紀州のドンファン怪死事件 須藤早貴容疑者「逮捕後の5つの謎」 | FRIDAYデジタル

紀州のドンファン怪死事件 須藤早貴容疑者「逮捕後の5つの謎」

密着取材をしてきた本誌だけが書ける深層レポート

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「万が一にも殺したなら自首しなければいけないよ」

事件から2日後の夕方、本誌記者が和歌山県田辺市内のドン・ファンの自宅リビングでそう問いかけると、彼女は、

「私はやってないから」

と、答えた。携帯をイジりながら口元には笑み。その表情に動揺の色はまったく見られなかった――。

独占取材に応じる早貴容疑者。事件当日の様子を詳しく明かしたうえで、「絶対に殺していない」と繰り返し語った
独占取材に応じる早貴容疑者。事件当日の様子を詳しく明かしたうえで、「絶対に殺していない」と繰り返し語った

’21年4月28日午前5時過ぎ、「紀州のドン・ファン」こと資産家・野崎幸助氏(享年77)を’18年5月24日に殺害した容疑で、須藤早貴容疑者(25)が逮捕された。だが、これですんなり事件解決というわけではなさそうだ。

「5月にドバイへ高飛びするとの情報もあり緊急逮捕に踏み切ったようですが、いまだ決定的な証拠はありません。わかっているのは、キッチンの床と掃除機から覚醒剤の反応が出たこと。何らかの方法で野崎氏に覚醒剤を飲ませ、キッチンにこぼれた粉を掃除機で掃除した。それができるのは死亡推定時刻前後に家にいた早貴容疑者しかいない、というのが県警のストーリー。

しかし、これはあくまで状況証拠に過ぎません。今回の逮捕に際して警察と検察はガッチリとタッグを組んでいますから、起訴は間違いない。ただそれでも、裁判で有罪に持ち込めるかは読めません」(全国紙社会部和歌山担当記者)

そうなると、県警としてはどうしても早貴容疑者の自供が欲しいところだ。しかし、彼女がそう簡単に口を割るとは思えない。本誌は事件直後から何度も早貴容疑者に接触し、話を聞いてきた。幾度も「本当に犯人ではないのか」と尋ねたが、彼女は眉一つ動かさず「殺してません」と答えてきた。

早貴容疑者は大の肉好きで、事件後、野崎氏の遺体が自宅に戻ってきたときには、棺桶の横で自らサイコロステーキを焼いて食べていたこともある。早貴容疑者が犯人だとすれば、相当な〝鋼のメンタル〟の持ち主である。

自供なくして有罪へと持ち込むためには、残されたいくつかの謎を解明しなければならない。

謎① 犯行の動機

考えられるのは遺産しかない。しかし、野崎氏は喜寿を迎えた高齢者で脳梗塞も2回経験していただけに、わざわざ殺害する必要があったのか。実際、本誌の取材に早貴容疑者もこのように語っていた。

「社長(野崎氏)と初めて会ったのは’17年末。知人の紹介でした。社長からは『結婚してくれたら月に100万円を支払う』と言われ、実際にもらっていました。私としては正直、『美味しい話だな』と思い、結婚をしました。月100万円がもらえなくなるのに、殺すわけないでしょう?」

もしもそこに理由があるのだとしたら――離婚の可能性が浮上したからに他ならない。

野崎氏の放蕩(ほうとう)ぶりは早貴容疑者との結婚後も変わらなかった。「ミス・ワールド」というあだ名の愛人にはまり、毎日電話をかけまくっていたのだ。本誌記者にも「早く早貴と離婚してミス・ワールドと結婚したい」とこぼしていた。早貴容疑者はそれを察知したのかもしれない。

実際、ドン・ファンは亡くなる少し前に早貴容疑者に離婚届を突きつけたこともある。早貴容疑者はそれを夫の目の前でビリビリに破き、拒否したのだった。

謎② 覚醒剤の入手ルート

早貴容疑者が野崎氏と結婚したのは、’18年2月8日。当時、新宿区内のマンションで暮らしていた彼女はいろいろと理由をつけてなかなか和歌山に来ず、同年4月になってようやくドン・ファンとの結婚生活が始まった。当然、覚醒剤を入手したのもそれ以降ということになる。

早貴容疑者は札幌出身で、市内の高校から美容専門学校に進学。その後は東京で暮らしていたため、和歌山に知り合いはいなかった。

早貴容疑者がどうやって覚醒剤を入手したのかは判然としない。しかし、いつ頃から動き出していたかは予想がつく。彼女は’18年4月に田辺市に来ると、すぐに自動車教習所に通い始めた。免許取得は4月22日。その後は、夫の会社の社用車を乗り回し、たびたび一人で外出していた。

そして、野崎氏が亡くなる前、5月11日に開かれた会社の飲み会での早貴容疑者の様子にも違和感があった。食事前に1時間ほど電話のため離席。いつもはずっと携帯をイジりながら仏頂面をしている彼女だが、戻ってくるとたいへんな上機嫌で、野崎氏の冗談にも大口を開けて笑っていたのだ。

謎③ どうやって覚醒剤を飲ませたのか

野崎氏が亡くなった’18年5月24日、家にいたのは早貴容疑者と家政婦の木下純代さんだけだった。遺体が発見された21時半には死後硬直が始まっていたというから、18〜19時には亡くなっていたことになる。

木下さんは夕方から私用で出かけ、帰ってきたのは19時過ぎ。ここに空白の時間がある。では、性交渉中に飲ませたのか。しかし、早貴容疑者は事件後、本誌の取材にこんな仰天告白をしていた。

「私が出会った頃にはもう、社長は機能しなくなっていたんです。一度だけ『抜いてほしい』と頼まれたので手でしたことがあるんですが、やっぱりダメで。『社長、歳だよ』と言ったら、『そうか』と」

では、疑われるなら夕食時だろう。早貴容疑者は18時頃まで2階の寝室で夫と相撲中継を見た後、1階で夕食を摂った。野崎氏は「食欲がない」と語り、自分で冷蔵庫からビール瓶を出し、コップに注いで飲んでいたと早貴容疑者は証言している。家政婦の木下さんが振り返る。

「社長が自分で飲み終わったビール瓶を片付けることはないし、早貴ちゃんも絶対に片付けない。それは社長の家で掃除をしていた私が一番知っています。それなのに、社長が死んだあの日だけは、ビール瓶がテーブルの上から片付けられていたんです。不思議だな、と思ったのを覚えています」

謎④ なぜ取材に応じたのか

事件の本筋とは少し外れるが、気になる謎である。もし犯人なのだとすれば、なぜ早貴容疑者は何度も本誌の取材に応じたのか。目立つことになり、話の辻褄(つじつま)が合わなくなるリスクもある。

彼女は「潔白を証明するため」と語っていたが、理由はそれだけではなかった。家政婦の証言の通り、彼女はたいへんズボラな性格だ。田辺市のドン・ファンの自宅では散らかし放題。ときには脱いだパンティすらも床に放置していた。洗濯も一切しない。本誌記者は住んでいた新宿のマンションの部屋を訪ねたこともあるが、至るところにゴミ袋が散乱する文字通りの「汚部屋」だった。

そんな早貴容疑者だが、美容には人一倍気を使っていた。大好きなのはネイルサロンやマツエク。しかし、事件後は連日マスコミが押し寄せ、外出もままならない。そこで、彼女が本誌に突きつけてきた条件が、ネイルサロンやマツエクへの「送迎」だった。

謎⑤ 遺産の行方

ドン・ファンの莫大な遺産は現金預金・株・不動産・美術品や貴金属を合わせると、30億円は下らない。

’18年夏には野崎氏が書いたとされる「遺言書」が見つかり、そこには〈全財産を田辺市に寄付する〉と書かれていた。この遺言書の真偽については、野崎氏の兄弟と田辺市が裁判で争っている真っ最中だ。ただ、遺言書が本物であれ偽物であれ、妻である早貴容疑者には10億円以上の遺産が入る予定だ。

殺人容疑での逮捕によって、遺産はどうなるのか。相続に詳しい土肥衆弁護士が解説する。

「有罪判決が確定するまでは、須藤容疑者には相続人としての権利があります。もし有罪が確定する前に『遺言書』を巡る裁判が終わり、相続手続きが済めば、早貴容疑者は遺産を受け取れるということです。しかし民法では、被相続人を故意に殺害して刑に処せられた場合などには、相続人になることができないとする『相続欠格』という制度を設けています。つまり、今後有罪判決が下った場合は、早貴容疑者は田辺市もしくは遺族に遺産を返還しなければなりません」

今後も早貴容疑者が否認を貫き、裁判でも無罪を主張し続けるのは間違いない。警察は謎を解明し、事件を完全解決できるか。

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『FRIDAY』2021年5月21日号より

  • PHOTO小松寛之(1・5枚目)吉田 隆 加藤 慶(6枚目)

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