ミサイルを次々と迎撃…イスラエル「アイアンドーム」のヤバい実力
米国が支援するイスラエルとイラン革命防衛隊が背後にいるハマスの武力衝突はますますエスカレート!
血で血を洗う暴力の応酬(おうしゅう)はどこまでエスカレートするのか――。
きっかけは5月10日に東エルサレムで発生したパレスチナ人とイスラエルの警官隊の衝突だった。パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム原理主義組織ハマスが報復として、エルサレム方向にロケット弾を発射。これに対する報復として、イスラエルはガザへの空爆に踏み切った。現在は一時停戦、その継続への協議が行われているさなかだが、争いは凄まじいものだった。
軍事ジャーナリストの世良光弘氏が解説する。
「ハマスは1週間でイスラエルに向けて3000発以上のロケット弾を発射しましたが、まだ数万発のロケット弾を保有していると見られています。3万人のハマスの戦闘員がガザの地下に張り巡らされたトンネルを移動して、攻撃を繰り返しています。
ところが、ロケット弾はイスラエルが誇る最新鋭のミサイル防衛システム『アイアンドーム』にほぼ撃ち落とされています。ただ、ロケット弾は一発7万円ほどと見られ、『アイアンドーム』で使用される迎撃ミサイルは一発500万~1100万円とされます。イスラエルにとっては割に合わないので、空爆や地上部隊からの砲撃を強化して、ハマスを根絶しようとしているのです」
暗躍するイラン革命防衛隊
一連の軍事衝突でパレスチナ人の死者は200名を超え、一方のイスラエル側の死者は10名となった。ここまで被害者の数に差がついているのは、やはり『アイアンドーム』によるところが大きい。
「過去にも『アイアンドーム』によるロケット弾の迎撃はありましたが、今回ほど大規模に発射されたことは記憶にありません。ハマスにしてみれば、前回のイスラエルによるガザ侵攻から7年が経ち、ロケット砲の数が揃ったので、自信を持ったのだと思います。
数発なら迎撃されても、数十発を次々と大量に発射し続けたら迎撃システムをかいくぐり、自分たちに有利な状況に持っていけると思っていた可能性が高い。『アイアンドーム』であそこまで迎撃されるとは思っていなかったはず。その結果、現状ではイスラエルに余裕がある状態です。
ただ、今後もハマスがロケット砲を撃ち続け、イスラエル側に大きな被害が出れば話は別。ハマス側の戦力を撃破するため、イスラエル軍の地上部隊はガザに侵攻するでしょう」(軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏)
報復の連鎖が収まらないなか、国連安全保障理事会は緊急会合をオンラインで開催し、事態収拾に向けた声明の作成を模索する。
「ネタニヤフ首相は2年間で4回も総選挙を強いられるなど、安定した政権を築けず、汚職疑惑もあって民意は離れている。今回のパレスチナとの軍事衝突はネタニヤフ首相にとっては、外敵を作って汚職疑惑から国民の目をそらせ、支持を集める好機なのです。
一方のハマスにはイスラエルと対立するイランの革命防衛隊が軍事支援をしており、こちらも簡単に矛(ほこ)を収めそうにない。かつて中東戦争でイスラエルと戦ったレバノンやヨルダンでは、今回のイスラエルの横暴な振る舞いに対して反発する動きが広がっています。
イラン革命防衛隊は、レバノンのシーア派武装組織ヒズボラへの軍事支援もしており、今後、イスラエルとの衝突が起こる可能性もあります」(国際ジャーナリストの山田敏弘氏)
イスラエルとイランの代理戦争の様相を呈(てい)するガザでの軍事衝突。このまま緊張が高まれば、中東が火の海になる日も近い。




『FRIDAY』2021年6月4日号より
写真:アフロ