最速154㎞右腕・森木大智が語る「最後の夏の夢」 | FRIDAYデジタル

最速154㎞右腕・森木大智が語る「最後の夏の夢」

高知高3年 。中学時代に軟式史上最速150キロを記録して全国優勝 !いまだ甲子園未経験の「怪物」が今夏ついにベールを脱ぐ。

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
高知高のグラウンドで、森木は甲子園への想いを語った。球速だけでなく、制球力や変化球の精度もバツグン。まさに超高校級投手だ
高知高のグラウンドで、森木は甲子園への想いを語った。球速だけでなく、制球力や変化球の精度もバツグン。まさに超高校級投手だ

GWの高知は、少し早い夏が訪れていた。5月1日の春季四国大会決勝・明徳義塾戦で、打っては4打点、投げては154㎞を記録するなど、一人舞台を演じてみせたのが、私立高知高校の森木大智(だいち)(3年)だった。二日後、同校の専用球場で、燦燦(さんさん)とした四国の陽光に照らされ森木は練習に励んでいた。

3年前の夏、軟式球ながら中学生史上最速の150㎞を公式戦でマークし、スーパー中学生として森木は脚光を浴びた。だが、高校進学後、聖地・甲子園のマウンドは一度も踏めていない。

「そうそううまくはいかないなというのが正直な気持ちです。これまでの高校生活は悔しい思いばかり。その悔しさを、最後の夏にぶつけたい」

森木の前に立ちはだかってきた同県のライバルが、明徳義塾だ。1年夏の高知大会決勝では、森木が高校初の本塁打を放つもマウンドでは3失点して敗れた。昨秋も高知大会の決勝で対戦し、森木と明徳のエース・代木大和(しろきやまと)の投げ合いは延長12回を戦って1対1で日没コールドに。翌々日の再試合で高知高校は敗れた。

「去年の秋はとくに、明徳だからこういう野球をしてくるだろうという先入観があって、自分たちの野球をやるというより、明徳の名前と戦ってしまった。冷静に戦力を分析したら、負けるような相手ではないと思います。夏は明徳を圧倒して、勝ちたい。チームとして、10対0で勝つぐらいの気持ちで臨みたい」

敵将は’92年夏の甲子園で、星稜時代の松井秀喜を5打席連続敬遠して明徳を勝利に導いた馬淵史郎監督である。全国に名を轟(とどろ)かす、したたかな策略家だ。6対2で高知高校が勝利した春季四国大会決勝で馬淵監督は、投打の柱である代木を投入せず代打のみの起用で、夏を睨(にら)んで手の内を隠した。

「4月のチャレンジマッチ(春季四国大会への代表順位決定戦)の試合後、初めて馬淵監督とお話しする機会がありました。『ありがとうございました』と挨拶すると、『秋のほうがボールがきていた気がするなあ』と言われました(笑)。厭(いや)らしいことをおっしゃるな、普通の会話でもこんな駆け引きをしてくるんだな、と思いました(大笑)。もちろん、考えすぎかもしれませんけど」

馬淵監督もまさか森木の動揺を誘うためにそんなことを言ったわけではないだろう。森木という逸材を誰より認め、警戒している裏返しの言動かもしれない。

1イニングのみの登板となった四国大会決勝で、森木はストレートの自己最速を154㎞に更新した。これは大阪桐蔭の関戸康介と並び、世代最速となるスピードだ。関戸は、中学を明徳義塾で過ごし、森木とはライバル関係にあった。また、今秋のドラフトで注目を集める仙台育英のエース・伊藤樹(たつき)は、中学時代に全中の決勝で投げ合った仲だ。両者に刺激され、密かに森木は進化を遂げてきた。

「二人が甲子園のマウンドに立っている映像を観ると、自分も憧れの舞台に立ってみたいという思いが強くなる。あそこに行かなければならないという責任も感じます。

自分の武器はやっぱりストレート。今後は、スピードにこだわるというよりは一球を『決めきる力』をつけたい。たとえば相手打者のインコースの厳しいところに投げたい時に、そのコースへしっかり投げる技術、一点集中できる制球力を課題にしています」

184㎝、87㎏と立派な体躯で、変化球もスライダー、カーブ、スプリットにチェンジアップと豊富だ。そんな森木に座右の銘を問うと、「愛」とシンプルに答えた。

「ラブ、です(笑)。好きこそ物の上手なれじゃないですけど、とことん好きになって、野球というスポーツを追求したい」

高校からプロへの道を目指す森木にとって甲子園は野球人生の通過点だろう。

「野球は9人で戦うスポーツ。チームとして甲子園は行かなくてはならない場所です。目標の全国制覇を達成したい」

まだ全国の舞台を経験していない怪物が、この夏、いよいよベールを脱ぐ。

春季四国大会初戦で力投する森木。プロ9球団21人のスカウトが視察に訪れた
春季四国大会初戦で力投する森木。プロ9球団21人のスカウトが視察に訪れた

『FRIDAY』2021年5月28日号より

  • 取材・文・撮影柳川悠二(ノンフィクションライター)写真(2枚目)日刊スポーツ/アフロ

Photo Gallery2

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事