韓国・文在寅大統領 閣僚候補が「就任辞退」した悲惨すぎる理由
政権末期を象徴する、お粗末な人事だった。韓国の文在寅大統領が海洋水産相に指名した朴俊泳(パク・ジュニョン)同省次官が、5月13日に就任を辞退すると発表したのだ。
「閣僚人事が発表後に撤回されるのは、極めて異例です。4月に行われたソウルと釜山の両市長選で、与党候補が大敗。文大統領は5閣僚を交代させ、支持率回復を狙っていたのですが……」(韓国紙記者)
就任辞退の理由を聞くと、呆れてしまう。朴氏の夫人が、大量の陶磁器を密輸した疑いが持たれているのだ。
「朴氏は15年から18年にかけて、英国の韓国大使館に勤務していました。その間に夫人は、フリーマーケットでティーセットや皿など大量の陶磁器やアクセサリーを購入。帰国する際に、『外交官の引っ越し荷物』として関税を払わずに韓国へ持ち込んだんです。
しかも帰国後、ソウル郊外に開店したカフェで無税搬入した陶磁器を販売していた。カフェは、小売業登録さえしていませんでした。こうした疑惑を韓国紙『中央日報』(5月2日付け)が報じ、大問題になったんです」(同前)
それでも就任強行
野党が問題を追及すると、朴氏は事実を認め次のような謝罪文を発表した。
〈妻が英国で購入した小物類は、自宅の装飾や家庭生活に使ったモノです。当時は販売目的はなく、品物も価値を評価されない中古品でした。カフェを開業することになり、他の店舗との差別化のため自宅にあった小物類を陳列。違法性の有無を認識しないまま、一部を販売しました。結果的に、国民の目の高さに合わない部分があったことを認め謝りたい〉
火に油を注いだのが、文大統領の対応だ。問題が発覚したにもかかわらず、朴氏就任を強行しようとしたのだ。強引な人事に、野党だけでなく与党からも猛反発。朴氏は辞退に追い込まれた。『コリア・レポート』編集長の辺真一氏が呆れる。
「『身体検査』が甘すぎます。政治家や官僚は、たいがい叩けばホコリが出るもの。しかし朴夫人の行為は看過できるレベルではない。密輸に限りなく近い、違法行為です。外交特権を利用したとなれば、さらに罪は重くなるでしょう」
今回の人事刷新で、適性を疑問視されているのは朴氏だけではない。過去に問題を起こした閣僚候補は、複数いるのだ。
・金富謙(キム・ムギョム):首相。19年に起きた北部・江原道(カンウォンド)での山火事現場で、笑顔で記念撮影。当初は「地域住民と撮った」と釈明したが、与党関係者であることが判明。「配慮が足りなかった」と謝罪。
・林恵淑(イム・へスク):科学技術相。公費でたびたび海外の学術会議に出席。そのたびに2人の子どもが同伴。出張報告書には、会議の内容が記されず。梨花女子大学在任当時の論文が、教え子が作成したモノから盗用した疑惑も浮上……。
前出の辺氏が続ける。
「文大統領の焦りを感じます。閣僚の空席を埋めることに躍起になり、冷静に適任者を判断できなくなっている印象です。
そもそも文政権の支持率が急落した原因は、閣僚のスキャンダルでした。19年10月に辞任した、法相の曺国(チョ・グク)氏です。娘の大学不正入学や夫人の私文書偽造など、次から次へと疑惑が浮上し『玉ねぎ男』と呼ばれ、政権は国民の信頼を失ってしまった。文大統領は問題人物を盗用し、同じ過ちを繰り返そうとしています。支持率回復は、望むべくもありません」
文大統領の任期は、1年をきった。だが相次ぐスキャンダルで、任期のまっとうすら危うくなっている。
- 写真:共同通信社