住民は悲鳴「開かずの踏み切り」ワースト5はこんなに酷い!
国土交通省が改良すべき全国93ヵ所を指定 ラッシュ時は今でも1時間以上渡れない……
「いつになったら開くんだ!」
現地の踏み切りを訪ねた本誌記者がそう叫びたくなったのは一度や二度ではなかった。
4月13日、国土交通省は’25年度末までに改良すべき全国93ヵ所の「開かずの踏み切り」を公表した。現在の状況が放置されたままでは、渋滞が起きるだけではなく、緊急車両が通行できないなどの重大な問題を起こしかねないという。
本誌はとくに早急な改善が必要とされる「ワースト5」を実際に訪れた。
ワースト5 西武新宿線・野方駅(東京都中野区) ラッシュ時間 午前7−9時、午後4−6時

西武新宿線・野方駅を平日の夕方に訪れてみると、踏み切り前の狭い道路に30人以上の通行人と20台以上の自転車がすし詰め状態となっていた。
「ここは小中高3つの学校の最寄り駅で、その児童・生徒たちの下校時間と通勤客の帰宅ラッシュ、飲食店の開店時間、さらには主婦が集まるスーパーのセールなどが夕方5時から6時の間に重なるんです。しかも、道も狭い。小さい子供を乗せた自転車が歩行者や車とぶつかって横転する事故がしばしば起きています」(駅前の50代飲食店店長)
ワースト5 南武線・平間駅(神奈川県川崎市) ラッシュ時間 午前8−9時

次に向かったのはかねてから車と通行人の接触事故が多発している南武線・平間駅前の踏み切り。遮断機が開くのを待つ20代の女子大生に話を聞いた。
「朝8時からの通勤ラッシュには大行列ができて、45分以上待つことも珍しくありません。遮断機を自分で持ち上げて渡る人はたくさんいます。私は踏み切りを渡るためだけに早起きをしています」
ワースト5 大井町線・戸越公園駅(東京都品川区) ラッシュ時間 午前7−8時、午後6時


発表されたリストの中でも最も深刻な状況にあるのが戸越公園駅だ。本誌記者がラッシュ時の朝7時に行くと、なんと1時間も遮断機が閉まったままで、しかも開いたと思えばすぐに警報音が鳴る。その間に20人以上の通行人が猛ダッシュで踏み切りを駆け抜けた挙句、遮断機を無理に跨(また)ごうとして転倒する人もいた。
30代のサラリーマン男性が言う。
「とにかく電車の本数が多いんです。1時間に20本以上は通りますからね。遅延があると、1時間以上開かないときもありますよ。朝7時のラッシュ時には通勤客のほとんどが警報を無視しています」
なぜこんなに危険にもかかわらず、開かずの踏み切りはなくならないのか。鉄道ジャーナリストの梅原淳氏が話す。
「開かずの踏み切りをなくす事業にかかるコストのほぼ全額を各自治体が負担することになっているからです。その事業は立体交差化(鉄道の一定区間を地下化または高架化し踏み切りを撤去すること)と呼ばれます。これには早くても5年、平均的には10~15年がかかります。ネックとなるのが費用面で、1㎞あたりで200億円以上もかかるのです。これが自治体の財政を圧迫し、工事へと踏み切れないのだと思います」
悲鳴をあげる住民たちの安全のために、一刻も早く手を打ってほしい。
ワースト5 京王線・千歳烏山駅(東京都世田谷区) ラッシュ時間 午前7−8時

ワースト5 京王線・柴崎駅(東京都調布市) ラッシュ時間 午前7−9時、午後5−6時

京王線・下高井戸駅(東京都世田谷区) ラッシュ時間 午前7−9時、午後5時

京王線・つつじヶ丘駅(東京都調布市) ラッシュ時間 午前7−8時

『FRIDAY』2021年6月4日号より
撮影:蓮尾真司