『週刊さんまとマツコ』は令和のテレビに対する「アンチテーゼ」だ | FRIDAYデジタル

『週刊さんまとマツコ』は令和のテレビに対する「アンチテーゼ」だ

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写真:公式ホームページより

TBSの『週刊さんまとマツコ』から目が離せない。いや、「面白いから目が離せない」のかというと、申し訳ないのだが決してそんなに面白くはないと思う。でも何か、普通のバラエティ番組からは感じられない不思議な新しさを感じてしまうので、テレビマンの筆者としては気になってしまって目が離せないのだ。

日曜18時半から19時というと、裏番組は『サザエさん』をはじめ、『真相報道 バンキシャ!』『相葉マナブ』『日曜ビッグバラエティ』など強力なラインナップ。ゴールデンタイムでもない、30分というこの短い枠に明石家さんまさんとマツコ・デラックスさんという超大御所2人をキャスティングしたというだけでも、相当に異例だ。

しかも初回放送は4月18日だから、もう6回日曜日はあったはずなのに、まだ4回しか放送されておらず特番で2回放送が飛んでいるのでオンエア確率3分の2。「今週はどうなのか」と思って見ようとすると、やっていなかったりする。

そのうえ、見るたびに内容が全く違う。初回はさんまさんとマツコさんの楽屋をひたすら見せただけで、「さあこれから収録です」というところで終了。そういう「テレビの裏側を見せる番組」なのかな? と思って2回目を見たら、さんまさんが「明らかに波平の格好」で、マツコさんが「明らかにサザエさんになって」トークをしていた。

「そっか、やっぱりトーク番組なんだ」と納得して3回目を見ると、「これから買い出しに行ってお弁当を作る」という。「なるほど、2回目はコスプレでサザエさんをいじったから、今回は相葉マナブを意識してグルメでいくのか」と思いきや、延々とTBSの局舎の横でトークを繰り広げて買い出しになかなか行かない。結局買い出しまでで時間切れとなり、4回目に「丸の内OLのお弁当対決」ということで、ひたすらお弁当を作るさんまさんとマツコさんが放送された。

次回は番組表によると「2大おしゃべり怪獣が今週話しておきたいアノ案件」ということで、どうやらさんまさんにワクチン接種のお知らせが届いた件などについてトークをするようだ。

要は、「いったい何がしたいのか、さっぱり分からない」のだ。「どこへ行きたいのか」がさっぱり分からない。そのせいなのか、さんまさんとマツコさんの番組にも関わらず、放送が始まってからほとんど記事にもなっていない。褒める記事も、けなす記事も、ほとんど目にしない。あれほど放送開始前には話題になったのに……これは結構驚くべきことだと思う。きっと記者や評論家もみんな「どんな番組なのか測りかねている」のではないだろうか。

でも不思議なことに私は、この番組に対してものすごく期待感が大きい。そんなに面白くないのにここまでドキドキするのは我ながら実に不思議だ。どういうことなのか自分なりに考えてみてたどり着いた答えは「そんなに面白くしようとしていないところが新しい」ということなのだと思う。

放送開始以来、ずっとさんまさんもマツコさんも企画に文句ばかり言っている。「ねえ本当に(買い出しに)行くの?」と食材買い出しに行くのを嫌がってみたり、「この企画違うと思う」と料理をさせられることに文句を言ったり、ひょっとすると2人が本気でダメ出しをしているのではないか? と思ってしまう。「無理に番組を面白くしよう」としていないように見える。ダラダラと緩い感じで番組を「なんとなく」やっている。

この緩い感じに、どことなく『水曜どうでしょう』を連想した。頑張って面白くしようとはあえてせず、ダラダラとゆるく自然体でいくバラエティ。『水曜どうでしょう』は北海道テレビと、まだ売れない頃のTEAM NACSだったからあの「緩さ」が許されてしまったが、東京キー局が超巨匠2人を使ってこの「ゆるゆるバラエティ」をやっているところがとても新しい気がするのだ。

しかも番組休止にもちょいちょいなるような、お世辞にもそんなに「良い枠」とは言えない放送時間帯で、壮大な「大御所の無駄遣い」をしているところに、「今のテレビに対するアンチテーゼ」のようなものを感じてしまう。

ここのところテレビは、「若者に見てもらえないこと」に怯え、「Z世代に媚びる」ような番組ばかりを作っている。「第7世代」や「読モ」「YouTuber」などの若年出演者を有難がり、大御所たちの出演番組はどんどん少なくなってきている。「若者を出せば若者が見てくれるだろう」というのも、安易すぎる考えのような気もするが…。

最近マツコさんはよく出演番組で「もう疲れた」とか「私の時代は終わった」という趣旨の発言をしている。きっとさんまさんにも、いろいろ胸中に秘めるものがあるのだろう。「大御所2人がドドーンとゴールデンで力いっぱい番組をする」というようなのは「何か違う」と感じているのではないだろうか、と勝手に想像してしまう。

「テレビってなんなんだ」「バラエティってなんなんだ」ということに対する「長年の間に作り上げられてしまった決まり事やお約束」を、バラエティ番組を極限まで極めた大御所2人が見つめ直すために、あえて「何をやろうとするのでもなく」「無理に面白くしようとするでもなく」大御所の今の「リアルな気分」と「リアルな姿」を見せてゆるゆるとやっていく。そんな革新的な試みがとてもドキドキするのかもしれない。

私はどちらかというと報道畑だが、この不思議なバラエティになぜか深く共感する部分がある。「今のキー局のテレビ制作」のあり方を変えようとする志を勝手に感じて、ついつい応援してしまうのである。

ぜひ、これからもどんどん予想できない方向へダラダラと突き進んで欲しい。

  • 鎮目博道/テレビプロデューサー・ライター

    92年テレビ朝日入社。社会部記者として阪神大震災やオウム真理教関連の取材を手がけた後、スーパーJチャンネル、スーパーモーニング、報道ステーションなどのディレクターを経てプロデューサーに。中国・朝鮮半島取材やアメリカ同時多発テロなどを始め海外取材を多く手がける。また、ABEMAのサービス立ち上げに参画「AbemaPrime」、「Wの悲喜劇」などの番組を企画・プロデュース。2019年8月に独立し、放送番組のみならず、多メディアで活動。上智大学文学部新聞学科非常勤講師。公共コミュニケーション学会会員として地域メディアについて学び、顔ハメパネルをライフワークとして研究、記事を執筆している。近著に『アクセス、登録が劇的に増える!「動画制作」プロの仕掛け52』(日本実業出版社)

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