スティーブン・セガールが「プーチンロシア政界に進出」の仰天背景 | FRIDAYデジタル

スティーブン・セガールが「プーチンロシア政界に進出」の仰天背景

俺たちのセガールは、ぜんぜん「沈黙」していない〜黒井文太郎レポート

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5月27日、あのスティーブン·セガールが「公正ロシア」党に入党!という仰天ニュースが世界を駆け巡った。

ロシアのプーチン大統領は、セガールが大好き。眼差しに籠る敬愛を正面から受け止めた形のセガール  写真:ロイター/アフロ

映画『沈黙の戦艦』『沈黙の要塞』などの沈黙シリーズで知られる米国のアクション俳優、スティーブン・セガールが、ロシア・プーチン政権の支持基盤のひとつである体制内野党「公正ロシア~真実のために」に入党するというのだ。同党は、ロシア第4党にあたる有力政党で、セガールはロシアで大きな「政治的影響力」を持つことになる。

関西弁も堪能な国際派マッチョ俳優が「CIA説」も

セガールはアメリカ出身の69歳。17歳のときに訪日、大阪で合気道師範をしていたという異色の経歴を持つ肉体派俳優だ。遅咲きのスターで、アジアで過ごした若き日の経歴が謎めいていたことや、映画で米軍特殊部隊員やCIA工作員の役をしばしば演じていたことから、ネットで「若い頃は本物のCIA工作員だったらしい」などという噂が飛び交ったこともあった。

もちろんフェイクニュースですらない、ただの「ネタ」だ。ちなみに類似の噂に「デーブ・スペクター氏はCIA工作員説」が一部ネット界隈で飛び交っていたこともある。言うまでもないが、ただのネタだ。

映画では「ロシア軍と戦い」続けてきたセガールだったが、実生活ではむしろロシアと非常に仲がいい(これは本当)。セガール自身はミシガン州生まれでカリフォルニア州育ちだが、祖父がロシア出身で、セガール自身も、もともと「ロシアにシンパシーがあった」と発言している。

ロシア・プーチン大統領との深い親交と武器ビジネス

また、彼は映画スターとしてさまざまな国を訪問しているが、ロシアにもしばしば行っていた。セガールとロシアの関係が一気に深まったのは、2013年のことだ。

この年、プーチン大統領自身が、モスクワに新設された格闘競技場にセガールを案内して会談をした。以後、何度もプーチンと会見するようになったのだ。

セガールとロシアの関係で言えば、ロシアの銃器メーカーとの深い関係も注目される。

彼はもともと銃器やナイフなどの販売も扱う自身の会社を立ち上げていたが、やはり2013年のロシア訪問の際に、ドミトリー・ロゴジン副首相から、ロシア製兵器への規制撤廃を米政界に働きかけるように依頼された。

続いて同年、新興富豪イーゴリ・ケサエフの仲介で、傘下の最大手の武器製造所であるコヴロフ市のデグチャレフ銃器工場を見学。その際、ロシアの銃器産業支援を要請されて同意した。実際、同年には大手銃器メーカー「プロムテフノロギヤ社」グループ内の企業「ORSIS」のライフル販売に正式に参加している。

さらに翌2014年には、前出・ロゴジン副首相の仲介で、有名な武器メーカー「カラシニコフ社」との契約話も進んだ。こちらは最終的にカラシニコフ側が降りているが、つまり、セガールとロシアとの接近には、巨額のカネの話も絡んでいるのだ。

いずれにせよ、その頃からセガールはハリウッド大物スターとしては珍しい「反民主主義陣営」的な政治スタンスを明確に示すようになり、プーチン大統領を賛美する発言を繰り返すようになる。似たような立場として、中国・習近平政権への忖度で批判されているジャッキー・チェンの例もあるが、セガールのロシア賛美は自ら進んでという積極性が際立っている。

たとえば2014年のロシア軍によるクリミア侵略でも、欧米諸国が非難するなか、「合理的な判断だ」と絶賛。そんな決断をしたプーチンを「世界の指導者でもっとも偉大な人物の一人だ」と讃えた。セガールは、当時クリミアで行われたプーチン陣営の音楽イベントにも参加している。

プーチン信奉者の映画人としては他にもオリバー・ストーン監督がいるが、ストーンは米国人として、反権力思想からの反米(政官界)スタンスでプーチン信者になった「思想的親露」タイプ。セガールは、マッチョ志向がプーチンと共通して気が合ったように見える。「肉体的親露」だ。

セルビア国籍に続き、ロシア国籍も取得

セガールが接近したのは、ロシアだけではない。セルビアを何度か訪れているうちに政界上層部と懇意になり、2016年1月にセルビア国籍を与えられた。もともとの米国籍と2重国籍である。そのうえでさらに同年11月、プーチンから直々にロシア国籍を与えられ、3重国籍となったのだ。ロシア大統領報道官によると、このロシア国籍はセガール自身が強く求めたものだという。

これだけでもだいぶ変人であることが伺えるが、正式にロシア国民(3重国籍)となったセガールは、その後もますますプーチン政権との関係を深めていった。2016年の米大統領選でのロシアの不正関与に関しては、一貫してロシアを擁護。2018年にはロシア外務省から対米人道特使に任命され、「ロシア政府側の人間」として対米交渉の担い手という立場になった。その頃、モスクワ郊外の高級住宅地に住居も購入している。

世界の強権独裁者とも、かなり仲良し

セガールはプーチン以外にも、何人かの世界の政治指導者と会見し、親睦を深めている。しかし、その相手が問題だ。みんな「まともな」指導者ではないのだ。プーチンと同じく、人権侵害の強権的支配者たちばかりなのである。

たとえば2013年、プーチンと親しいチェチェンのカディロフ首長と会っている。残虐な人権侵害で有名な軍閥系2世の独裁者だ。

他にも2016年には「欧州最後の独裁者」とも言われるベラルーシのルカシェンコ大統領と会見、2017年にはフィリピンのドゥテルテ大統領とも会見している。ルカシェンコはまさに現在、同国内の民主化運動を強権で弾圧し、国際社会の非難を浴びている人物であるし、ドゥテルテも麻薬組織メンバーを問答無用に殺害する命令を出すなど、強引な手法で知られる強権政治家だ。

映画の中のセガールは「正義のヒーロー」だが、現実のセガールは、今やどちらかというと「悪のシンジケート」みたいな交友関係なのだ。

さらに、今年5月4日にも、セガールはロシア政府代表としてベネズエラのマドゥロ大統領を訪問した。このときはなんと、マドゥロに日本刀を進呈している。マドゥロは壊滅的な経済政策と暴力的な民主派弾圧で、凄まじい数の国外避難者を生みだした「南米最悪の独裁者」である。

セガールは世界の独裁者たちと交流を深めている。今後も、こうして世界の反民主主義陣営のスターとして生きていくのだろう。

ぜんぜん「沈黙」していないヒーローの政界進出

さて、こうしてすっかり「ヤバい人」になってしまった元「沈黙のヒーロー」セガールだが、ロシアでの活動はますます盛んで、冒頭に紹介したように、今度は正規の政治活動を始めることとなった。おそらく次は、ロシアのマッチョ系強硬派の政治活動家になっていくのだろう。

そこでがぜん気になるのが、9月19日の投票が予定されている連邦下院選挙だ。セガールがもし立候補すれば、その知名度や話題性から、余裕で当選できると思われる。

しかし、ロシアの国内法では2重国籍者の議員立候補は認められておらず、今回セガールの参加を受け入れた政党「公正ロシア~真実のために」も、米国の市民権保持者は議員には立候補させないとしている。

つまり、今のままではセガールは議員になれないのだが、それはあくまで現時点での話だ。

たとえば将来、米国籍を離脱すれば、ロシア国会議員になる可能性は充分にある。そうなれば、いつか何かの国際会議で「露政府代表セガールvs.米政府代表シュワルツェネッガー(もしも政界復帰したら)」なんて夢の対決が見られるかもしれない(※筆者注:まあ、そこまではさすがに冗談です)。

  • 取材・文黒井文太郎

    1963年生まれ。軍事ジャーナリスト。モスクワ、ニューヨーク、カイロを拠点に紛争地を多数取材。ゴルバチョフ~エリツィン時代、モスクワに居住し長期取材した。軍事、インテリジェンス関連の著書多数。最新刊『超地政学で読み解く! 激動の世界情勢 タブーの地図帳』(宝島社)

  • 写真ロイター/アフロ

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