新型コロナ「ワクチン接種で死亡・不妊は根拠ナシ」医師たちの断言
「ワクチン副反応報道の誤解を伝えたい」という試み
「ワクチン接種後57人が死亡」…ワクチンの副反応で人が亡くなった「ような」報道を目にする。が、死亡例のなかに「ワクチンとの因果関係が明らか」になったものは「1例もない」という。
「ワクチンを打つことによって副反応で死んでしまうと心配をするより、接種会場に行くまでに交通事故に巻き込まれるかもしれない心配をしたほうがいいです」
こういうのは、薬事規制(PMDA)での医薬品審査経験もある、黑川友哉医師だ。
新型コロナの感染拡大が止まらないなか、現状もっとも期待されている対策が「ワクチン接種」。諸外国に遅れをとって日本でもようやく、高齢者への接種が始まった。予約トラブルやワクチン不足が心配されるなか、従来のファイザー社ワクチンに加え、アストラゼネカ、モデルナのワクチンも承認された。
冒頭の思い切った発言には、どんな根拠があるのか。黑川医師に詳しくきいた。
「新型コロナのワクチンに関しては、世界規模で情報を共有するチェック体制が整っているんです。
アメリカでは、疾病対策予防センター(CDC)を中心に、疾病の自然発生率を監視するVSD RCAというワクチンの安全性を迅速に解析するシステムがあります。もしワクチンを打ったあとに、なにかの病気になる確率が上がったら、その情報はアメリカ国内だけではなく世界中の規制当局で共有されます。
発生頻度の高い副反応は、治験の中でしっかりチェックされています。が、その治験では見つけられなかったような副反応が、
なので『日本はまだ接種を始めたばかりで情報が少ないから危ない』ということはないのです」
「有害事象」と「副反応」の大きな違い
「ワクチンを打ったあとに起きた、あらゆる好ましくない事象や症状を『有害事象』といいます。たとえば接種の翌日に雷に打たれても、有害事象です。
『副反応』というのは、有害事象のうち『ワクチンとの因果関係が明確なもの』だけを指します。まずこの『有害事象』と『副反応』の違いはとても重要です。
日本では、予防接種法の定めによって、有害事象として上がってきたものは全て、厚生労働省が集計しています。
ワクチン分科会の副反応検討部会が作っている資料に、有害事象で死亡した事例の細かな報告が全て載っています。そのなかには、例えば誤嚥性肺炎で亡くなったり、お風呂で溺死といった『ワクチンとの因果関係は考えにくいだろう』というものも含まれています。
こうした事例は、一見『ワクチンは関係ないだろう』と思えます。でも、もしかしたらワクチンの影響で、何かしらの体調不良が起きたのかもしれない可能性は、ゼロとは言い切れません。なので記録としてしっかり残しておきましょうというスタンスなんですね。
今後、長年にわたって情報を蓄積していったときに、同じような事例が出てきて『過去にこういうことがあったよな』とデータをきちんと見直せるようにしておくためです。
なので、どんな有害事象でも否定せずに『副反応疑い』という形で報告されているんです。医師が誠実に仕事をすればするほど、副反応疑いの報告は多くなります。そしてそれが報道されることもあります。そういう流れ、ミスコミュニケーションを知っておいていただきたいです。
有害事象で死亡した例のなかで副反応が疑われるものは、今のところ一例もありません。報告書に記載されている「評価α」=「ワクチンとの因果関係が否定されないもの」は0件。つまり、ワクチン接種をしていなくても亡くなった事例だろうというのが、専門家の見解だと思います」
ワクチンに不安をもつ「情報」の真偽
「体格差や人種などの違いを含めて『どのくらいの用量が適切か』は、第Ⅲ相試験という4万人規模の臨床試験で、あらゆる体格の方を対象として確認されています。
ですから日本人は身体が小さいから…といった理由で、有効性の違いや副反応の違いを心配する必要はありません。身長140cmの小柄なお年寄りでも、190cmのアスリートでも、誤差の範囲なんです」
妊娠中の女性や、これから妊娠・出産を考えている人は
「ワクチンを打つと不妊になる、というデマもかなり拡散されました。ファイザー社の元副社長であるマイケル・イードン氏が『コロナウイルスのスパイクタンパク質が、胎盤を形成しているシンシチンを含んでいるため、ワクチンを打つと不妊になる危険性がある』と言い出したためです。
これに関してはすでにCDCも否定していますし、新型コロナワクチン接種と妊娠の関係については『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』という世界的に最も影響力のある医学雑誌に論文が掲載されています。ワクチン接種によって流産するとか子どもに障害が起きるリスクが高まるといったデータはありません。現時点で、ワクチンを打って抗体ができることで不妊になるという話は、根拠らしい根拠がありません」
アナフィラキシーの心配には
「ほとんどのアナフィラキシーは、接種後30分以内に起こるので、ワクチンを打ったあと30分ほどは、会場で経過を見ることになっています。会場には治療薬のアドレナリンを常備しておくことが決められていて、なにかあればすぐに打てるようになっています。新型コロナワクチンのアナフィラキシーで亡くなったという報告は今のところありません。
免疫抑制剤を使っている方がワクチンを打ってもいいのかというご質問をいただきます。これは、治験の対象とならなかったため、様々な心配をされるのですが、安全性で問題があるわけではありません。それよりも、こういった方は新型コロナウイルスに感染した場合に重症化する可能性が高いので、打っておくほうが安心です」
あるべき「正しい副反応」
副反応で最も多いのは、発熱やワクチンを打った場所の痛み、倦怠感などです。僕は2回接種を終えましたが、2回目のときは脇の下のリンパが痛くなりました。免疫はリンパ節で活性化されるので、『おお、効いている!』と、嬉しかったですね。
じつは今日、抗体価の推移について結果報告を受けました。ワクチン接種前、私の血液中に存在する新型コロナウイルスに対する抗体価は0.4だったのですが、ワクチン接種から2週間後にはこれが2230まで上昇していました。現時点でどこまで数値が上がればいいのかは明らかになっていませんが、純粋に自分の体の中に『抗体』という武器がこれまでとは比較にならないくらいの分量で備わっていることがわかって嬉しいです」
医師の多くは、断定的な言い方をしない。一方、ワクチン忌避者は「危険だ」「危ない」と強い言葉を使う。そんな大きな声に耳を傾けてしまうこともある。
「非常に難しい問題なのですが、真に科学的に、可能性が100%か0%かを証明するのはとても難しいんです。例えば、ワクチン接種後に打った箇所が痒くなったとします。これは副反応の疑いがかなり強いですが、同じ場所を蚊に刺された可能性もゼロではない。たとえ1億分の1の確率でも、研究者は『可能性がない』とは言いません。
でも一般の方がその文章を読んだときに、専門家と同じ感覚で理解をするのは難しい。これが「ミスリード(=誤った理解を促してしまう)」ですね。ですから僕たちは、なるべく医学界で共有されている科学的な情報そのまま発信するのではなく、みなさんに分かりやすい形でお伝えすることで、デマに惑わされない知識を得てほしいと思っているんです」
「ワクチンや新型コロナウイルスについては、厚生労働省や医薬品医療機器総合機構(PMDA)が情報を公開しています。しかしもし『政府の言うことは信用ならない』『わかりにくい!」という方はぜひ『こびナビ』を利用してください。
これはさまざまな専門分野の日米の医師30名ほどからなる団体です。世界中で日々更新される新型コロナワクチンに関連する論文に目を通し、全員で議論をしています。スポンサーもいないですし、完全に無給で運営しているんです。
サイトの他に、平日朝8時半から、Twitterの音声チャットで世界の最新医療ニュースを解説しています。こうした活動の中で、『ワクチンの不安が解消された』とか『安心して親に勧められます』といった声をいただくと、少しはお役に立てているようで幸せな気持ちになります。
医師の使命として、目の前の患者さんを救うことだけではなく、公衆衛生に貢献することも忘れてはいけません。我々はそこを柱にして、わかりやすくて正確な情報を届けることで、かなり多くの人を救えるんじゃないか、そうありたいと考えているんです」
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- 監修:黑川友哉
- 取材・文:和久井香菜子
- 写真:AFP/アフロ