高級食パンもいいけど… 真面目な食パン売る町のパン屋さんの本音 | FRIDAYデジタル

高級食パンもいいけど… 真面目な食パン売る町のパン屋さんの本音

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店の“顔”「食パン」が売れなくなって…存続危機のお店も

ずっと隠してきましたが、猫田はパン好きです。しかも「街の普通のパン屋」が大好きです。なぜ公表しないかっつうと、だいたい“パン女子”の好きな店ってこじゃれたブーランジェリー(単にフランス語でパン屋です)とか対面販売の店(自分で勝手に取れない)が多いので、話が合わない気がしまして…。あ、決してディスっているわけではありませんよ。方向性の違いです。

ともあれ私は知らないパン屋があると、家にもパンがあるにもかかわらず「追いパン」してしまいます。3軒見つけたら3軒ハシゴします。パンは食べるよりも買うことに意義があるんですよ!  あ、食べきれなくてもちゃんと冷凍して消費してます。

で、依然ブームが続く「高級食パン」。生クリームやハチミツを入れた、1本1000円ぐらいのアレです。元祖行列店からチェーン系、大手ベーカリーの高級食パン専門店まで林立し、都会に行くと異なる高級食パン屋が数軒挟んで並んでいる過密地帯も。街を歩いているとだいたい1人は高級食パン持ってますよね。551の豚まんかよっ! 高いから旨いかと思いきや、「別に普通…」ってこともしばしば。

もちろん高級食パンも、美味しいのは美味しいよ!

そうなると「むしろ、ひたむきにやってる街のパン屋の食パンがやっぱり旨いんじゃね? 安いし」という結論に行き着くわけですよ。というわけで今回は、食パンというものに原点回帰して考察記事を書いてみました(そこまで社会的な内容ではありませんが)。ちなみに、「街の普通のパン屋さん」について厳格に定義しているわけではありませんが、個人経営で、できれば朝から開いていて、地域の人が日常的に買いに行けるようなお店です。

製粉会社はどう思っているのか

パンが好きなので製粉会社も好きです。最もリスペクトしているのが北海道にある製粉会社のA社。道産小麦のパイオニア的存在で、千葉県『ツオップ』、神戸『サ・マーシュ』、大阪『パンデュース』など有名店に道産小麦を卸しまくっている業界の名門です。そんなA社営業部のYさんに昨今の高級食パンブームについて聞いてみました。本当は社名と名前を出したかったのですが、いろいろコンプラ的に抵触するということで匿名に…。

猫:そもそも高級食パンってなんすか。単に「高い=旨い」って刷り込みを利用して法外な価格付けてるだけじゃないすか。あと生クリームとハチミツしこたま使って「甘い=旨い」っていう戦時中みたいな価値基準でウケてるだけじゃ。

Yさん:コラコラ猫田さん、のっけから業界敵に回しちゃダメですよ。弊社は高級食パン専門店様とはほとんどお付き合いがないのですが、大体の高級食パンが生クリームを入れたリッチな味わいの生食パンですね。でもバターや水にこだわったり、国産小麦を使用したり、原材料も良いものを使っているかと。

猫:待てよ…。生食パンの「生」って生クリームの「生」?

Y:それもあるかもしれませんが、「生で食べられる」、つまり焼かなくても耳まで美味しくいただけるパンでしょうね。他にも、「生どら焼き」「生大福」「生ドーナツ」「生カステラ」など「生」が流行りましたね。

猫:確かに…。でもそっちの「生」は生クリームの「生」しかないでしょうね。だってドーナツ生じゃ食えないし!

ブームの火付け役は「セブン-イレブン」!?

Yさん:ものすごく論点がずれてしまったので本題に戻りますねー。一般的に高級食パンは2013年に開業した大阪の『乃が美』、銀座の『セントル ザ・ベーカリー』が走りとされていますが、実はセブン−イレブンの「金の食パン」がブームの先駆けでした。従来のコンビニ食パンの概念を変えようと、1斤6枚入り250円というやや高価格で発売されたパンです。その後、ベーカリー以外の企業も高級食パン専門店を出すなど、異業種参入も多くみられます。

猫:乗っかっちゃってんなー。パン儲かるんじゃね? 的な。

Yさん:相変わらず人聞き悪いですね〜。確かに、パンは生菓子と違って誰でも好き嫌いなく食べられるし、冷凍もできるし、お土産にちょうど良い商材です。パッケージもオシャレにすればお土産にぴったり、ということで。いいとこに目ぇ付けたな〜って思います。

バターと生クリームたっぷりの高級食パン、包丁も「今切ったの、本当にパン?」って言いそうなぐらい刃面がオイリーになっていました

猫:ぶっちゃけ、普通の食パンなのに「高級」と謳って高額で売っているところもあるのでは。

Yさん:中にはあるかもしれませんね(笑)。

猫:(おお、けっこう正直!)

Yさん:でも高いと言っても2斤で800円〜1000円程度。普通の食パンが1斤300円程度と考えたらそこまで手が出ないというわけでもないですよ。

猫:はっ、ホンマや…。じゃあいいか!

街のパン屋さんの食パンが売れなくなっている… 

Y:(引っ込み早えな!)でも正直、私もそういう高級食パンより街のパン屋さんの普通の食パンの方が好きです(笑)。しかし、高級食パンに押されて、街のパン屋さんの食パンが売れなくなってしまっているのも事実です。最初はこんなに長くブームが続くと思っていなかったのですが、手頃な価格帯の食パン専門店も出てきたりして。

猫:えー! 売れなくなってる! みんな買えよ!

こちらは北海道4.0牛乳を100%使用した熟成生食パン。1本1000円です

Yさん:食パンって、店の顔なんですよ。お店が一番売りたいし売れるのも食パン。だから材料や配合もそうそう変えるものではなかったのですが、ここ数年はよくご相談を受けます。「もっとモチモチさせたい」「小麦の風味を出したい」など表現されたい味に合わせて提案しています。昔は良い食パンを作るならカナダ産小麦、が定番でしたが、北海道産はどんどん品質が向上していて、タンパクが多くもっちり焼ける「春よ恋」、吸水性の高い「キタノカオリ」、秋蒔きで大量生産に向いた「ゆめちから」など、パン向きの小麦が増えています。

猫:食パンは店の顔! 名言ですね!

Yさん:(そこかよ…)そうですね、ですから今、パン屋さんの間で「自分の店の食パンを見直そう!」という動きが広まっています。

猫:食パンルネッサンスっつうわけですね!それは応援したいですね!

延々とパン談義を繰り広げていても読者が飽きると思うので、ここで、猫田セレクトのパン屋さんの美味しい食パンをご紹介します。お取り寄せできる店もありますので、遠方とかコロナとか気にせずご購入を!

猫田セレクト・食パンが旨い街のパン屋@関西

■■普通の食パンがすでに高級食パンレベルの「グロワール」(大阪)

猫田イチオシは、「グロワール」(大阪)。商店街のメイン通りからも外れた場所なんですが、ひっきりなしにお客さんが訪れます

大阪市旭区の千林商店街という激マニアックなエリアにある「グロワール」は、創業から60年のザッツ街パン屋。パンの種類は80〜100種類、食パンに至っては、「特上」「プレミアム」「プレミアムくるみ」「金ごま」「みなみのかおり」「クルミ」「胚芽玄米」と6種類ものバリエーションを誇ります。

店主の一楽虎光さん。落語家としか思えない名前!

小麦は北海道産、九州産、カナダ産など特性を活かして使い分け、自家製の天然酵母で長時間熟成させるなどものっすごい手間をかけて焼いています。なのに安い。特上食パンは1斤238円、一番高い金ごま食パンでも298円です。

特上食パンは「何の特徴もない普通のパンです!」と虎光さん。でも食べてみたら、いやいや何を言う! ってぐらい旨かった。ニクいねえ

■なんと高級食パンと同じクオリティのパンが1斤260円

プレミアム食パン。持つと指の形が残るぐらいしっとりした触感です

中でもスゴいのが「プレミアム食パン」。生クリームとハチミツを使ったリッチな食パンです。…あれ?それって今流行りの高級生食パンと同じ材料ってこと?

「そうなんです、ウチでは20年以上前から高級食パンと同じものを、普通の食パンとして売ってるんです」

えー!しかも1斤260円だよ!なんと良心的な。こちらも食べてみたら某高級食パンとまったく同じレベルのクリーミー感、しっとり感、ミルキー感でした。思わず生でムシャムシャ1枚食べちゃった。

プレミアム食パン、耳までバターの味がして香ばしい

■ブームに乗っかってない高級食パンも20年前から!

パン・ド・グロワールは角食よりやや小ぶり。でもずっしり重い

さらにスゴいのが「パン・ド・グロワール」。1.5斤590円とややお高めですが、コチラは天然酵母パネトーネ種を用いて長時間発酵させ、発酵バターもたっっっぷり入った高級デニッシュ食パン。パネトーネ種を使うことで保水性が上がり、小麦の旨みが引き出されるうえに日持ちも長くなるんですって!

バターと生地を何層にも重ねて焼いてあり、トーストしたら「お菓子かよ!」ってぐらい豊かな香りと甘みが広がります

「プレミアムくるみ食パン」(1斤260円)はローストしたクルミがゴロッゴロ入っていて、香ばしさと生地のほの甘さのマッチングたるや!これが猫田ベストでした。ちなみに「みなみのかおり」は、虎光さん出身の熊本産小麦「ミナミノカオリ」と北海道産小麦を使っているということでこのネーミングなんだそうな。郷土愛やのー。

嬉しいことに、グロワールのパンはお店のホームページから購入できるんですよ。いよっ虎光! 座布団3枚!

【グロワール】大阪市旭区大宮 3-18-21

■■耳の主張強め!中はもっちりヤマダベーカリー」(京都) 

お次はパンの聖地・京都ですよ。昭和22年創業という老舗「ヤマダベーカリー」の食パンも絶品。高温で一気に焼き上げているので、焼かなくても耳がカリッとしているんですよ。6種あり、普通の食パン「ハイソフト」(1斤313円)もあっさりして食べやすいんですが、「ソフトフレッシュ」はそれに最高級の生クリームやバターを加えたリッチバージョン。見ただけで「お前、モッチモチだろ!」と言いたくなるきめ細やかな質感です。北白川という電車で行きづらいエリアにあってかつてはバスで行くのも一苦労だったんですが、2020年からネット通販を開始。やったあ!

【ヤマダベーカリー】 京都市左京区浄土寺下馬場町87

■■徹夜明けの食パン「まるき製パン所」(京都) 

同じく京都の大宮松原というこれも電車アクセス微妙な「まるき製パン所」。昭和22年創業とヤマダベーカリーと同期です。その場で具を挟んでくれる多種のコッペパンが脚光を浴びていますが、ここでは食パンをまず買うべし。朝6時30分から営業しているのも良いパン屋の証です。余談ですが猫田が京都に住んでいた時、仕事で徹夜して早朝に帰宅途中、まるき製パンの前を通ったら食パンがちょうど焼きあがったところ。あんまりにも良い匂いだったので購入し、あんまりにも旨くて家に着くまでに1斤食っちまった…という素敵な思い出もあります。残念ながらこちらのパン、通販はしていません。私ですら今すぐ食べたい。

【まるき製パン所】 京都市下京区松原通猪熊西入北門前町740

あー、食パン愛って止まりませんねえ。手前味噌じゃないんですが関西の方が旨い食パンが多い気がします。あと価格が安い。もちろん全国どこでも美味しいパン屋はあるので、高級勢力に押され気味な地元のパン屋で購入して、買い支えていこうじゃありませんか!

  • 取材・文・写真猫田しげる

    1979年生まれ。タウン誌、旅行本、レシピ本などの編集・ライター業に従事。現在はウェブライターとしてデカ盛りから伝統工芸まで幅広い分野で執筆。弱いのに酒好きで、「酒は歩きながら飲むのが一番旨い」が人生訓。

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