世帯より若年個人視聴率重視!日テレドラマの「ブレない割り切り」 | FRIDAYデジタル

世帯より若年個人視聴率重視!日テレドラマの「ブレない割り切り」

もはや、世帯視聴率で番組を論評する時代は終わった!

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日本テレビのドラマ『恋はDeepに』で綾野剛と共に主演を務める石原さとみ

春ドラマの前半戦が終了した。

ここまでの各局の実績を振り返ると、局により特徴が分かれる。

中高年に特化して、世帯視聴率にこだわるテレビ朝日。

前クールに続き大人路線の月9で高視聴率をとるフジテレビ。

相変わらずの長打狙いの日曜劇場で快走するTBS。

そして若年層の個人視聴率に特化する日本テレビだ。

各局が放送するGP帯(夜7~11時)3ドラマの平均世帯視聴率では、各局の方針の結果として日テレは下位グループに甘んじている

それでも各局が重視する49歳以下の「コア層」では、日テレはトップに躍り出る。特に女子中高生となると、独走してしまう。

若年層にこだわる日テレドラマの意味を考えてみた。

低迷する世帯視聴率

日テレは今期、石原さとみと綾野剛が主演の『恋はDeepに』、菅田将暉主演『コントが始まる』、広瀬すず・櫻井翔W主演『ネメシス』の3本を並べた。

3本とも初回の世帯視聴率はまずまずだった。

特に『ネメシス』の11.4%は、W主演のキャスト力を再認識させる好記録だった。

ところが回が進むにつれ、3本とも失速した。2話で全て一桁となり、3話で8%台以下、5話ですべて7%台に落ちた。この時点で過去3年の最低水準となっている。

ネット上の記事でも、世帯視聴率に基づく酷評が散見される。

『恋ぷに』に対しては、「見るのが辛い」「視聴率ダダ下がり」「石原さとみは苦戦?」「気になる主義・主張の偏り」「“恋愛もの”は食傷気味」などの厳しい文言が記事タイトルに踊った。

『コントが始まる』にも、「視聴率ダダ下がり・・・タイトルが×か、ミスキャストか?」と手厳しい。

そして世帯視聴率が3割以上落ちた『ネメシス』に対しては、「チグハグ演出に視聴者ガッカリ」「緊急事態宣言!」視聴率低迷で“続編映画”撮り直しも」などと言いたい放題だ。

たしかに13%台でスタートし、6~7話でも13%台を保つフジ『イチケイのカラス』(竹野内豊主演)や『特捜9』(井ノ原快彦主演)と比べると、日テレの3作はいずれも世帯視聴率が右肩下がりで厳しい。

ただし日テレの狙いは、世帯ではなく若年層の個人視聴率にあり、世帯視聴率の低迷は必ずしも気にしていない。

若年層で逆転

ではテレ朝・TBS・フジと日テレを、各指標で比べてみよう。

『特捜9』が好調なテレ朝は、他2本もまずまずで世帯視聴率では断トツだ。
ところが個人全体は序列こそそのままだが、他局との差が縮まる。そして男女T層から2層(13~49歳)では、テレ朝の視聴率が一番低くなる。男女65歳以上で突出しているが、女子中高生で大きく落ちるなど、中高年に特化した方針の結果が数字にも表れている。

世帯視聴率2位はTBS。阿部寛主演『ドラゴン桜』が絶好調だが、2層と3-層(男女35~64歳)でトップと、大人から高い支持を集めている。

『イチケイのカラス』で快走するフジテレビ。ところが『大豆田とわ子と3人の元夫』と『レンアイ漫画家』が不調で、世帯視聴率では最下位。ただし「キー特性」(男女13~49歳)をターゲットとする同局は、その層では男女ともまずまずの数字をとっている。

そして日テレはテレ朝と対照的世帯では3番手、3+層(男女65歳以上)では最下位に沈む。ところが同局が重視するコアターゲット(男女13~49歳)ではトップに躍り出る。

MT~M1とFT~F2(男性13~34歳・女性13~49歳)で首位を保っている点が大きい。特に女子中学生では、2位TBSの1.5倍、テレ朝の4.5倍と圧倒的な数字を誇っている。

若年層狙いの意味

若年層に特化したドラマには、どんな意味があるだろうか。

テレビの視聴者層は50歳以上が過半を占めるために、若年層に合わせたドラマは世帯視聴率で苦戦しがちだ。日テレドラマが3作とも右肩下がりになった通りである。

ところが若年層の数字は、回が進んでも世帯視聴率ほどは落ちていない。若者の好みに合わせたため、ネット記事に散見されたように、中高年の評価は厳しくなる。それでも若年層は、異なる見方をしている。

『恋ぷに』に対しては、「胸キュンが最高潮」「綾野剛の涙にファンもらい泣き」「(石原さとみは)とにかく何しても可愛い」と絶賛のファンがついている。

『コントが始まる』にも、「切なくも温かい」「(ドラマの)空気が好き」「心にしみる」など肯定的な意見が少なくない。

そして『ネメシス』も、「(広瀬すず)可愛すぎぃ」「顔ちっちゃ」「謎解きにハマってしまった」「壮大なトリックおもしろい」など、賞賛する声がかなりある。

実はこの若年層ターゲットは、広告主対策でもある。日テレは春改編に際し、「生活者ファースト」と「(コロナ禍で)激変した生活者動態を刺激する」を掲げた。テレビ離れ、特に若年層離れが進む中、幅広い層にリーチし視聴者の「多様性」を維持しようというのである。

例えば化粧品やファッションなどのスポンサーは、そうした領域に関心を持つ視聴者を集める番組に広告を出稿しようとする。

若者はそれらの商品を購入する層で、若年層ターゲットは広告主のニーズに合致する。

テレビ局からすれば、広告収入を維持する道なのである。

テレビ局の未来

問題は現状での広告収入だけではない。

インターネットでの見逃しサービスが、視聴数で莫大な量となってきている現実も見逃せない。例えば『恋ぷに』初回は、300万回再生された。

ここに15秒CM10本を1本4円で販売したとすると、1億2000万円の売上となる。ドラマ制作費の何倍もの売り上げを叩き出してしまうのである。

もちろん現状ではそこまでのビジネスにはなっていない。

それでも日テレは、もはやドラマを放送というフロー番組と位置付けるだけでなく、ストックコンテンツと位置付け、放送後にどれだけ収入を増やすかを視野に入れている

ゆえに水曜をラブコメ、土曜を青春群像劇、日曜をコミカルなミステリーと多様なラインナップとすることで、多様な若年層をとりに行っている。

そのターゲットこそが、ネット上の重要な視聴者となるからである。

ところがスポーツ新聞などは、いまだに世帯視聴率を元にドラマを論評している。

ドラマ制作者、テレビ局の経営、そしてスポンサーが既に別の論理で動き始めていることが理解できていない証拠だ。

テレビ局が何をどう“割り切っている”のか。

そこを認識せずに、既に過去のものとなった世帯視聴率でドラマを論評し続ける記者やライターは、もはや今と向き合うジャーナリストとは言えない。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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