いま、設定にムリがある「恋愛ドラマ」が乱立している理由
石原さとみがアリエル化した『恋はDeepに』、設定にムリのある『レンアイ漫画家』、リアリティ不足の『リコカツ』

ドラマが軒並み低視聴率に喘(あえ)ぐなか、各局を支えてきたのが一話完結で、どの回から観ても楽しめる医療もの、警察もの、そしてリーガル(法曹)ものだった。
だが、キー局プロデューサーは「完全に潮目は変わった」と語気を強める。
「『恋はDeepに』(日本テレビ系)、『レンアイ漫画家』(フジテレビ系)など、恋愛ドラマがラインナップにズラリと並んでいるんですよ。テレビ局と広告代理店が本格的に世帯視聴率からコア視聴率(13歳〜49歳の男女の視聴率データ)重視にシフトした表れだと見ています。若者に訴求するドラマは何か。各局が辿(たど)り着いた答えが恋愛ものだった」
ベテラン放送作家によれば「TVerなど見逃し配信の再生回数がヒットの指標になってきたことも大きい」という。
「TBSが『恋はつづくよどこまでも』『オー!マイ・ボス!恋は別冊で』など〝胸キュン路線〟で立て続けにヒットを飛ばしていることを各局、研究したのでしょう。ステイホームが推奨され、見逃し配信サービスも充実した現在、一度でもキュンとしてくれたら若い女性視聴者は最終回まで視(み)てくれる。これが恋愛ものの復権につながっている」
ただ、先の『恋はDeepに』の評価は真っ二つに割れている。ライターの大山くまお氏の意見は次のように辛辣(しんらつ)だ。
「石原さとみ(34)と綾野剛(39)のラブコメと見せかけておいて、実はファンタジー。石原は〝魚と会話できる〟という設定で、本当にやろうとしているテーマは環境問題。意欲は買いますが、ちっとも笑えないのが残念」
私、人間じゃないの――そう告白する石原さとみの姿にディズニー作品『リトル・マーメイド』の人魚姫アリエルをダブらせるのは民放編成担当だ。
「脚本家は『おっさんずラブ』で一世を風靡した徳尾浩司氏。石原=アリエル論争でバズらせる戦略なら大したもの」
『レンアイ漫画家』も設定に物言いがつけられている。
「漫画のネタのために恋愛シミュレーションをするのはまだ許せるとして、その様子を担当編集者がスマホでライブ配信するのはどうなのか。売れっ子漫画家なのにアシスタントもいないし。〝ドジなヒロイン〟もラブコメではありがちで食傷気味。そこを『恋つづ』や『ボス恋』で突破した上白石萌音(23)の凄さが際立ちますね。松坂桃李(32)の『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)も『身体は井浦新(46)で、心は麻生久美子(42)』というダイナミックな設定。今後が心配です」(ドラマウォッチャー・北川昌弘氏)
北川景子(34)と永山瑛太(38)の『リコカツ』(TBS系)には、軍人と財閥令嬢の恋を描いた大ヒット韓流ドラマ『愛の不時着』の影響が見て取れるという。
「離婚が当たり前になった現代の夫婦関係を描こうとする狙いはいいのですが、永山瑛太演じる自衛隊員の人物造形にリアリティがなさすぎて、全体的に古臭く見えてしまう」(大山氏)
マネするのはいいが、研究不足ではどうしようもない。










『FRIDAY』2021年5月28日号より
撮影:堀田 咲(石原)、近藤裕介