海浜エリアに建つ比較的新しいもので、住民が借りられる予約制のパーティースペースやゲストルームはもちろん、専用の展望大浴場やエステ、ネイルサロン、レストラン、バー、ドッグランまであるそうだ。想像を裏切らず贅を尽くしたつくりで、約1000戸、2500人近くが生活をするひとつの街のようなタワマン。その中で繰り広げられる人間模様とは……?
ーー皆さん、在住歴が同じくらいなんですね。(すえのぶけいこ氏 以下同)
サヤカ:そうなんです、子どもが学校に通い出すタイミングで引っ越してきて。
ミワ:海浜エリアって自然が多くて、歩道が広いので、意外と子育てしやすいんですよね。
シオリ:近くの学校はほぼ全員同じマンションから通ってきているので、子ども同士、親同士が仲良くなりやすい環境なんです。
ーーよくタワマンもので描かれる“マウンティング”は本当にあるんでしょうか?
ミワ:ないですね。エレベーターヒエラルキーも特に。お互いにそこまで興味ないですから(笑)。
サヤカ:ドッグランで会うワンちゃんがブランドものの首輪をしていると驚きはしますが、飼い主さんたちは意外と普通ですよ。
シオリ:敷地内で遊ぶ住人の子どもたちは最新のスマホやゲームを持っている率が高くて、「ウチの子も持っていないと差がついちゃうかな」と心配したんですが、心配する大人よりよっぽど本人たちの方が大人で。「あの子の家はお金持ちだし、うちは普通の家だし。そういうもんでしょ」みたいに達観しています。
ーーそうなんですね。そもそもこのマンションに住むことを決めた理由は?
サヤカ:他のタワマンも見たんですけど、ここが一番設備が揃っていて。
シオリ:私と同じ、働くママが多いのもちょうどいいなって思いました。
ミワ:他と比べて、一番落ち着いているよね。
ーータワマンって、どこも同じイメージに思われがちですが…
サヤカ:全然違います。同じタワマンでも高齢者が住みやすい住環境を売りにしたもの、子育てしやすいもの、設備にお金をかけているものなど様々です。
ミワ:それによって住む人たちの層も変わるよね。
シオリ:先住民がいるかいないかで、学校の雰囲気まで変わるし。
ーーせ、先住民!?
シオリ:はい、私たちが住んでいるエリアは最近開発されたので、いわゆる“地元の人”がいないんです。だから同じくらいの時期に引っ越してきたファミリーばかり。
サヤカ:先住民がいるところは、毛色が全然違うから難しいって。
ミワ:そう、たとえば都心に近くて人気のエリアXは、元々そんなに治安がいい場所ではなかったから、荒っぽい先住民のお子さんと同じクラスになると大変だそうです。ママたちの雰囲気も全然違うってよ。
ーーなるほど、タワマンに個性や地域差が結構あるんですね。
サヤカ:そうなんです、私たちが住んでいるエリアは平和そのものですが、Xエリアのほうはいわゆるタワマンあるあるが横行していて、かなりダークみたいですよ。
ミワ:いじめとか不倫とかそういう怖い話ね。
シオリ:今回のお話をいただいて、「私たちのタワマンにはそういうネタないね」って話していたんです。きっとXの人たちなら、盛りだくさんだったんだと思うんですけどね。
ーーでは、不倫とかいじめみたいなものはないと?
シオリ:ない…かな。どう?
ミワ:私、眠れなかった日に、夜中に展望大浴場に行ったのね。その時、○○さんの旦那さんと知らない女の人が、大浴場から手繋いで出てきたのを見たことある。
シオリ:何それ? 知らない!
ミワ:今、初めて話すから(笑)。奥さんが里帰り出産中って知っていたから「あれ?」って思って。しかも旦那さん、自宅に浮気相手を連れ込んだ前科があるとか。あれは絶対クロだと思う。
サヤカ:女の人、まさか住民じゃないよね?
ミワ:違うと思うけど、たとえ知ってたとしても言えないよね。もちろん○○さんの奥さんにも言えないよ。
シオリ:それはそうだよね。私もマンション内を歩いてたらナンパされたことあったけど、あれは遊びに来た外部の人なんだろうな。
ーー外部の人というのは?
シオリ:パーティールームは予約すれば住民なら誰でも借りられるので、そこに外部の人を招待しているんだと思います。そういう人は何のしがらみもないから、平気でナンパするんでしょうね。
サヤカ:ああ、そういえば、私もバーでナンパされたことある。
ーー一歩間違ったら、不倫し放題じゃないですか!
ミワ:あはは、そういえばそうかも。このご時世、いちいち「おたくの奥さん浮気してますよ」なんて密告する人もいないので、やりようによってはいくらでもうまくやれるでしょうね。
ミワ:私はゲストルームのほうで、もう少し大人な……肉体的な方のパーティーが行われていて、金銭授受が問題になったって聞いたことある。
サヤカ:共有施設で金銭授受や勧誘行為などは一切禁止になっているからね。それはマズイな。
ーー内容よりも、規約違反が問題なんですね。
サヤカ:最近だとタワマンを借りた人が、自称“実業家”みたいな人たちにスペースを又貸ししたり、大浴場みたいな共有スペースで話しかけて仲良くなるフリをして投資を持ちかけるみたいなことが起きているみたいです。
住民同士だと警戒心なく自分の仕事などプライベートなことを話すので、それを逆手にとった行為ですよね。そういう人はもちろん規約違反で強制退去になるんですが、タワマン理事会同士が繋がっていないので情報共有もできず、近くの高級タワマンを転々としているとか。
シオリ:怖い! ダンナにも気をつけるよう言っておこう。
サヤカ:しかも同じエリアに建つタワマン理事会長が集まる“合同理事会”でも、「××の理事会長とは意見が合わないから、あそこは入れない」とちょっとしたいじめのようなことが起きていたり。何気にこの問題は根深いです。
ーー漫画では女性同士の水面下での争いを描いていますが、実はいろいろなことが起きているんですね。そういえば、ミワさんは戸建てにお引越しされたとか。理由は何かあったんですか?
ミワ:うちは元気のいい男の子2人だったので、騒音問題になる前に引っ越しました。戸建てなら、ドンドンやっても誰にも怒られないですから。
シオリ:騒音問題も厄介だよね。常に注意喚起する貼り紙が出てる。
サヤカ:うちのマンション住民だけが見られるネット掲示板見たことある? 「ノイローゼになりました」「不眠症で寝られません」って、騒音を出しているであろう相手を名指しで文句言っている人いるよ。
ーーネット掲示板があるんですね。
サヤカ:ほとんどの住民が見ていないと思いますが、あるにはあります。大抵、夜遅くまで足音がうるさいとか、換気ダクトを通じてタバコの煙が来るとか、共同住宅ゆえの文句ばかりです。
ミワ:パーティールームとかの予約ができるサイトでしょ? そんな掲示板があるなんて知らなかった。今度見てみよう。
ーー主人公の家の騒音や、共有スペースでママ友と揉めてしまったことが定例理事会で問題になるシーンがあるんです。
シオリ:ああ、それはリアルですね。でも公共の場でトラブルは気をつけないと……。
ミワ:評判が落ちる=資産価値が下がることに繋がるからね。
サヤカ:正直、今回の話をするのはかなり迷いました。だから絶対うちのマンションだとバレないようにしてくださいね。身内の恥を晒すことになるというか……とにかくマンションの評判を落とすことが命取りになりかねないんです。
老若男女、ハイクラスな人たちが住むタワマン。事実はフィクションより平和と見るか、さらにえげつないと見るか。作家心をくすぐる、かなり面白い題材であることは確かだ。
そしていつか「憧れのタワマン住民」になる前に、ぜひこのインタビューを思い出してほしい。
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- 取材・文:周防美佳