茨城一家殺傷事件 ヤバすぎる「動機なき殺人」が起こった背景
「猫殺し」「連続少女通り魔」「夫婦惨殺」 埼玉県三郷市の何不自由ない 名家に育った平凡なオトコのはずだった
「有毒植物のトリカブトやサリンの生成に関する本などが押収されていたことも判明しました」(全国紙社会部記者)
どんよりとした曇り空の下、5月11日午前、埼玉県三郷市の住宅街で岡庭由征(よしゆき)容疑者(26)の家宅捜索が始まった。両親と暮らしていた自宅は、地元の名士である祖父宅の敷地内にある一軒家だ。捜査員10人ほどが次々と家屋の中に入っていく。
「捜索が終了したのは実に7時間後でした。このガサで茨城県警は岡庭容疑者が普段使っていた小さな離れを徹底的に調べていました。もしかしたら、この場所で毒物の生成を行っていた可能性もあります。また、捜査員がシャベルを持っていたので、凶器や返り血を浴びた衣服などの決定的な証拠があるかもしれないとみていたのでしょう」(前出・記者)
岡庭容疑者の凶悪な手口が徐々に明らかになってきた。
’19年9月23日未明、運転免許を持たない岡庭容疑者はスポーツタイプの自転車を走らせ、自宅から約30㎞も離れた茨城県境町にある会社員の小林光則さん宅に侵入した。そして、小林さんと妻の美和さんを刃物で殺害。長男も刺傷させ、次女にはクマ撃退スプレーをかけている。
「スプレーの購入履歴や現場に残されたレインブーツの足跡から犯人の特定が進められました。その捜査の過程で浮かび上がったのが、過去に通り魔事件で逮捕歴があった岡庭容疑者でした」(前出・記者)
岡庭容疑者は、’11年11月、埼玉県三郷市の路上で見かけた中学3年生の女子生徒の後をつけ、右顎を包丁で切りつける凄惨な事件を起こしている。さらに2週間後にも千葉県松戸市の路上で小学2年生の女児を尾行。少女が逃げようとして転んだところに、岡庭容疑者は小刀を振り下ろし、重傷を負わせた。
「当時16歳だった岡庭容疑者は警察の取り調べで、『女子中学生の首を狙って刺したが、殺せなかった』『次は確実に殺そうと思い、小さな子を狙って何度も刺した』と供述しています」(民放テレビ局記者)
この事件を起こす直前、岡庭はトラブルを起こして千葉県内の私立高校を自主退学していた。同級生は当時をこう語る。
「岡庭は『生首野郎』と呼ばれて校内では有名人でした。2年生の時、教室に猫の生首を持ってきたんですよ。クラスメイトに猫の生首の写メを見せたら『持ってきて』と言われて、本当に持ってきた。『次は人間の生首』とも言っていたみたいです」
通り魔事件で世間を震撼させた岡庭容疑者は、医療少年院を’18年に出所した後、埼玉県深谷市にある精神障害者のための自立支援施設で共同生活を送っていた。
「しかし結局は、1〜2年前に実家に戻っていた。一緒に住んでいた両親は祖父から資金援助を受けて、ほとんど家から出ずに息を潜めていました」(前出・記者)
実家で岡庭容疑者は着々と「殺人計画」を練っていたのだろう。
5月7日に逮捕された岡庭容疑者は茨城県警の取り調べに対して、容疑を否認しているという。しかし、昨年11月に硫黄(いおう)を大量所持していたとして埼玉県警に条例違反で逮捕された際には饒舌(じょうぜつ)だった。
「埼玉県警の刑事が硫黄のことしか聞いていないのに、『(僕は)人を殺したくてしょうがないんです』と話し始めたそうです。昨年の逮捕時は顔もむくんで茫然としていた。取り調べでは、しばらく思ったことをそのまま話してしまったのではないでしょうか。
その後、留置所生活を送って、冷静になった。私選ではなく国選弁護人がついているところを見ると、実家からは見放されているのでしょう。ただし、送検の際、マスコミのカメラを睨みつけていたところを見ると、すんなりと容疑を認めるとも思えません」
岡庭容疑者の澱(よど)んだ狂気が解明されることを願うばかりだ。
『FRIDAY』2021年5月28日号より
- 撮影:蓮尾真司