櫻井翔&広瀬すずに賭けた日テレ大成功!各局「ドラマ戦略」の裏側
豪華キャストが光る『ネメシス』、荒唐無稽感が拭えない『イチケイのカラス』、素直にハマれる『生きるとか死ぬとか父親とか』』……
コロナで人足が遠ざかっていた横浜中華街に突如できた人垣。その中心にいたのは、『嵐』の櫻井翔(39)と広瀬すず(22)だった。櫻井の扮(ふん)する探偵が、心配になるほどポンコツだと話題のドラマ、『ネメシス』(日テレ系)のロケが行われていたのだ。
「櫻井とW主演する広瀬の役どころは、天才助手。これが、はつらつとしていてなかなか面白い。橋本環奈(22)、大島優子(32)が仲間に加わるなど、キャストはとにかく豪華です」(ドラマウォッチャー・北川昌弘氏)
「恋愛ドラマの復権」とともに春ドラマで特徴的だったのは「各局の戦略」だ。
コア視聴率の時代が来ると読み切って、5年前から対策していた日本テレビは、右記の『ネメシス』のように若者をターゲットにしたキャスティングと作品作りに注力。実際、どの作品もコア視聴率は5%超えと安定している。
テレビ東京の独自路線も注目を集めている。民放編成担当は「テレ東はターゲットをT層、M1層、F1層という13歳〜34歳の男女に絞り、個性的なドラマをぶつけている」と分析する。
「『孤独のグルメ』の成功で、予算をかけずにニッチなジャンルをテーマにした作品を実力派俳優で作る、という戦略が固まった感がありますね。サウナ、ソロキャンプ、ソロ活など『ある程度定着しているけど、流行(はや)りすぎてもいない』というテーマ選びが絶妙。
今後の配信ビジネスを見据えて、ドラマのノウハウを蓄積していきたいという戦略を感じます。福原遥(22)主演の『ゆるキャン△2』はアニメ版がスイッチやプレステのゲームとコラボしている。マルチユース化が凄い」
冬ドラマでの香取慎吾(44)の起用に続き、春ドラマでも中村倫也(34)や栗山千明(36)、蓮佛(れんぶつ)美沙子(30)ら実力派がテレ東ドラマに出演している。
なかでも注目は吉田羊が人気コラムニストのジェーン・スーを演じる『生きるとか死ぬとか父親とか』だろう。
「ラジオリスナーからのメールを通して、父親との関わり方や悩みに対する自身の考えを吐露する展開は見る価値あり。グループの壁(TBSラジオとテレ東)を超えた新手のメディアミックスといっていい」(ベテラン放送作家)
深夜帯に高齢者向けのテーマを持ってきたことに「テレ東の野心を感じる」(民放編成担当)との意見もあるが、北川氏は「素直にハマる」と絶賛する。
「吉田羊と國村隼(くにむらじゅん)(65)演じるちょっとボケてきた父との親子関係が身につまされる。一方で田中みな実(34)が〝まともなアナウンサー役〟で出ているのが新鮮」
フジテレビは、新型コロナの影響がこの先もしばらく続くと判断。ドラマ制作スタッフによれば「過剰なほど〝前撮り〟が徹底されている」という。
「そのため、原作ものと人気作の続編が増えています。たとえば現在放映中の〝月9〟『イチケイのカラス』は人気コミックが原作で、昨年12月から撮り始めて3月中旬にはクランクアップしていたそうです。
7月期の『ナイト・ドクター』はオリジナル脚本ですが、10月期は『ラジエーションハウス〜放射線科の診断レポート〜』の続編で、来年1月期の『ミステリと言う勿(なか)れ』は原作もの。それぞれ、今年3月頭から撮影がスタートしたそうで、フジのドラマ班は一時期、4本同時に〝月9〟を撮っていたんだとか……」
こうなるとクオリティが心配だが、実際、『イチケイのカラス』に首をかしげるテレビマンは少なくない。
「型破りな裁判官・竹野内豊(50)と彼を裁判官にした小日向文世(67)。そして、その二人に振り回される黒木華(はる)(31)が素敵なのですが……裁判を左右する重要人物の証言が無視されるなど荒唐無稽な感が否めない。原作のマンガは面白く、テレビ向きだと見られていただけに、脚本が悪いのか演出に問題があるのか……」(キー局プロデューサー)
拙速――この一言に尽きるだろう。
コア視聴率シフトに大きく出遅れたテレビ朝日の戦略にも触れておこう。
「広告代理店が言っているだけで、若者にアピールすることが本当にテレ朝の利益になるのか? 局内ではそんな声も上がり始めています。
『お金を持っている高齢者に刺さる安心安定のキャスティング&作品』を基本戦略に置き、今クールで言えば『あのときキスしておけば』のような実験作も適宜投入。当たればシリーズ化する。実験作とは言いつつ、脚本は安定の大御所、大石静さん。ウチらしいですがね(笑)」(テレ朝関係者)
〝逆張り〟は成功するか?
『FRIDAY』2021年5月28日号より
- 撮影:近藤裕介