ドラマが動かす現実!『珈琲いかがでしょう』でコーヒー購入者続出 | FRIDAYデジタル

ドラマが動かす現実!『珈琲いかがでしょう』でコーヒー購入者続出

テレビ東京の新たな挑戦に大注目!

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テレビ東京の深夜ドラマ『珈琲いかがでしょう』に主演する中村倫也

テレビ東京が新たなドラマ枠の第1弾で、画期的な展開を見せている。

中村倫也主演『珈琲いかがでしょう』(毎週月曜・23:6〜)だ。

ビデオリサーチによる個人視聴率は1%前後と、決して高くない。それでもタイムシフトで見る人が3倍以上と、空前の快進撃だ。

しかも「コーヒーを淹れるシーンに癒やされる」などの声が多いが、放送後にコーヒーを購入する視聴者が続出している。

テレ東が得意とする深夜ドラマ。その新枠第1弾で、同局はまたしても新境地を切り拓きそうだ。

視聴率は低迷すれど・・・

月曜23時台の「月曜ドラマプレミア23」は、今期からテレ東が始めた新ドラマ枠。

その第1弾となった『珈琲いかがでしょう』は、中村演ずる移動珈琲店「たこ珈琲」の店主・青山が、生活の中で問題や悩みを抱える人々に、極めつきの一杯を提供し癒やしと希望を与える物語として始まった。

ドラマがスタートすると、ネット上は大いに盛り上がった。

「よく眠れるようになった」「癒やされてます」「雰囲気最高に好きすぎる」などの声がSNSに寄せられたのである。

ただ、個人視聴率は1%前後、世帯も2%ほどで、決して芳しい実績とは言えない。

テレビ朝日やフジテレビの23時台ドラマ(『泣くな研修医』『あのときキスしておけば』など)と比べても数字は半分ほどしかない。

それでも同ドラマには、他の番組にはないパワーがある。

一つはタイムシフト視聴で、他の番組より格段に上を行く。関東地方で約65万台のネット接続テレビの視聴データを集める東芝視聴データ「TimeOn Analytics」によれば、録画再生率はライブ視聴の3倍前後。通常のドラマはライブと録画再生が半々ほどなので、視聴者を自分の都合の良い時間にじっくり見させていることになる。

いわゆる“専念視聴”に向かわせる力が半端ない。

ちなみにタイムシフトが極端に多い結果、各話の推定総視聴者数は関東で110万人を超えている。

これは同局の人気番組『出没!アド街ック天国』や『家、ついていってイイですか?』に迫る数字だ。他局で言えばTBS『オトラクション』『オオカミ少年』やフジ『火曜は全力!華大さんと千鳥くん』など、GP帯(夜7~11時)の新番組を軽く凌駕している。

加えて同ドラマは、見逃し配信でも快記録を出している。

初回は放送後1週間で196万回再生され、同局の歴代番組の記録を塗り替えた。しかも初回は最終回の放送まで配信中で、現在280万回を超えている。2話以降も100万回以上と好調を保っている。

視聴率をものともせず、タイムシフト視聴で人気ドラマに進化したと言っても過言でないのである。

フィクションが現実を動かす

次の特徴が、ドラマに影響されて実際に行動を起こす視聴者がたくさん出現している点だ。

インターネット接続テレビでの視聴状況と購買行動の関係を調べるCCCマーケティングは、ドラマ初回から4話が放送された3週間あまりの間に、実際にコーヒーを購入した人がどれだけいたかを調べた。

それによればレギュラーコーヒーの購入率は、ドラマを1回も見ていない人より1回以上見た視聴者の方が0.05%高くなった。特に2話以上見た人では、0.21%上がっている。

逆にドリンクコーヒーでは、ドラマを見ない人よりドラマ視聴者の購入率が下がっている。実はインスタントコーヒーでも同様の傾向となった。やはりドラマの世界観が、視聴者を缶コーヒーなど簡易なものから、一部を本格派に転向させたようだ。

この傾向はSNSの声でも裏付けられる。

「観てたらコーヒー飲みたくなった」
「やっぱりコーヒーっていいですよね。エスプレッソマシンもほしいなぁ」
「コーヒーサーバーとか揃えて、いちからコーヒー入れたくなる衝動にかられる」
「影響され、最近は豆から淹れてカフェオレを作っています」

ビジネスの可能性

それにしても0.21%上がった位では大したことはない。そうお感じの方が多いだろう。しかし実際のビジネスとしてみると、可能性は決して小さくない。今回の調査対象となった15~69歳の視聴者を関東地方の約3600万人に戻して概算すると、ドラマ4話中1回以上見た人は12.2%で440万人に相当する。

そのうち1.59%がレギュラーコーヒーを購入した。約7万人だ。

購入額は一人平均645円なので、総額は4500万円を超えるテレ東6局ネットのエリア全体では1億円に迫る。実際にはスポンサーはいなかったが、もしレギュラーコーヒーのCMが放送されていたら、一定程度シェアを伸ばしていた可能性は十分ある。

しかもドラマを見なかった人に比べ、2話以上見た人は購入率が0.21%上がっていた。

関東地方で約4.6万人だったが、購入額は約2900万円。ネット6局エリアでは5000万円を超える。

ちなみに缶コーヒーやインスタントも含めた全体の購入額は、関東で4億円弱に及ぶ。

放送エリア全体では8億円弱。さらに放送は5月いっぱい続くので、全体の波及効果は倍の20億円に迫る可能性がある。

やはり決して小さな数字ではない。

新たなプロダクトプレイスメント

プロダクトプレイスメント(PP)という言葉がある。

映画やテレビ番組の中で、企業名や商品を露出させる広告手法だ。古くは米国映画『E.T.』で、少年が宇宙人にあげたキャンディが爆発的にヒットした。『ターミナル』や『マイノリティ・リポート』では、PPで製作費の大半を賄っている。

日本でもテレビ草創期にPPが散見された。

プロレス中継で某家電メーカーの掃除機が、試合前のリング清掃で活躍した。またVTRがない生ドラマ中継では、主人公が薬局に飛び込みドリンク剤を飲むというPPがあったと聞く。

ところが日本ではその後、欧米とは異なりPPは定着しなかった。「CMは放送時間の18%以内」という業界の自主規制に反するという理由で、議論をあまりしなかったようだ。

今回の『珈琲いかがでしょう』も、既存の商品を露出していないのでPPではない。

ただし猿田彦珈琲とタイアップし、技術協力を仰いでいる。中村倫也など役者が珈琲を淹れる所作の指導などだ。かくして「珈琲を飲みたくなる」ような映像のクオリティが出来上がっているという。

さらに踏み込んで、タイアップ商品の展開も始めている。

劇中に登場するTAKOブレンドの豆やドリンクを販売するマーチャンダイジングだ。店頭・ECともに非常に好調だと聞く。

録画再生でじっくり見る人が多く、しかもコーヒーが重要な位置づけとなり、視聴者の心に深く刺さる。

欧米で一定程度定着したPPに、テレ東は日本的なスタイルで挑戦していると言えよう。

主人公の青山は、コーヒーを「泥のよう」と感じる過去を持つ。

それが極上の珈琲と出会い、人生観が一転する。どんな人も、真善美により浄化されていく物語が、コロナ禍の厳しい状況で視聴者を大いに癒やしたようだ。

珈琲通がどこまで増えるのか、極上のフィクションが現実をどこまで動かすのか見届けたい。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

  • 写真西村尚己/アフロ

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