「視聴率分析」で分かった”好調テレ朝ドラマ”のジレンマ | FRIDAYデジタル

「視聴率分析」で分かった”好調テレ朝ドラマ”のジレンマ

各キー曲のドラマはどのように視聴されているのかを分析してみよう。フジテレビ編に続き今回はテレビ朝日編だ!

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テレビ朝日のドラマ『警視庁・捜査一課長』に主演する内藤剛志(右・写真は2019年に愛知県警中村署の一日警察署長を務めたときのもの)

テレビ朝日のGP帯3ドラマが今期も好調だ。

ここまでの平均世帯視聴率では、井ノ原快彦主演『特捜9』が13.2%、内藤剛志主演『警視庁・捜査一課長』12.1%、玉木宏主演『桜の塔』10.7%(ビデオリサーチ関東地区)。いずれも今期ベスト5に入っている。

ただし以上は世帯の話で、個人視聴率など別の指標では異なる風景が見えてくる。

例えば「65歳以上無職」の個人視聴率では他を寄せ付けないが、「女子中高生」では断トツの最下層となる。つまり視聴者層が極端に偏っているのだ。

コロナ禍で広告収入が激減する中、各局は視聴者のターゲットを若年層にシフトしている。大きく出遅れた感が否めないテレ朝ドラマのジレンマを考える。

強さの秘訣は“固定化”と“シリーズ化”

GP帯(夜7~11時)ドラマを、局別に平均世帯視聴率を出すと、テレ朝の独走ぶりが目立つ。

過去5年ほどを振り返ると、16年春と20年春夏にTBSに負けた以外は全クールでテレ朝が首位だった。16年春は松本潤主演『99.9-刑事専門弁護士-』が平均で17.2%、コロナ禍でドラマ本数が減った20年の春夏は2クールを合算したが、堺雅人『半沢直樹』が24.7%を稼いだために、テレ朝はTBSの後塵を拝した。

ただし唯一平均が一桁となった16年夏を除き、テレ朝の他クールは全て二桁。
全期間の平均値では、フジ8.1%・日テレ9.1%・TBS10.7%に対して、テレ朝は12.9%となる。揺るぎない独走態勢と言えよう。

実はテレ朝ドラマには、勝利の方程式がある。

まず枠の固定化。水曜夜9時は「刑事ドラマ」枠、木曜夜8時は「木曜ミステリー」枠、木曜夜9時の「木曜ドラマ」はジャンル自由となっている。ただし「木曜ドラマ」も、今期が『桜の塔』であるように刑事ドラマが大半で、他に『ドクターX』など数字が獲れるシリーズものが多い。

2番目の方程式は、そのシリーズ化

開局60周年だった2019年に1年間放送した『科捜研の女』が典型だが、1999年に始まり既にseason20を数えた。

2000年スタートの『相棒』はseason19。今期の『特捜9』も、06年に始まった『警視庁捜査一課9係』がseason3まで放送され、『新・警視庁捜査一課9係』でseason12まで続き、その後継『特捜9』でseason4となっている。全体で19クールに達する。今期のもう一つ『警視庁・捜査一課長』もseason5を数える。
つまり同局がGP帯で放送するドラマの大半が、“固定化”と“シリーズ化”なのである。

そのメリットは幾つかある。

まず大枠が決まっているので、若手のシナリオライターや監督に挑戦させる余地がある。質を保ちつつ制作者・スタッフの育成・新陳代謝の促進が容易で、結果として長くヒットするという考え方だ。

次に視聴率対策。

シリーズではあるが、1話完結に徹している点がミソ。都合がつかず途中の回を見そびれた人も、その後から戻って見続けやすくしてある。 実際にクール中の数字は、極端に上昇しないが落ちることもない。

3番目は第2シーズン以降の初回視聴率が高くなる点。

既にドラマ自体の認知度は高いので、再び立ち上げる際の宣伝が楽だ。特にテレ朝の場合は、平日午後にドラマの再放送枠が3時間もある。新シリーズの放送開始直前に旧シリーズを流せば、そのまま新シリーズの宣伝になるというメリットもある。

弱点は“広告主ニーズ”との乖離

以上のようなシステムで世帯視聴率では盤石なテレ朝ドラマ。

ところが“広告主ニーズ”という視点でみると、強さがそのまま反転して弱点となる。視聴者層が中高年に偏り、多くのスポンサーが見て欲しい若者が極端に少ないからだ。

視聴者が多いGP帯ドラマを各局別平均視聴率にしてみよう。

まず世帯視聴率はテレ朝ドラマが断トツだったが、個人では序列はそのままで他局との差が縮まる。実は視聴世帯あたりの一緒に見ている人の数で、テレ朝が一番少ないからこうなる。

男女65歳以上の視聴率で同局が突出しているし、65歳以上無職でより際立つ。つまり「老夫婦のみ」あるいは「独居老人」の視聴率が圧倒的に高いのである。

逆に男女T層から2層(13~49歳)では、テレ朝の視聴率が一番低い

女子中高生でも同様だが、親子一緒に見ているケースが少ないことを意味する。

実は今春の番組改定に際し、多くの局は若年層を獲得する姿勢を広告主にアピールしていた。

日テレは2020年の年間視聴率で、個人10年連続・コアターゲット(男女13~49歳)8年連続三冠を前面に出していた。

フジテレビ「キー特性を重視して個人全体もとれる番組作りを目指す」とした。「キー特性」とは、日テレと同じように(男女13~49歳)を指す。

TBS「より多くの家族に届く番組を」とした。従来は「ファミリーコア」(男女13~59歳)をターゲットとしていたが、今春から「新ファミリーコア」(男女4~49歳)と年齢層を下げてきた

ところがテレ朝だけは、「ファミリーで安心してみてもらえるラインナップ」とはしたものの、ターゲット年齢を明示しなかった。

中高年に偏った番組が少なくないからだが、出遅れ感が否めないと言わざるを得ない。

保険から冒険へ

テレ朝のGP帯3ドラマの視聴者層を見ても、課題が見えてくる。

いずれも似たり寄ったりの視聴者構成だ。世帯視聴率は高いが高齢者に支えられた数字で、若年層には極端に弱い。

広告主から見ると、高齢者はテレビ広告に影響されて視聴行動を変えないのであまり有り難くない。逆に広告効果が大きくターゲットとする商品・サービスがあるので、もっと若年層に見られるドラマを求める。

他局では、スポンサーのニーズを満たすドラマが散見される。

世帯視聴率が高いTBS『ドラゴン桜』は、2~3-層(男女35~64歳)に支えられているし、若者もしっかり確保している。

世帯で2~4%低い日テレ『恋はDeepに』も、T~2層(男女13~49歳)でテレ朝3ドラマに勝っている。特に「女子中高生」で比べると、3~5倍の差となる。

テレビ局では視聴率を保つために、番組提案時に「保険」を求めることが多い。
番組内容や出演者で数字を担保することが一般的だが、テレ朝の“固定化”と“シリーズ化”は究極の「保険」だ。かくして中高年の数字をガッチリおさえている。

ただし新規性がなくマンネリ感が漂うドラマは、若年層に見てもらえない。

やはり「保険」ばかりを求めず、「冒険」をしてこそ若者に振り向かれ、結果として広告主に評価される。

特にコロナ禍で時代は大きく転換しようとしている。

十年一日の如く同じようなドラマ制作に走る姿勢は、見直す必要があろう。少なくともジャンル自由枠の木曜夜9時で、刑事ものや医療ものでない斬新なテーマで、若年層を振り向かせて欲しい。

ぜひ渾身の新作を期待したい。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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