身につまされる…?『リコカツ』が娯楽にならない世代の憂鬱 | FRIDAYデジタル

身につまされる…?『リコカツ』が娯楽にならない世代の憂鬱

TBSドラマ『リコカツ』の特徴的な見られ方とは?

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永山瑛太とともにドラマ『リコカツ』に主演している北川景子

離婚から始まるラブストーリー『リコカツ』(TBS系・毎週金曜・22:00〜)。

咲(北川景子)と紘一(永山瑛太)は、互いに思いながらも遂に離婚を選択した。そして第7話では、咲と紘一の両親も含め全員離婚家族で親族会議を行う展開になってしまった。

制作陣は同ドラマを、エンターテインメントとして制作している。

ところが視聴者の側には、どうやら娯楽では済まない複雑な気持ちで凝視している人が少なくない。

そんな視聴者の気持ちに迫ってみた。

恋愛4ドラマの見られ方

今期は恋愛にまつわるドラマが4作ある。

石原さとみ×綾野剛の『恋はDeepに』(日本テレビ系・毎週水曜・22:00〜)、吉岡里帆×鈴木亮平『レンアイ漫画家』(フジテレビ系・毎週木曜・22:00〜)、川口春奈×横浜流星『着飾る恋には理由があって』(TBS系・毎週火曜・22:00〜)、そして北川景子×永山瑛太『リコカツ』だ。

ビデオリサーチ関東地区の世帯視聴率では、今のところ『リコカツ』が平均9.0%でトップを行く。

ところが視聴者を傾向別に分けた個人視聴率でみると、各ドラマには見られ方に特徴が出る。まず恋愛ドラマは、いずれの層でも男性にあまり見られていない。やはり恋愛ものは、女性が主なターゲットとなっている。

それでも『レンアイ漫画家』は女性のどの層でも比較的低調だ。

残念ながら、多くの人々に刺さるような出来にはなっていなかったと言わざるを得ない。

『恋はDeepに』と『着飾る恋には理由があって』は、若年層でよく見られている。

若者に人気の俳優の力もあろうが、スポーツ紙の記者やネット記事のライターの中には、設定や展開に疑問を呈す人が少なくない。ただし制作陣は、そうしたフレッシュな恋愛が過去のものとなった大人を当初から相手にしていない。10~20代で恋愛物語に憧れる若年女性に見てもらおうと制作している。

その意味では、両ドラマとも一定の役割を果たしている。

その中にあり興味深いのは『リコカツ』だ。

恋愛はレンアイでも、“離婚”を切り口に男女の想いをコメディタッチに描こうとしている。テレビ局としては当然若年層も狙っていた。ところが視聴者を特定層別に個人視聴率を割り出せるスイッチ・メディア・ラボのデータによれば、50~60代の既婚者が最もよく見ている

どうやら娯楽として楽しむというよりは、身につまされる切実な問題として凝視しているようだ。

男女と年齢層での差

まず男女では、圧倒的に男性より女性がよく見ている

しかも男性は回を追うごとに見なくなっている人が出ている。一見コメディだが、実は深刻な話を重く受け止める人が、SNSでもかなり発信している。正視に堪えない男性が一定数いるようだ。

「熟年離婚、切ないわあ」
「捨てられた方は精神的にやられちゃうよな」
「辛い気持ちになる~胸が苦しい! 旦那はこれ見てる私に嫌なドラマだな、と」
「もう今回でやめる。なんか重たい・・・見ててつらい」

男女差だけでなく、年齢差も明確に出ている。

特に50~64歳の男性既婚者では、脱落者が続出しているようだ。初回から6話までで4割以上数字を落としている。

「なんかリコカツ見てられないわ」
「いらいらするなあ~」
「観るに耐えない。歳取ってくると耐える能力が下がる気がする」
「(主人公カップルより)熟年離婚の方が明日は我が身。恐怖におびえています」

逆に女性は脱落者が少ない

逆に50~64歳の女性既婚者は、3話まででやめた人がいるが、5~6話では逆に率を高めている。熟年離婚にスポットが当たり、この層の注目度は俄然高くなったと思われる。

また20~49歳の女性既婚者も、数字は下がっていない。やはり女性はリアルに受け止めている人がかなりいる。

「瑛太のお母さんが20年後のアタシに見えた」
「熟年離婚の両親が2組とも女性から、ってのはリアルだなぁ」
「やっぱ色んなことの積み重ねで爆発するんだよね・・・朝ごはん用意されてないシーンは可哀想だったけど、ママの気持ち考えるとなぁ・・・」

虚構が現実を変える!

優れたドラマには、「娯楽」「感動」「普遍性」の3条件があると言われる。

「娯楽」とは、面白いと感じて多くの人が注目すること。視聴率は低いより高いに越したことはないのだ。『リコカツ』がコメディタッチになっているのも、多くの人に見てもらうための方便だろう。

「感動」とは、人の心を大きく動かす力。その心とは、喜怒哀楽なんでも良い。SNS上で「切ない」「辛い」「身につまされる」「可哀そう」などの言葉が頻出するところを見ると、『リコカツ』は視聴者の感情を大いに揺さぶっていると言えよう。

ドラマにおける「普遍性」とは、多くの人に共通するテーマがあること。
人間如何にいきるべきか、社会はどうあるべきか等、娯楽と感動の先に何をメッセージし、どれだけ多くの人に納得してもらうかだ。その意味で、『リコカツ』は、多くの視聴者に気づきを与えている。

「身につまされる台詞もいっぱいなんだよねえ」
「一見バカバカしいけど深い所ついてる」
「今の世の中をリアルにドラマにしてる!と毎度感じております」

そして同ドラマが優れているのは、感動し深く受け止めた後に、自分の来し方行く末を見直し、次の一歩に向け多くの人が動き始めている点だ。

「旦那は見たがらなかったけど、コメディだから見てと言って見てもらってる。少しでも熟年離婚する奥さんの気持ちが伝わればいい」
「やっぱりカップルや夫婦は、一緒に住んで生活するとなると好きならお互いに譲り合ったり寄り添う気持ちが大事やね~」
「うちも散々揉めたけど、旦那が引き止めてくれて今があるんだよな~。なんか、他人事とは思えなくって涙涙」

最後に、拙稿は「『リコカツ』が娯楽にならない世代の憂鬱」という言葉をタイトルに入れたが、実は中高年だけでなく、若者にもメッセージはじゅうぶん伝わっているようだ。

「熟年離婚するシーンを食い入るように見る娘。 幼いながらに何かを感じたのか、悲しくなったそうでぎゅーっとされたので、ぎゅーっと抱きしめた」

「こうしなさい」と押し付けるのではなく、見た人がそれぞれの事情の中で感じ取ってくれるドラマこそ、作り手冥利に尽きる作品と言えそうだ。

ラストに向け、「娯楽」「感動」「普遍性」の3条件がどう進化するのか期待したい。

  • 鈴木祐司(すずきゆうじ)

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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