『トゥルーノース』が描くヤバすぎる北朝鮮強制収容所のリアル | FRIDAYデジタル

『トゥルーノース』が描くヤバすぎる北朝鮮強制収容所のリアル

日本人拉致被害者もいた!

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在日コリアンの清水監督は、「自分自身にも起こり得たことで、この映画の製作は『天命』だと感じた」と話す(撮影:鬼怒川 毅)

ごく普通に暮らしていた家族がある日突然、何の説明もなく逮捕・収監され、過酷な労働に従事させられる――。

北朝鮮の政治犯強制収容所で逞(たくま)しく生きる少年を描いた映画『トゥルーノース』が、アニメ映画界で世界最高峰と言われるアヌシー国際アニメーション映画祭をはじめ、世界中の映画祭で上映され、絶賛されている。同作の監督・脚本・製作を務めた清水ハン栄治氏がこう話す。

「私はこれまで過労死や人権問題などを扱うドキュメンタリーや漫画シリーズを制作してきましたが、その中で偶然出会ったテーマが『強制収容所』でした。私自身、横浜で生まれ育った在日コリアンですが、実態はよくわかっていなかった。北朝鮮の収容所問題に専門的に取り組んでいるNGOに色々な人を紹介してもらってリサーチしていきました。 その過程で気づいたことがあります。

’60年代、北朝鮮が『地上の楽園』だというプロパガンダに乗せられて、多くの在日コリアンが北朝鮮に渡りました。その数は約9万3000人。そのうち、約6800人は日本人の配偶者や日本で生まれた子供など、日本のパスポートを持っている人でした。その中には、私の母親の幼馴染みやクラスメート、近隣の人たちもたくさんいた。まったく他人事とは考えられなくなったのです」

北朝鮮に渡った人たちを待ち受けていたのは、苦難の日々だった。清水氏によれば、帰国した人の2~3割はスパイ容疑で強制収容所に送られたという。

「彼らのほとんどは、自分たちがなぜ収容所に送られたのか知りませんでした。たとえばタバコを吸う人が、たまたま巻き紙がなく、新聞紙で葉っぱを巻いて吸ったとします。すると、それを見た人から『将軍様が載っている新聞記事を切って、しかも火をつけて吸った』と当局に密告される。その人が体制側に批判的な人や利用価値がない人なら、政治犯として強制収容所に送られるのです」

’60年代に北朝鮮に両親と「移住」し、北朝鮮の強制収容所の解体作業に携わった経験のある脱北者の徳山雄一氏(仮名・70代)が実態を生々しく語る。

「強制収容所は政治犯本人だけでなく、家族全員が収監されます。私が解体した居住区にある住居は、穴を掘って柱を立て、その上にワラの屋根をかぶせただけの粗末なものでした。収容された人間は農作業や養豚、森林伐採、炭鉱での採掘などの重労働を強いられます。食事は死なない程度の量が支給されるだけ。食べさせないと労働できないからです。

だからといってお腹いっぱいにはさせない。 生かさず殺さず、生殺しの状態で働かせ、死んだら、穴に埋められる。そういうひどいところなのです。私の妹も強制収容所へ送られて、そこで処刑されて亡くなりました……」

清水氏は強制収容所の体験者や脱北者など、40名近くに取材し、細部のリアリティにこだわったという。作中には日本人の拉致被害者も登場し、望郷の思いを込めて『赤とんぼ』を歌うシーンが象徴的に描かれる。

「話は本当にリアルです。ただ、これを実写でやってしまうとホラー映画並みになってしまい、観客を怖がらせてしまう。私の目的は、観客の心を動かして、北朝鮮で非人道的なことが行われている状況を変える仲間を増やすこと。アニメのほうが厳しい現実を見てもらえるのではないかと思い、この手法を選びました。

北朝鮮の強制収容所が舞台ではあるものの、テーマは『人間の力』です。コロナで世界は大変なことになり、多くの人が望みを失いがちですが、私たちよりもひどい『地獄』に住んでいる青年が、その中でも希望を持って生きている。今の厳しい時代を生きているみなさんに何かヒントを与えられるのではないかと思っているので、重いテーマだと思って敬遠せず、気軽に見てほしいですね」

映画は6月4日から順次公開される。

突然連行される主人公のヨハン。過酷な強制収容所での暮らしの中で、あることをきっかけに人間性を取り戻す
男性収容者は炭鉱などでの過酷な労働に長時間従事させられる。互いを監視して密告することが奨励されている
’59年から始まった北朝鮮への帰国事業。当時は「地上の楽園」と喧伝され、在日コリアンだけでなく、多くの日本人配偶者も参加した
’60年代に北朝鮮に渡って、その後、脱北した徳山氏(仮名)。「収容所はひどいところだった」と話す

『FRIDAY』2021年6月11日号より

  • 写真鬼怒川 毅 朝鮮通信=時事 ©2020 sumimasen

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