主演ドラマ二作OA 松坂桃李にはなぜポンコツ役が似合うのか? | FRIDAYデジタル

主演ドラマ二作OA 松坂桃李にはなぜポンコツ役が似合うのか?

ポンコツ役に説得力がある、これだけの理由!

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
ドラマだけでなく映画、CMにも引っ張りだこの松坂桃李
ドラマだけでなく映画、CMにも引っ張りだこの松坂桃李

最近、“ポンコツ”という言葉が男性タレントの可愛らしさをアピールする言葉になっている。少し前までは「このポンコツが!」とののしられる言葉の代表だったのに、感覚がしれっと変動を遂げた。

ポンコツにもさまざまなタイプがいるけれど、純度100%の天然ポンコツの魅力には敵うものがない。芸能界でも人気をぐんぐん伸ばしている。その象徴と言えるのが、俳優の松坂桃李だ。

週末の夜は、松坂のヘタレっぷりが光る名演技に笑う

現在の彼の人気ぶりは無双だと言ってもいい。放送中のテレビドラマ二作とも、主演を努めている。ただこの二作とも、ポンコツ、ヘタレという表現がふさわしい役なのだ。

まずは井浦新と、麻生久美子の入れ替わり演技が話題の『あのときキスしておけば(『あのキス』略)』(テレビ朝日系)。この作品で松坂が演じているのは、漫画オタクで存在感が薄い、スーパーの店員・桃地のぞむ役。自分の意見を主張することができず、控えめ100%に生活している。静かに生きていたはずなのに憧れの漫画家・蟹釜ジョー(麻生)と遭遇したことで毎日が一転。さらに彼女が、見知らぬ男性と体が入れ替わってしまい、振り回されることに……。

全方位イケメンの松坂桃李が、桃地役を演じることによって、ただの気弱な男になっている。そこには一流女優と結婚したという影は1ミクロンも見えない。むしろ、面白い。この作品でポンコツ演技に笑う金曜夜(『あのキス』は毎週金曜23時15分放送)が過ぎると、翌日また彼の主演作が放送されている。

それが、『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK総合)で演じる神崎真だ。神崎はテレビ局の元アナウンサー。ただ顔だけで採用されたようなもので、話している内容にまったく中身がないと視聴者から評価されていた。だんだん立場が追い詰められた神崎は、名門大学の広報マンに転職をする。もちろん新しい職場でも見事に“主体性のない”人間ぶりを発揮。毎回、ひたすら周囲の目を気にしておどおどしている。

『あのキス』の桃地と比べると「ぜんぶおまえのせいだろ」「しっかりしろよ(笑)」と総ツッコミをしたくなるような神崎。そう、2021年の初夏の週末は、松坂の演技によってポンコツ色に染まっている。

“撮れ高ゼロのつまらない私生活”が理由かも?

ただ彼の気弱そうな男の演技は、ここ最近で始まったものではない。ざっくりと出演した作品を思い返すと『ゆとりですがなにか』(日本テレビ・2016年)で演じた、20代後半なのに童貞だった、山路一豊役。自分の性欲や好意を寄せてくる女性教師に振り回される様子が、最高にハマっていた。

一連の出演作を並べてみた結果、ドラマオタクからすると、松坂は名俳優であると太鼓判を押したい。なぜなら彼のように顔面の造形美が整っていると、作品内で「かっこいいから」「顔がいいから」といった、嫌味にほど近い褒めセリフが並ぶ。これでは真のポンコツにはアップデートされない。よって、松坂が演じているようなポンコツ役は、イケメン以外の俳優にキャスティングが飛ぶケースが多い。これが続くようでは見ている側は飽きてくる。その一線を超えてきたのが、松坂だ。

イケメン臭を消して、むしろ「かわいそう」とさえ視聴者側に思わせてしまう演技は“妙”だと訴えたい。でもこの演技、練習したところで取得できるものではなく、ご本人の気質なのだろうと推測する。

記憶の限りではあるが、彼がバラエティー番組やインタビューで話していたエピソードは“休日はアニメ三昧”“洋服を買わない”といった、ひどく地味なもの。あの顔立ちにしては成立しづらい内容である。

また『櫻井・有吉THE夜会』では、『情熱大陸』(ともにTBS系)での密着が通常よりも時間がかかったとも話していた。それほど放送できるネタがなかったらしい。ほかに好みのタイプとして20項目を挙げていたが、好きなタイプが少し変わっていたことを覚えている。

その一部に“手の甲にメモを書いている”、“680円の会計で1180円を出してお釣りを500円玉でもらう”、“ワインを飲んだ後グラスの飲んだところを親指でキュッと拭く”など。徹底的に細部へこだわっている様子と、人間観察ぶりからオタクであることが伝わってきた。

逆に苦手な女性のタイプには“自分がスポーツジムでトレーニングしている様子をSNSにアップする”、“1回使っただけでバスタオルを洗いたがる”、“焼肉で頻繁に店員に網を替えさせる”、“実家の父を「パパ」と呼ぶ”などいかにも港区女子を嫌う陰キャぶりをフル発揮。

その放送を見ながら、つい自分も項目をチェックしてしまったけれど、当てはまったところで松坂くんに届くわけはなかった……と、もろもろの情報を統括すると、彼は真のオタク、陰キャでありながら絶世のイケメンという、1000年に一度の逸材だ。だからこそポンコツ役に説得力があるのだろうし、今後も演じ続けてほしいと願っている。

余談ではあるが戸田恵梨香と結婚した理由も、彼の隠しきれないポンコツぶりからすると合点がいく。彼女のようにグイグイ引っ張ってくれるような雰囲気の女性が心地がよいのだろうと思う。

昔「いい旦那を見つけたかったらアキバに行け」という恋愛にまつわる説があった。アニメやアイドル、電車などに夢中な男ほど女性経験も少なく、自分のことを大切にしてくれるという意味だ。恋愛も隙間産業主義でいかないと、真の愛は手中にできないらしい。とはいえ、なかなかその説でうまくいったカップルは見なかったけれど、戸田恵梨香はさすがだな……と改めて思った次第。

  • 小林久乃

    エッセイスト、ライター、編集者、クリエイティブディレクター、撮影コーディネーターなど。エンタメやカルチャー分野に強く、ウエブや雑誌媒体にて連載記事を多数持つ。企画、編集、執筆を手がけた単行本は100冊を超え、中には15万部を超えるベストセラーも。静岡県浜松市出身、正々堂々の独身。女性の意識改革をライトに提案したエッセイ『結婚してもしなくてもうるわしきかな人生』(KKベストセラーズ刊)が好評発売中。

  • 写真時事

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事