注目の出演作が続々!松坂桃李のパワーアップが「こんなにスゴイ」 | FRIDAYデジタル

注目の出演作が続々!松坂桃李のパワーアップが「こんなにスゴイ」

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『孤狼の血 LEVEL2』2021年8月20日公開 (C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

松坂桃李は、面白い。かねてより演技力はもとより、「この人についていけば間違いない」と思わせてくれるような傑作・良作を選び抜く“嗅覚”に秀でた役者だったが、ここにきて一気に覚醒した感がある。特に2021年の彼の活躍ぶりは目覚ましく、松坂のキャリアにおいても重要な1年といえるだろう。新型コロナウイルスの影響で公開・放送順が入り乱れた部分を差し引いても、破竹の勢いだ。

現在では主演ドラマ2作が同時放送されており、今年公開の出演映画はなんと4本を数える。明らかにパワーアップした俳優・松坂桃李の“2021年の歩み”を、各作品の内容と共に見ていきたい。

2020年の12月に戸田恵梨香と結婚し、話題を集めた松坂だが、年明けの2月19日には主演映画『あの頃。』が劇場公開。本作では、松浦亜弥のファンになったことで人生に光が差し、さらにハロー!プロジェクトのファン仲間という“同好の士”ができ、生きがいと居場所を見つけていく青年を人懐っこく演じた。

冒頭、日常に疲弊しきった主人公・劔(松坂)がボロボロの状態で「♡桃色片想い♡」のミュージックビデオを観て涙が止まらなくなり、そのままCDショップまで全速力で自転車をかっ飛ばす「ダウナーからのアッパー」の感情の流れがほほ笑ましく、その際の松坂の演技も共感性が非常に高い。“推し”を描いた映画だが、主人公の劔自身を私たちが“推し”たくなるのは、松坂の存在があってこそだ。

3月には、ゲーム好きが高じて実写映画『モンスターハンター』の吹き替え声優に抜擢。これまでも『パディントン』シリーズ(16~18)や『HELLO WORLD』(19)など声優も務めてきた松坂だが、本作では「日本語を一切話さない日本語吹替版声優」というなんとも珍妙な企画に参加し、「どういうこと?」と話題を集めた。本作は彼のフィルモグラフィからみてイレギュラーな位置づけではあろうが、こうした「面白さに飛び込む」ところも、松坂らしさといえるだろう。

ラジオ番組「菅田将暉のオールナイトニッポン」へのゲスト出演時、松坂はパーソナリティを務める菅田から『モンスターハンター』の吹き替えの件について盛大にイジられていた 写真:WireImage/ゲッティ/共同通信イメージズ

4月には、『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK)と『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)という主演ドラマがなんと2本同時期に放送。

前者は映画『ジョゼと虎と魚たち』(03)やNHK連続テレビ小説『カーネーション』(11)の脚本家・渡辺あやによるオリジナルのブラックコメディ。好感度だけを気にして、事なかれ主義で生きてきたテレビ局のアナウンサーである神崎(松坂)が、恩師に誘われて大学の広報担当者へとジョブチェンジ。しかし、次々と不祥事が勃発し、その対応に追われる……という物語だ。

本作、大学内の物語ではあるのだが、その中身は日本全体の政治に対するアンチテーゼという、ずらすことでエグみを増幅させる構造になっている。『ワンダーウォール』(18)でも大学を舞台にした渡辺あやの進化系と言える物語であり、より現代の諸問題と結びついた社会派作品に仕上がっているのだ。

たとえば、教授によるデータ改ざん指示を研究者が告発するエピソードでは、理事たちが隠蔽工作への加担を暗に神崎に強いてきたり、「正論を振りかざす人には真っ向から対応しない」という“対処法”を教えてきたり、弱者が権力にすり潰されたりとブラックな展開が続出。ただ、これは決して虚構ではなく、我々が日々ニュースや或いは実際に目にしている社会問題でもある。新型コロナウイルスに対する杜撰な対応によって、国民の政府による不信感が高まっている時期に放送されることで、現実との強固な結びつきも発生している。

本作で松坂が見せる「指示通りに動いた結果、ドツボにハマっていく喜劇性」「年長者の暴挙で疲弊する悲劇性」「自分自身の倫理や正義感について今一度考える共感性」は、我々視聴者の心の内にするりと入り込み、同調性を存分に刺激する。松坂ならではの人懐っこさや気安さが、しっかりと機能しているのだ。

また、日本映画のひとつの転換期を形成した『新聞記者』(19)で、「国家に反逆する官僚」を演じた松坂だからこそ映える、というキャリアの縦軸から見た効能も。視聴者にとっては松坂がこの役を演じる“意味”が脳裏に浮かぶだろうし、そうした側面から考えても、松坂の作品選びのうまさ・強さが存分に発揮されている。

映画『新聞記者』完成披露上映会での松坂桃李(2019年6月4日撮影) 写真:Pasya/アフロ

『あのときキスしておけば』は打って変わってエンタメ性に振り切った「入れ替わりコメディ」だが、「恋した女性が男性と入れ替わったら、どうする?」という「恋の相手」を主人公にしたところが興味深い。

この手の作品は、『君の名は。』(16)も『天国と地獄〜サイコな2人〜』(21)も『フェイス/オフ』(97)や『ザ・スイッチ』(20)も、往々にして「入れ替わった者同士の視点」で描かれるもの。しかし『あのときキスしておけば』においては、入れ替わった本人ではなく、知人の視点で描かれる。

これにより、リアクションの演技で面白さを担保していく必要性が生まれる。「中身が麻生久美子(演じる漫画家)になった井浦新」は“攻め”の演技=アクションで魅せていくポジションだが、そこに対する“受け”=リアクションの演技を作っていくのが松坂の役割であり、主人公としてこの部分をしっかりと見せられなければ、このドラマの特殊性が輝かない。

そうした意味でも、松坂の「うろたえる」「テンパる」演技の懐の深さが光っている。ここでも、視聴者を味方につける松坂の「いい人オーラ」が利いていて、思ってもみなかった状況で四苦八苦する姿に共感したり、応援したくなったりしてしまう。

ドラマ『あのときキスしておけば』(テレビ朝日系)ロケ中の松坂桃李と麻生久美子 『FRIDAY』2021年4月30日号より

また、本作で松坂の技術力を感じさせられるのは、モノローグと一人芝居の連結の上手さだ。たとえば第1話では、帰宅後に勤務先のスーパーで遭遇した客の巴(麻生)が何者なのかと思案する姿が描かれるが、その際の洪水のようなモノローグと一人芝居が完璧に融合している。当然ながら、モノローグと一人芝居は同時に収録することはできないため、後から完璧に合わせているのだと考えると、そのクオリティの高さに恐ろしさすら覚える。

なお、劇中では一人で漫画のキャラクター全員に声をあてたり、憧れの人物である巴に会ったことでオタク気質が爆発し、超絶早口になったりと(このあたりの上手さは『あの頃。』や『ゆとりですがなにか』(16)で証明済み。何より彼自身、『遊☆戯☆王』や『SLAM DUNK』の話題になると話が止まらなくなる)、松坂の技術力が結集した作品ともいえる。

5月21日には、吉永小百合主演映画『いのちの停車場』が劇場公開された。現役医師・南杏子が2020年に発表した同名小説を映画化した本作は、在宅医療をテーマにしたヒューマンドラマだ。石川県・金沢を舞台に、患者一人ひとりの「命」と向き合う医師の姿が、『八日目の蟬』(12)の成島出監督によって重厚感たっぷりに描かれていく。

本作で松坂が扮したのは、吉永演じる主人公・咲和子の医師を慕う青年・野呂。医師国家試験に落ち続け、人生の目標を失っていたが、咲和子や診療所スタッフ・麻世(広瀬すず)と共に働くことで、「人の命を助けたい」という思いを強めていく。

『いのちの停車場』5月21日(金)全国ロードショー (C)2021「いのちの停車場」製作委員会

シリアスになりがちな作品の中で明るく振舞う太陽のような存在を朗らかに演じながら、死期が近づく患者を懸命にサポートしようとする真摯さや、己の無力さを悟った際の悲嘆など、様々な表情を見せている。「命」をテーマにした本作で、「生きた演技」を披露した松坂の存在感は、吉永小百合や西田敏行といった大先輩を前にしても劣ることはない。

そして、8月20日には待望の続編となる『孤狼の血 LEVEL2』が劇場公開予定。前作から3年後を描く本作では、大上(役所広司)という絶対的な存在を失った刑事・日岡(松坂)が正義と悪の危うい均衡のなかで責務を果たし、後継者として生きていこうとする姿を熱量たっぷりに活写していく。

前作は警察もヤクザも濃い面々が入り乱れる構造になっていたが、ひと足先に試写で観賞した個人的な感想としては、今回はぐっと日岡の人物描写にフォーカスした印象だ。偉大な先輩・大上の陰に苦しみながら、新たに現れたクレイジーな破壊者・上林(鈴木亮平)をどうしたら止められるのか、東奔西走してゆく。こうした物語としての質感は、『ダークナイト』(08)を彷彿とさせるものといえるかもしれない。

甘さや危うさを感じさせつつも、秩序を保とうする日岡は、正義の番人となるか、はたまた暴君となるか? こうした物語の立ち位置的にも、松坂の双肩にかけられた責任は非常に重く、役所に代わり主役に“昇格”した松坂の奮闘が、劇中の日岡にオーバーラップするという秀逸な仕掛けが施されている。狂気をたぎらせ、周囲を恫喝したり、建物の上階から飛び降りたり、連戦でボロボロになったりと、松坂の新たな魅力が約2時間を通してこれでもかと詰まっており、彼の人気が爆上がりすることは必至。

松坂の快進撃は、まだ止まらない。『新聞記者』も手掛けた映画配給・制作会社スターサンズと再び組んだ『空白』が、9月23日に公開予定。

『ヒメアノ〜ル』(16)や『愛しのアイリーン』(18)といった衝撃作を次々と世に放ってきた鬼才・𠮷田恵輔監督が脚本を兼任した本作は、万引き未遂でスーパーから逃げた結果、交通事故で亡くなった少女の父親(古田新太)が、事故死のきっかけを作ったとしてスーパーの店長(松坂)やその他の人物を追い詰めてゆくサスペンスだ。

『空白』2021年9月23日公開予定 (c)2021『空白』製作委員会

現状、特報が解禁された段階ではあるものの、その攻めた内容と、断片的なものではあるが出演陣の演技に話題が沸騰。もともと『ヤクザと家族 The Family』が1月に公開されたスターサンズ、『BLUE/ブルー』が4月に公開された𠮷田監督ともに、映画ファンから絶大な信頼を集めており、そこに松坂が加わるとなれば、さらに期待が高まるというもの。

これまで述べてきたように、松坂の出演作はハイクオリティなものがひしめいており、本作でもまた新たな魅力を見せてくれるに違いない。

こうして見ていくと、役者・松坂桃李の面白さは、従来の「演技の安定感」に加えて、常に新しさを模索する「攻めの姿勢」にあるといえるだろう。表現者として、自分の定義をどんどん拡大させていく彼がここから先、どんな面白さを我々に提示してくれるのか。きっと、予想を超えた驚きが待っていることだろう。


『いのちの停車場』2021年5月21日全国ロードショー
吉永小百合
松坂桃李 広瀬すず
南野陽子 柳葉敏郎 小池栄子 みなみらんぼう 泉谷しげる
石田ゆり子 田中 泯 西田敏行
監督:成島出 脚本:平松恵美子 原作:南杏子「いのちの停車場」(幻冬舎文庫)
後援:日本医師会 日本在宅ケアアライアンス 観光庁
推薦:日本在宅医療連合学会 全国在宅療養支援医協会
(C)2021「いのちの停車場」製作委員会


『孤狼の血 LEVEL2』 2021年8月20日公開
出演:松坂桃李  鈴木亮平  村上虹郎 西野七瀬
斎藤 工・中村梅雀・滝藤賢一 中村獅童 吉田鋼太郎
監督:白石和彌 原作:柚月裕子「孤狼の血」シリーズ(角川文庫/KADOKAWA刊)
脚本:池上純哉 音楽:安川午朗 撮影:加藤航平 美術:今村 力 照明:川井稔 録音:浦田和治編集:加藤ひとみ 音響効果:柴崎憲治
企画協力:KADOKAWA  製作:『孤狼の血 LEVEL2』製作委員会 配給:東映
(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会


『空白』2021年9月23日公開
(c)2021『空白』製作委員会

  • SYO

    映画ライター。1987年福井県生。東京学芸大学にて映像・演劇表現について学ぶ。大学卒業後、映画雑誌の編集プロダクション勤務を経て映画ライターへ。現在まで、インタビュー、レビュー記事、ニュース記事、コラム、イベントレポート、推薦コメント等幅広く手がける。

  • 写真WireImage/ゲッティ/共同通信イメージズ(松坂桃李&菅田将暉)、Pasya/アフロ(『新聞記者』完成披露上映会)撮影近藤裕介(麻生久美子&松坂桃李)

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