安倍再々登板待望論の出所は「ほとんど本人とその周辺」の不気味 | FRIDAYデジタル

安倍再々登板待望論の出所は「ほとんど本人とその周辺」の不気味

聞こえ始めた「安倍さんでいいんじゃね?」の真相

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2020年9月、自民党新総裁に就任した菅義偉に、なぜか笑顔はなかった。安倍晋三は体調不良で退任、12月には国会で「桜問題」を謝罪したが、疑惑の解明がないまま、わずか8ヶ月でまさかの「再々登板」に意欲をみせる 写真:代表撮影/ロイター/アフロ
2020年9月、自民党新総裁に就任した菅義偉に、なぜか笑顔はなかった。安倍晋三は体調不良で退任、12月には国会で「桜問題」を謝罪したが、疑惑の解明がないまま、わずか8ヶ月でまさかの「再々登板」に意欲をみせる 写真:代表撮影/ロイター/アフロ

内閣支持率がだだ下がるなか「安倍晋三再々登板か」という声が聞こえ始めた。数々の疑惑を放り出して体調不良を理由に辞任した前首相がなぜ…?

この、まさかの「安倍待望論」の出所を探ってみると、じつはすべてが「安倍自身の仕掛け」だった。わざわざテレビに出演して菅首相を支持してはいる。が、よく聞くと、憲法改正に言及しないうえ、あっけなく「赤木ファイル」の存在を認めた菅を、安倍氏は相当不満に思っているようだ。

菅首相の足らざるを指摘するように、「半導体議連」最高顧問、「原発リプレース議連」顧問などに就任し、ますます政治活動を活発化させているのは、菅首相に対する「これではダメだ」というメッセージと見える。

「安倍前首相の懐刀である、今井尚哉・内閣官房参与が『いまは黙って待つしかない』と漏らしているそうです。これは安倍前首相の内意を受けた発言と捉えられています」(官邸スタッフ)

党内からは「選挙のためには」の焦燥が

5月の連休明けに「自民党議員による、自民党議員のための、自民党議員の首相は、誰が望ましいか?」という質問を、自民党議員・有力党員14人にぶつけてみた。

1位は、安倍晋三・前総理大臣。ダントツの9票を獲得し、支持率にすると、なんと64%を超えている。

次点は河野太郎規制改革担当相に「2票」、支持率14%。

3位以降は団子状態で「とりあえず名前を出しておくか」程度の熱量しか感じられないが、石破茂、小泉進次郎環境相、岸田文雄政調会長に各「1票」。支持率はそれぞれ7%。

昨年9月に、汚名にまみれて辞職したばかりの安倍前首相人気が、党内でも衰えていないというか、復活しつつある。

その理由は、いうまでもなく選挙。衆院任期満了まであと4ヶ月、選挙が間近に迫ってきたからだ。菅義偉内閣の支持率は30%台に下落。コロナ禍で地元に帰りづらいという事情もあり、焦燥感は募るばかり。「なにか別の手を」と藁(わら)をも掴む思いなのだろう。

とくに、自民党の組織票と創価学会の応援票を受け、5000~8000票の僅差で当選してきた議員にとってはなおさらだ。

「コロナ対応が遅く、ワクチン接種も進まず、支持率が下がる一方の菅政権のままで総選挙に突入したくない」(自民党議員)

という。まあ、そうだろう。

だからといって「安倍前首相!カムバック!」とは····政権放り出し時の疑惑を考えれば現実的な人事とは思えないのだが。

「やっぱり、アベノミクスの再起動が必要なんじゃないかなと。『1億総活躍時代』という掛け声、トランプ大統領との関係構築。安倍さんは政治的なアピールが上手かった。それに比べて、菅首相からは、フレッシュな言葉が聞こえてこないから」(細田派議員)

富裕層だけが恩恵を受けた「アベノミクス」は、実体はないもののプラスの印象だけがうっすら残った。

「元気を取り戻した」なら、疑惑の解明も

陽の安倍、陰の菅というイメージは、もはや「安倍教」の観さえある。こうなると、安倍の「再々登板」も、本当に起こるのではないかと考える自民党議員が出てくるのだから不思議だ。極めつけはこうだ。

「安倍さんは元気を取り戻した。政権を担っていただければ、民主党政権から自民党政権に戻った時と同じように、株価はたちどころに跳ね上がるだろう。日経平均は3万円を超えて3万5000円に到達するかもしれない。安倍さんにはそういうムードを醸し出すオーラがあるんだ」(麻生派議員)

「オーラ」がある。そこに「実体」はない。何度でもいう。株価が上がって恩恵を受けたのは富裕層だ。

総理通算在職日数3188日。憲政史上最長記録を更新するに至ったのは、安倍前首相の選挙上手がある。

民主党から政権を奪い返した2012年から2019年までに実施された衆参3回ずつの国政選挙は、いずれも自民大勝または現有議席を維持した。

国民を騒然とさせた安保法制改正、情報を制限する特定秘密保護法、官僚を統御した公務員法改正など、世論からは「悪政」と指弾されたなかで政権を維持してきた安倍前首相の「選挙戦略」に自民党は依存している、といっても過言ではなかろう。

直近の安倍前首相の発言である。

「命をかけて国を守る自衛隊の諸君を憲法にしっかり明記することは私の仕事だと思っている」

憲法改正の持論を展開した安倍は、一部支持者から喝采を浴びた。日本版CIAと言われる「情報局」を内閣に新設すべきだというアドバルーンもあげている。二度あることは三度あるとばかりに、安倍前首相の3回目の政権取りがまことしやかに流れていることは事実だ。

実体のない期待感にうっすら覆われていく

そもそもの「待望論」の出所は本人だが、その「掛け声」に釣られるように、党内でもじわじわと「再々登板」の可能性が囁かれ、その報道からうっすらと「次は安倍でいんじゃね?」という世論が形成されていく。

この人は政策ではなく「そういうこと」に長けている。

釈然としないが、実存は本質に優位と居直る自民党。安倍長期政権に痛めつけられた国民生活、終わりの見えない感染症。政権と国民の意識は、ますます乖離する。「安倍さんでいんじゃね?」とのんきに構えてる場合ではないだろう。

「元気になった」安倍晋三(右)と、麻生太郎、岸田文雄の3ショット。よく見ると、麻生・安倍は腕を組んでいる…笑顔の奥に潜む各自の思惑が不気味 5月21日撮影:鬼怒川毅
「元気になった」安倍晋三(右)と、麻生太郎、岸田文雄の3ショット。よく見ると、麻生・安倍は腕を組んでいる…笑顔の奥に潜む各自の思惑が不気味 5月21日撮影:鬼怒川毅
  • 取材・文岩城周太郎写真代表撮影/ロイター/アフロ 鬼怒川毅

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